全世界が露に対して経済制裁を科している?その影響とは?
今日が更新日ではないが、世間の動きがダイナミックすぎて、発信が大事だと考えたため、一日前倒しで投稿。そして少々長文で申し訳ない限り。
露のウクライナに対する特別軍事作戦の開始を受けて、あたかも世界中が露を批難し、あらゆる制裁を科し、これから露の経済を始め何もかもが立ち行かなくなって、滅びるかの様に連日報道されている。SNSを見ても回りの人を見てもたいてい露を批難し、ウクライナを応援している様に見えているのではないだろうか?マーク・トウェインが言い残した様に『Whenever you find yourself on the side of the majority, it is time to reform (or pause and reflect)』、つまり『自分が多数派の方にいると気づいた時が意見を変える時だ(もしくは立ち止まって振り返る時だ)』。今回はこのマーク・トウェインの教えに従い、一度立ち止まってここまでの流れを振り返ってみたい。ただ、議論が発散しない様、まずは経済制裁を中心に考えてみたい。
プーチン大統領のこと好きか嫌いかは別として、制裁が科されることはもちろんのこと、制裁の内容と対象範囲をかなり詳細に予測出来ていたことが流石だと認めざるを得ない。それもそのはず、西側からの制裁は何年も前から科されているわけだから(なんなら露に対する最初の制裁は、中世にまで遡る)、これらに対応できる経済・産業・金融体制を造らないと自国の独立と安全保障を担保できないのは明白だ。当然、露もこれを分かって、然るべき準備をしてきた。もっと面白いのは、プーチン大統領やラブロフ外相をはじめとする個人に対する制裁の方だ。なぜ面白いかというと、露の支配層も一枚岩になっているわけではなく、前々から西側の動きに加担し露を内側から壊そうとしている人も結構いる。これはプーチンも理解しており、国家安全保障会議のルガンスク・ドネツク人民共和国の独立と主権の承認がなされた会議を国営テレビで生放送させ、議員一人ひとりの見解を聞いて、動揺する議員もいたが、後戻りが出来ない状況を作ったわけだ。そして2月24日付けで数名が英から制裁を科された(翌日は米からも科された)。ちなみに、露外務省のザハロワ報道官によると、プーチン大統領とラブロフ外相の何れも露国外に何ら試算を所有していない。そうはいっても、国外に資産を持つ(もしくは家族、親戚、友人等に持たせている)人はいると思われる。ただ、これは露を止めるほどの影響を及ぼすかは別の話しだ。この辺りの制裁がただのポーズになっていないかとアルジャジーラも報道している。
精神論はさておき、露に、例えば、米・英・欧・日がどんな制裁を科しているのかを見てみたい。
米:複数の金融機関を米システムからの除去、政府関係者複数名の試算凍結・入国禁止等、半導体等、米製重要なテクノロジーへのアクセス制限、露に対し米同等の制裁を科す諸国への貿易インセンティブの補助等。要は、米が露から毎日2万バレル弱という規模で輸入している原油はこの制裁対象となっていない。そして、半導体に不可欠なレアメタル、レアアースのリザーブ(備蓄)量が2020年時点で世界第4位だった露だが(1位:中国、2位:ベトナム、3位ブラジル)、例えばパラジウム、若しくは半導体のリソグラフィに不可欠なネオンの輸出を制限したら、世界中のサプライチェーンが今以上に混乱するのは目に見える。
英:米同様、複数の金融機関、防衛関連企業、露富裕層の英銀行へのアクセス制限、プーチン大統領およびその側近にいる複数名への制裁等を発表。露の富裕層が資産を海外に持ち出していることが問題視されている中、国からすると寧ろ渡りに船。だから、これは露という国ではなく、国民を苦しめてその国民が露政府(政策)に反発することに期待を込めた制裁だと考えて差し支えないだろう。他にも、英がアエロフロート等、露の航空会社に英上空飛行を禁止した。これは傑作なんだ。英上空飛行禁止に対し、露もそっくりそのままの回答をし、露制裁適用初日だけでトランジットを含む約70便が影響を受けた。英からアジアへの飛行がどれだけ遠回りになるかを考えるとゾッとする。ただ、英が露に飛行機用部品の供給も制限するとのことなので、これは最初のころは痛いのかもしれない。一方、この辺の制裁が長引くと、露の航空会社が露の飛行機に乗り換えるだけで、逆に露の航空産業が強化されることにならないかという疑問がわいてくる。
欧:まず、EUの制裁は、露がウクライナでの軍事作戦を展開する前(2月23日)に発表されていることを把握しておく必要がある(これは先般発表された独によるNORD STREAM 2稼働開始承認停止を除く)。つまり、所謂『侵攻』が無くても制裁はあったんだ。内容は英の制裁とほぼ同様。そして英と揃って、EU上空飛行の禁止も発表している。当然、露もこれに対し、欧州航空会社飛行機の自国上空飛行を禁止した。この中でも、欧の露に対する基本スタンスを理解する上で欧州評議会の同議会からの露の除名決議が可決された場での議員会議(PACE)長の『露が欧州評議会に参加負担を負い続けるべき』というコメントから推察できる。つまり、欧が露を全く対等な相手だと見ていない。
日:G7と足並みを揃えて『ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置』つまり露に対する追加制裁を2月26日に発表した。2月23日発表された比較的易しい制裁と比べて、少々具体化され、米英欧同様プーチン大統領を含む数名の個人を対象とした制裁が加えられているが、他のG7諸国と比べてやはり優しめと言わざるを得ない。ここは大人の対応なのか?露の駐日大使も当然、黙っておらず、露もそれなりの反応をさせてもらう旨での警告をしている。
色々あるけど、皆さんの対露制裁の目玉はやはりSWIFT(国際銀行間通信協会)へのアクセス禁止だろう。つまり露が外貨取引も調達も、SWIFTを通じて金融機関とのやり取りができなくなり、大変苦しくなる想定だ。では、露に投資をして資産を持っている西側(日含む)諸国の個人・法人は如何にして配当金を手に入れる?売り払おうと思ったときはルーブルで売るの?欧が露の天然ガスと、米は露の原油をどうやって買う?露がルーブルでしか売らなくなったらどうなる?また、この辺を想定して、露・中・印が既に動いていたことも(他のBRICS諸国も加入を検討していることも)知られている事実であり、SWIFT取引制限が短気的には露の通貨価値を下げるかもしれないけど、本当どこまで露を苦しめることになるのかはやはり疑問だ。
一方では、世の中の一般人にとっての影響は残念ながら絶大だ。
➀原油・天然ガス価格(電気代、ガス代、ガソリン代等々)高騰は言うまでもなく、➁小麦、麦、トウモロコシ、ひまわり等の食材、③アンモニア、炭酸カリウム、尿素、燐酸塩等の肥料、④パラジウム、アルミ、プラチナ、スチール、銅、ニッケルの価格高騰によってキッチンウェアから携帯電話・医療機器・自動車等、半導体が搭載される製品が大きく値上がりすると考えて、備えておくといいだろう。
そうこうしているうちに、ウクライナが露との和平交渉に応じた模様、そしてベラルーシが憲法改正の国民投票を実施し、非核保有でなくなっている。
今日はここまで。
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