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【採用活動】採用を妥協したらどうなるか?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
このnoteでは、いくら人手不足だとはいえ、安易に採用基準を下げてはいけないことを、2回にわたってお伝えしてきました。

採用基準を下げてでも採用する、ということは、いわば、採用の妥協といえます。採用を妥協すると、どんなことが起こるのでしょうか?
 
中小企業の採用コンサルのスペシャリスト・酒井利昌さんは、新刊『増補改訂版 いい人財が集まる会社の採用の思考法』の中で、「採用の失敗」のデメリットは、売上減だけにとどまらないと言います。いったいどういうことなのでしょうか? 今回は、同書の中から該当箇所を全文公開します。


採用を妥協したらどうなるか?

採用後の教育でなんとかなる!?──私の失敗談を交えて

 採用する人を妥協してはいけない――。
 これは、私自身にも過去に苦い経験があります。
 私が人生で最初に採用にかかわったのは22歳の4月。大学を卒業し、入社して1カ月目で、私が最初にやった仕事が採用業務でした。
 入社した会社は、個別指導塾を複数教室展開していた会社。人がすぐ辞めるため、当時まさに人手不足だったその会社は、新卒入社したばかりの私をすぐに教室長にしました。研修も何もありません。あったとすれば、退職する前任教室長と行なった引き継ぎの1日だけ。
 そんな状態で、つい最近まで学生だった人間が、よくわからないまま最初にやった仕事が採用業務でした。
 私が担当することとなった塾に在籍する講師は、教室長を除く全員がアルバイト。その95%が大学生でした。
 教育熱の高い住宅街に位置していた塾のため、生徒はたくさんいます。しかし、アルバイト市場は超売り手市場。なかなか募集をかけても応募がない状況でした。講師の頭数が揃っておらず、各講師への負担は増えるばかりという状況でした。
 そこで、大手求人広告会社に募集記事を大々的に出したのです。運良くその記事を見て、2人の大学生が応募してきてくれました。とても優秀な大学に所属する2人の学生でした。
 面接のやり方も何もわからない入社1カ月目の教室長は、わからないなりに、志望動機や長所・短所など、あれこれ質問をしました。今思えば、形だけの面接です。それぞれの質問には明確な意図はなく、ただ「これはお決まりで聞くものでしょ?」ということを思いつくままに尋ねるという感じでした。
 結果、2人とも採用しました。
「う〜ん、どうしようかな」という迷いも正直ありました。
 しかし、とにかく人が足りていない状況です。頭数を揃えることが先決。あとは教育でなんとかなるだろうと考えて、採用することを決めました。

「採用の失敗」のデメリットは、売上減だけにとどまらない

 結論から言ってしまえば、この2人は採用すべきでなかったと今は言えます。
 
◎頭がいい分、できない子どもの気持ちがわからない。
◎自分のやり方を押し付ける。
◎生徒により態度が変わる。
 
 以上のことから、生徒から人気を得られず、担当させていた生徒が続々と退会してしまう事態となったのです。
 評判は、退会した生徒が学校中に広めます。保護者は地域中に広めます。口コミというのは恐ろしいもので、「悪い塾」という評判はあっという間に広がっていきました。いったん、「悪い塾」という烙印が押されると、それを覆すことは容易ではありません。
 まさに私は、そんな経験をしました。それもたった一度の採用の失敗によって……。

「人財」ではなく、「人手」の採用になっていないか?

 人を採用するときには妥協してはいけません。しかし、妥協して人を採用する場面をこれまでにしばしば見てきました。
 私自身の先ほどの例も含め振り返って考えると、それらには共通する状況がありました。
 それは、「人手不足で追い込まれている状況」です。
 私の塾時代の場合も、とにかく講師の頭数が揃わず、切迫していた状況でした。それ故に「不足を埋めないと回らないから」という動機の採用でした。
 私以外の事例には、新規事業立ち上げや既存社員の突然の退職など、その背景はさまざまですが、共通するのは人手が不足していて、「今すぐにでも人を採用したい」という状況です。こういうときこそ妥協しやすいのです。
 今すぐにでも調達したいというときの「人」とは、「人財」ではなく、「人手」という意味合いが強くなります。
 気持ちが焦っているため、求める水準より多少低かったとしても、「まあ、いいか。教育でなんとかなるだろう」となりやすくなります。既存社員との相性に違和感があったとしても、「入社した後に何とかなるだろう」と目をつぶってしまいやすくなるのです。
 これが妥協です。妥協以外の何ものでもありません。
 追い込まれているから、気持ちが焦ることで、妥協してしまうわけです。
「人手不足穴埋め採用」のときには妥協してしまう危険性が高まる傾向があると覚えておいてください。

常に探し続ける

 ちなみに、私ではありませんが、大学生のころクリスマス前に彼女を見つけて、年明け前に別れる男友達が3人いました。
 今思えば、クリスマスに一緒に過ごす彼女がいないのは寂しいからと、追い込まれた気持ちで焦った結果、妥協したのでしょう(女性のほうもしかりでしょうが)。
 妥協するから、長続きしない。これは恋愛も採用も同じ失敗パターンでしょう。
 では、どうすればいいのか。
 それは、追い込まれる前、余裕のあるときに採用活動を始めることです。
 足りなくなってからではありません。足りなくなると予想できた段階で早めに採用を始めるのでもありません。
 常にいい人財はいないかと探し続けるのです。
 人手不足というマイナスの状態をプラスマイナス0にする採用でなく、プラスマイナス0からプラスにする採用を通年でやり続ける企業こそ、いい人財を妥協することなく採用きます。
 そもそも、これからの時代、「人手」はいらなくなっていくでしょう。なぜなら、「手」はAIやロボットでもコンピュータでも、テクノロジーの力で代用が十分可能になってくるのが時代の流れだからです。
 そういう状況になる前に、財産となるような「人」しか採用しないという姿勢を持つべきと私は考えます。
 あなたはどう考えますか?
 
▼同書の「目次」をご覧になりたい方は、下記の記事をご覧ください。

【著者プロフィール】
酒井利昌(さかい・としまさ)
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役/採用コンサルタント。
1981年、愛知県みよし市生まれ。南山大学総合政策学部卒業。学習塾の教室長、人材会社の法人営業担当兼キャリアアドバイザーを経て、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツに入社。アタックス入社後は、採用コンサルティング事業を立ち上げ、営業コンサルタントとの二刀流で、年間250回以上の現場支援、研修、セミナーに従事。採用コンサルタントとしては、超売り手市場のなか、これまで携わった会社すべてが短期間で採用目標達成を実現。支援してきた職種は、営業、SE、施工管理、警備員、建築・土木関連職、物流管理、製造現場職人、デザイナー、清掃、配送、機械メンテナンス、店舗接客、事務職など多岐に及ぶ。採用できない会社が自力で採用できる会社へと変わっていることから、これからも「強くて愛される会社を一社でも多く世に生み出す」「絶対達成する会社を一社でも増やす」ために、人財の採用から育成、戦力化までを一貫して担うコンサルタントとして、全国の会社に伴走し続けていく。
 
【監修者プロフィール】
坂本光司(さかもと・こうじ)
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長。徳島大学客員教授。
1947年静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。他に、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞実行副委員等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。著書にベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)』(あさ出版)など多数。アタックスグループ顧問。

いかがでしたか?
 
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