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【採用活動】この3つの覚悟があれば、採用基準を下げてもいい

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
先日のnoteで、いい採用活動するために絶対やってはいけないこととして、「採用基準を下げる」を挙げて、なぜいけないのか、下げると何が起こるのかについて詳しく解説しました。

 ただ、中小企業の採用コンサルのスペシャリスト・酒井利昌さんは、新刊『増補改訂版 いい人財が集まる会社の採用の思考法』の中で、採用基準を下げるなら、3つの覚悟が必要であるといいます。今回は、同書の中から該当箇所を全文公開します。

安易に採用基準を下げると、組織は疲弊する

「採用基準」を下げていいのは、この2パターン

「御社の採用基準は何ですか?」
 初めてお会いした、ある中小企業経営者と採用に関する話題になったので、尋ねてみました。
「採用基準は、下げまくっています。段階的に下げていった結果、今の採用基準は、日本語をしゃべれることです。大げさな話でもなんでもなく、それくらいしないと人が集まらない……」
「いやー、本当にそうですよね。そして、採用基準を下げたからといって応募があるわけでもないんですよね」
 私は同調しつつ、次にこう言いました。
「でも社長、採用基準を下げてもいいのは、次の2つのパターンのいずれかです。
 
 1つ目は、今後、お客様に提供する価値基準を下げるつもりでいること。
 2つ目は、戦力化までの育成シナリオが万全にあること。
 
 社長、御社の場合はいかがですか?」

採用基準を下げるかどうかは、入社後の教育をセットで考える

 売上=顧客数×単価×購買頻度です。
「〇〇のことだったら、御社だよね」とお客様に認識していただき、お金を払い続けていただくことが経営安定につながっていきます。そういったお客様がたくさん存在すればするほど、安定基盤ができます。
 この安定基盤は、自社がこれまで提供してきた価値に満足していただいた結果とも言えます。
 企業は存続し続けなければなりません。それは社員のためであり、社員の家族のために。そのためにやるべきことは、お客様にご満足いただけるサービスの提供です。
 これは原理原則だからでしょうか、私はこれまでに1つ目の「お客様に提供する価値基準を下げるつもりでいる」と言う経営者にお会いしたことがありません。
 では、2つ目はいかがでしょうか?
「戦力化までの育成カリキュラムが万全に整備されていること」
 どれだけ採用時に基準が低くても、本来の採用基準にまで引き上げ、さらに成長曲線を描ける育成カリキュラム、メニューが用意されているかということです。
 日本のプロ野球においては、「育成選手制度」があります。支配下登録選手(原則上限70人)はペナントレース(公式戦)に出場できる一方、育成選手は、出場できません。
 つまり、今は実際の現場に立たせる基準には達していないけれど、そのポテンシャルがあり、まさに育成していこうと、技能の錬成向上およびマナー養成を行なう対象が育成選手です。
 企業が本来の基準を下回る人財を採用するということは、価値を提供するまでに育成を要することを意味します。
 企業が採用基準を下げるということは、入社後の教育をセットで考える必要があるということです。

3つの覚悟があれば、採用基準を下げてもいい

 つまり、基準を下げてでも採用する企業には、3つの覚悟が必要と言えます。
 
 1つ目は、育成する覚悟。
 2つ目は、待つ覚悟。
 3つ目は、芽が出ない覚悟。

 
①育成する覚悟
 1つ目の育成する覚悟とは、コストを払う覚悟です。
 育成するとは、社内のリソースを対象者に投資するということです。金銭的コストだけでなく、既存社員の時間も費やすことになります。採用基準を下げなければ不要であったはずの教育やマネジメントの時間が必要となってきます。リターンを得るまでの時間的コストは無視できません。
 さらに、数値では算出しづらい労力(精神的コスト)もかかります。
 一人前にするためには根気が必要です。自身の業務をこなしつつ、育成するのは相当な根気が必要です。
 採用基準を下げるからには、その覚悟が必要です。
 
②待つ覚悟
 2つ目の覚悟は、待つ覚悟です。
 少なくとも今までよりは時間を要することになります。求める基準にまで持っていくには、時間がかかります。それまでは先行投資です。
 そんなことをやっている暇がない、余裕のない企業は待てません。財務的にも、時間的にも余裕があれば、育成期間として割り切れるでしょう。
 その場合でも、いつまでを「育成期間」とするか定義づけし、期限から逆算した育成プログラムは必要でしょう。期限も定めずに、いつまでも待てるほど、ボランティア精神あふれる会社なら別ですが。
 
③芽が出ない覚悟
 3つ目の覚悟は、芽が出ない覚悟です。
 たとえ、期限を決めて先行投資しても回収できないリスクはあります。育成する覚悟があって、基準に達するまで待つ覚悟があっても、芽が出ないこともあります。
「あらゆるコストをかけても回収できない」、その覚悟があるか、ということです。
 
 採用基準を下げてもいいのは、
 
(1)お客様に提供する価値基準を下げるつもりでいること。
(2)戦力化までの育成シナリオが万全にあること。

 
 このいずれかに該当し、(2)の場合であったとしても、
 
 ①育成する覚悟
 ②待つ覚悟
 ③芽が出ない覚悟

 
 という3つの覚悟がある必要があります。
 そうでない限り、安易に基準を下げて、採用することは組織を疲弊させることにもつながりかねません。
 本来採用しなければ得られたリターンが奪われる可能性すらあります。
 短期的視点だけではいけませんが、中長期的な視点に立って考えたとしても、基準の低い人材を採用することにはリスクが伴います。
 
▼同書の「目次」をご覧になりたい方は、下記の記事をご覧ください。

【著者プロフィール】
酒井利昌(さかい・としまさ)
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役/採用コンサルタント。
1981年、愛知県みよし市生まれ。南山大学総合政策学部卒業。学習塾の教室長、人材会社の法人営業担当兼キャリアアドバイザーを経て、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツに入社。アタックス入社後は、採用コンサルティング事業を立ち上げ、営業コンサルタントとの二刀流で、年間250回以上の現場支援、研修、セミナーに従事。採用コンサルタントとしては、超売り手市場のなか、これまで携わった会社すべてが短期間で採用目標達成を実現。支援してきた職種は、営業、SE、施工管理、警備員、建築・土木関連職、物流管理、製造現場職人、デザイナー、清掃、配送、機械メンテナンス、店舗接客、事務職など多岐に及ぶ。採用できない会社が自力で採用できる会社へと変わっていることから、これからも「強くて愛される会社を一社でも多く世に生み出す」「絶対達成する会社を一社でも増やす」ために、人財の採用から育成、戦力化までを一貫して担うコンサルタントとして、全国の会社に伴走し続けていく。
 
【監修者プロフィール】
坂本光司(さかもと・こうじ)
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長。徳島大学客員教授。
1947年静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。他に、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞実行副委員等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。著書にベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)』(あさ出版)など多数。アタックスグループ顧問。

いかがでしたか?
 
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