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河内音頭にのせまして(フラッシュフィクション2000字)
蒸した夜に、白熱灯の光がつらなる。人いらの喧騒。
真ん中にそびえるまだ空っぽの紅白の櫓。予感だけで腕が動き出す。
絶対一緒に食べよな、って言ってたフランクフルトとタコせんは食べしたし、ザベスがアップする用の浴衣の写真も一緒に撮った。クラスの子とか一年のとき一緒やった子に会うたび浴衣ほめあって、写真撮って、も十二分にやった。そろそろ踊る準備してもいい頃のはず。
それにスーパーボールすくってるくらい
特別な言葉で紡がれる小説_『ここはとても速い川』井戸川射子
0、小説を深く愛する人が、泣き出した小説
井戸川射子『ここはとても速い川』(講談社)
2021年の野間文芸新人賞を受賞された作品なのですが、選考会のとき保坂和志さんがこの作品の良さを語っているうちに泣いてしまった、というエピソードがSNSで流れてきました。
いい小説なんて死ぬほど読んでるだろう人が、小説を深く愛してるだろう人が、泣き出すような、それも読んでる時でなく語りながら泣き出す小説って、
東京怪談1(掌編:10分以内)
土曜日の夜、とくに新宿のような街では様々なものの境界線がぼやけると聞いております。
派手なネオンの風俗店とやかましい外国語がまくし立てられる中華料理店、アジアの雑多な雰囲気にカメラを向ける欧米の若者たち、金髪にピタリときめたスーツ姿のホスト集団、夏だというのに革ジャンを着た黒人の客引き、ハイレグのバニースーツに豊かな胸を押し込める女たち、それらを見ては何かささやき合い笑いながら往来をゆく人々