見出し画像

第6期ゲンロン 大森望 SF創作講座の思い出

受講生として参加した私の備忘録としての日記なのでだらだら長いですが、太字だけ読めば、何かしらの情報としても読める。はず。これから受講を考えている方にもどうぞ。
ここで勝っていきたい!という意気込みの強い方は、古川桃流さんが書かれた記事がとても参考になると思う。私のは、この厳しい環境でとにかく死なずに生き続けるには、みたいになってる。(基本、日記なので自分が辛かったことが・・・)

SF創作講座の詳細はこちら。

ちなみに、受講前の私のステータスは以下。
・小説読むのは好き(ジャンルでの好き嫌いはないけど、純文学多くなりがち)
・小説は年1本くらい書いている(純文学系の公募に出してる)
・SFは知らない。読んだことはあるけど、SF!って意識して読んだことない

0、稀代の『小説脳』に学びたい。受講の目的

この講座を受講したいと思ったきっかけは、ある小説との出会いがある。
酉島伝法『皆勤の徒』

もともと小説は好きだし、どんなジャンルでも大体おもしろく読めるけど、なんとなく刺激が足りないと思っていたときに落ちた雷だった。
詳細な感想はここでは書かないけど、自分の中で何かが再び動き出すような、自分の世界を変える1冊。
この作品の解説を書いていたのが大森望だった。
それまでは名前を知っている程度で、どんな人なのか知らなかった。アイドルのおっかけであることも知らなかった。でも大森さんの翻訳した小説や解説、対談記事、ネット配信なんかを見ていくうちに確信した。

卓越した『小説脳』の持ち主。
 
あくまで私の持論なんだけど、
小説というのは基本的に、それぞれその小説の「イデア」みたいなものを持っている。下手な小説にも巧みな小説にも「イデア」はある。そしてその「イデア」の良し悪しが小説の良し悪しを決定づけていて、「イデア」の良し悪しを感じ取る力は読者の「小説脳」がどれだけ発達してるかによる。だから「小説脳」が発達すると、上手い下手、ジャンルや好み、時代の流行りなんかを超えた小説の良し悪しが分かるようになる。どれだけ奇妙で誰も見たことがないような小説でも、その「イデア」が持つ輝きを感じ取ることができる。

大森さんのことを調べていく中で、この講座のことも知ることになる。
SFというジャンルのことは全然知らない。SFの中に好きな小説もあるけど、その小説が好きなだけで、SFが好きな訳ではない。
でも、小説好きの端くれとして、稀代の『小説脳』の持ち主、大森望と同時代に生きてお金を払えば講座を受けられるなんてことがあるならば、そんなチャンス逃すわけにいかない。
さらにSFのことも学べるなんて一石二鳥じゃん。
SF書けるとか、なんかかっこいいし!

というわけで、
『大森望のもとで自分なりのSF小説を掴みたい』
それが私の目的であった。

1、お金と情報を用意すべし。申し込み

2022年2月3日、私は朝からそわそわしていた。ゲンロンSF創作講座第6期の申し込み開始日だった。本当は前年度から受講するはずだった。でも前年度は気づいた時にはすでに満員御礼、逃した魚への渇望は時間と共にふくれ上がり「今年こそは!」と息巻いていた。
twitterで収集した情報によると、今年の受講はさらなる激戦が予想されている。申し込み開始の18時と同時に滑り込むため、当日の行動全てを調整して朝から臨戦体制で過ごしていた。
そのかいあって、無事3着(SF作家育成サイトの並び順が申し込み順である、という噂が本当であれば)をゲット。でも18時と同時に申し込んだのに3着だったということは、私より息巻いてる人がいるのか、楽天ひかりが遅いのか。
(↑サイトの並びは各受講生アカウントのアルファベット順だというTipsが投下されました。私はboundforNanbaなので、Bから始まる。それで3番目だったということみたい)

結局その後、40あった受講生の椅子は3時間で埋まってしまったらしい。
(ちなみに2023年は4月3日が申し込み開始日らしいけど、ゲンロンスクールのTwitterで最新情報チェックしてください)

最初の課題がメールで連絡が来たのは、それから約1ヶ月後の3月16日。
「あなたの特徴をアピールしてください」
課題の説明書きの最後に(大森望)とあった。
単調なMSゴシックの羅列が、見たこともない大森さんの直筆に変化していく。
席をゲットできた喜びにかまけて、全然気づいていなかった。
大変な講座に参加するんだ、とそのとき初めて気づいた。

講座への意気込みは十分。
でもそれと同じくらい不安が膨らんでいく。
過去の受講生たちの作品を拾って読んでいくうちに、不安の方が大きくなっていった。

2、だいたい敗ける。初回講座のこと

結局、初回講座は惨敗で終わった。
講座の打ち上げを終電で切り上げて、新宿にひとり降り立ち、『串カツでんがな』のカウンターでウーロンハイをあおる。帰り際、黒い肌に映える白いエプロンをつけた店員さんが「マタユックリオイデヨ」といってあげた泡のついた手を見て泣いた。

①自己紹介・自意識過剰問題

初回の講座日までに、受講生の作品が投稿されるWEB〈超SF作家育成サイト〉に自己紹介を書く必要があった。

小説を書く講座なのだから、筆歴とか書いた方がいいのか。純文学系の賞で最終候補に残ったことがあるからそれを書くべきなのか。でもそれは私にとって受賞作に「選ばれなかった」記憶だから、あまり書きたくない。それにSFの講座なのに、純文学とか何抜かしとんねん!とか思われるかもしれない。
そんなこと思われたくない。みんなと仲良くしたい。
それに以前の人たちのを見ると、なんかどえらいポップな感じで、そんなこと書いてる人あんまいない。
イキってると思われたくない。気さくな人と思われたい。
意気込みと不安の葛藤で脳が14歳になり、やばい200文字が積み重なっていく。

さらにアイコンも貼らないといけないらしい。できれば顔が分かるものがいいらしい。カメラロールが謎の自撮りで埋め尽くされていく。

混迷を極めていた。

結果、面白くなければ情報もない自己紹介になった。
違ったらあとで変えればいいや、と無難に様子を見ることにした。

だから、初回授業で、厳しい顔の大森さんが
「自己紹介ちゃんと書かないのはダメ。与えられた機会を活用しないのは一歩出遅れるということ
といったときにHPが半減した。
後から分かったことだけど多分、大森さんは自己紹介を初回しか見てない。他の人も多分、そういう人が多いと思う。だから後で変えてもあんまり意味ない。

で、でもアイコンは指示通り、ある程度顔が分かるものにした!
なのにゲスト編集者、東京創元社の小浜さんが
「別にアイコンは顔じゃなくてもいいんじゃないの」
とおっしゃって、さらにHPが半減した。

②梗概選ばれない問題

梗概を書くのは初めてだった。
純文学系の公募では、梗概は必要がない。
小説(実作)も、プロットみたいなものを組んでから書いたことがない。いつも書きながら考える。
だから梗概の書き方も、事前に話の筋を考える方法もわからない。

困った挙句、過去に書いた小説をSFっぽく改変することにした。
出来上がっている小説の要約を書く。それならできそう。

実際できた。そのうえ、なんかイケてる気がした。
これなら選ばれるかも。ちょっとワクワクした。

締め切りを過ぎると、サイトに上がった他の受講生ライバルたちの梗概を読むことができる。
ドキドキしながら開いて読み始める。

?????

もう一回読む。

?????

あれ、全く分からない。

内容云々の話じゃない。そもそも言葉が分からないのだ。
地磁気? ハイブリッド? 宇宙移民? 腐食性菌糸? 共生型菌類?

あ、そうだ。ここは「SF」創作講座だった、とそのとき思い出した。

それでも期待を捨てきれなかった。他の人の梗概が、全然読めなかった(全部読んだはずなのに)から、余計にそうだったんだと思う。
でも実際は、1つも評価が入らなかった。

選出された人の梗概も、講評を聞いてもなぜ選ばれたのかさえ分からなかった。内容が分かっていないんだから当たり前だった。
HPは0になった。

これ、1年やっていけないんじゃないか。
『串カツでんがな』のウーロンハイは、死体と化した体にさえ異常に濃かった。

3、実作は書くべし!2回目講義

講義のあと、1週間ほど立ち直れずにぼんやり過ごしていた。

でも、いつまでもそうしているわけにいかない。2回目の梗概締め切りと1回目の実作締め切りが刻々と近づいてくる。

梗概はダメでも、実作なら!

正規の講評対象にはならないけど、実作を提出すれば大森さんは読んでくださる、ということを思い出す。
そうだ、私は梗概を書きにこの講座に来たんじゃない。小説を書きに来たんだ!

①読んで講評までもらえるなんて、それだけですごい

と言いつつ、梗概も捨てきれなかった。
なぜかというと、次のゲスト講師が、大好きな作家・円城塔だったからだ。

少しでもよく思われたい・・・なんなら選出されたい・・・・ていうかそもそも自分の書いたもの読んでもらえるん? 大森望に?! さらに円城塔に?! 何この状況!! 

急にパニックになって速攻で喫茶店に向かった。
(昔、円城さんのインタビューで、家でやってるとすぐ寝てしまうから喫茶店で書くことが多い、みたいなことを言ってるのを見てから、私も小説を書くときは喫茶店に行くことに決めている。)

実作の講評は選ばれた者しかもらえないけど、梗概は全員講評がもらえる。

公募では、最終候補まで残らないと全く講評がもらえない。
自分の作品がなぜ選ばれなかったのか。
落ちたことよりも、落とされた理由が分からないことが1番辛かった

ダメだとしても理由を聞かせてもらえるなんて、それだけでも本当にすごいことだ。それも大森望と円城塔に!!

状況を最大限享受するには、とりあえず自分が全力で書かなければならない

ここに来てようやくスタート地点に立ったのだった。

②梗概の要約をしてみる

2回目の梗概が出揃った。やはり今回も他の人のものがあんまり分からない。
でも、前回みたいに講評の意味さえ分からない状態にはしたくない。

それでとりあえず、梗概の要約をしてみることにした。
ちょうど、同期のSlackスレッドに梗概一覧をエクセル表で送ってくださった方がいて、それを活用させてもらった。
分からないことも、表の中に書き出してみる。調べて分かりそうなことは事前に解決して行く。

わかった範囲でいいので、自分でも面白かった順にランキングをつけてみる。
それを、モチベーションのために『裏SF創作講座』というものに投票もした。

そしたら、自分が面白いと思ったものが結構他の人とかぶっていて、ちょっと自信がついた。そっか、間違ってなかったのか、と思えた。
逆に全然かぶってないものは、それなりに自分で読めたと思ったものとか、自分の中で魅力が明確なものが多かったから、それはそれで自信を持って推せた。
(ただここでの人気梗概と、選出される梗概が一致することは少ない・・・)

こんな周辺の仕組みができている(全部ボランティア!)ということは、これまでの受講生もみんな私と同じように苦しみながら試行錯誤してきたんだな、と思えた。

③実作、マジで書いて良かった事件

梗概選外の私の実作に点数が入った。
そのうえ、円城さんに褒めてもらえた。完全に事件だった。

2限目、梗概の評価は散々だった。死にたかった。

でも3限目、実作講評の時間。
まずは梗概選外のものからから目についたものの講評がなされる。大森さんが全部読んでくださる、というのは知っていた。
だから実作も書いた。

が、なんと、今回は円城さんも全部読んできてくれた、ということであった。
私の書いた小説が憧れの人を占拠した時間があった、という事実だけで消失しそうだった。

ドキドキする間もなく、1番に、私の名と小説のタイトルが読み上げられる。
聞き慣れない自分の名前。
筆名を声に出して呼ばれることにまだ慣れていなかった。

違和感のある、けれど自分を示す音に脳が一気にヒートアップして、この後もらったせっかくの言葉を理解するための領域は死に絶えてしまった。
(後で、講座の録画を無限ループで見ることになる)

結局、円城さんと、さらに大森さんも点数を入れてくださり、梗概選外ながら3番目の点数をもらうことになった。

しかしこれは初回実作だからこその極めてラッキーなことだったと、今になって本当に思う。
けどこの経験があったから、この後続く辛い日々をやっていけたところは大きい。だから本当に感謝している。

4、ここは『SF』創作講座である。3回目以降

本当の苦悩はここからだった。
実作も全部書く!と決めた(結局2回落としてしまったけど)から、
毎月3週間程度で、1200字の梗概と20,000字の実作を両方書き続けるという過酷なループが始まった。

①梗概、初心者は真似すれば良かった問題

梗概に1番苦労した。
書き方、というのもあると思うけど、そもそもSF初心者の私にとっては、課題に応じたアイデアを考えることができなかった。

『SF脳』がない。

これまで、現実世界を再構築するやり方でしか小説を書いてこなかったから、
世界設定自体を一から構築していくSFに、どうアプローチすればいいのか分からない。
SFの教科書的なものや、NEWTONなんかを並べて、なんとか無理くり作ってみても、科学的な知識にも自信がないからどれも薄っぺらく思える。
中途半端に分かってくると、これSFじゃなくてファンタジーじゃない? ってなる。
どこを細部まで構築して、どこは大雑把でもいいのか、加減も分からない。
このハンバーグなんの肉で出来てるんだろう? てか、外食産業とかある? みんなで食べる文化とかある? 店の建材は? 店に来るまでの道路は何車線? そもそも車ある? 車? そんな概念ある? ワープとかで移動する種族かも…

そうしているうちに、アイデアさえ思いつかなくなった。

それでも1度だけ、梗概が選出されたことがある。
テーマは長谷敏司さんの
「自分の人生をSFにしてください」
こういう広いテーマの方がいける、ここで取らねばもう無理だ、と今までのやり方と全然違う方法をとった。

面白い小説の真似をする。

そのときたまたま読んでいたSF小説が、自分が描きたいテーマに似た題材を扱っていた。そして面白かった。だから、真似してみることにした。
出来上がったものは、自分的には「まるパクリやん!」という感じだった。
だから講評で、歩くSF Wikipediaみたいな方々にバレてしまうことを恐れたけど、バレなかった。(実は、全然うまく真似できてなかったんだと思う・・・)

そして最初で最後の梗概選出と無事あいなった。
(長谷さんのお心で、無理にねじ込んでもらった感じだったけど)

課題は全部、真似手法をとってれば良かったな、と今になって思う。
最終実作以外は練習なんだから、真似がバレたって問題ない。
8回梗概提出があれば、8本の面白いSF小説を深く研究することになるのだから、それだけでも勉強になったはずだ。
私みたいなSF初心者には、あるはずもない自分の中のSFの泉を探すより、それが最良の道だったかもしれない。

②『その呪いで』の心得。SF小説の作法

当初、「小説を書く」ことにはそれなりの自信があった。
上手い人はたくさんいるけど、自分なりの色を出せば実作では戦えるんじゃないか、と思っていた。

が、全然甘かった。
ここは小説を書く場ではない。『SF』小説を書く場であった。

主に苦戦したのは
・世界設定のSF的理屈の作りこみ
・時代設定

大森さんは特にこの2つにとても厳しい。
アイデアとも近いんだけど、ちょっと違う。

1番「へー!」と思ったのは、新井素子さんの課題「雨を描いてください」で提出されたある梗概への反応だった。
めちゃくちゃ面白い梗概だったんだけど、私にはSF設定にどういう反応があるのか判別がつかなかった。
けど結局この梗概は全選考委員のイチ押しとなった。

書き出しはこうである。

一万年前、エベレスト山頂の氷解に伴い巨大な古代鮫メガロドンが復活し、その呪いで鮫が空から降るようになった。

『天気予報から鮫が消える日』花草セレ

「鮫が降るっていう訳のわからない状況も『その呪いで』っていわれると、『そうか、呪いか、じゃあ仕方ないな』ってなる」

理屈を作り込み、それを流れの中で読者にわかるよう書けること。
それと同時に『その呪いで』のようなパンチラインを使えるようになること。

そのちょうどいい塩梅を得ることこそが、SF小説を書けるようになることなのかもしれない。

5、SFで戦いたかった。最終実作への後悔

全てが終わった今だからこんな分かったようなことがいえてるけど、最終実作の直前、私は完全に袋小路に迷い込み、そして怯えていた。

アイデアがない。
理屈足りないとか、時代はここじゃないとか言われるの怖い。
最後だからもう取り返しつかない!!

強いライバルたちの後ろ姿をみ続けているうちに消えかけていた闘争心が
最終実作を前に再び燃え始めている。
と同時に、この1年で思い知った自分の力不足がのしかかってくる。

この戦いで勝つための道はないのか。
血迷った私のとった道は、SFを書かないことだった。

この1年頑張った。頑張ったから自然と身についているSF的な何かがあるはず。
そう信じて、あまりSFとか考えずに自分の書ける小説に全力を投球した。

そして惨敗した。やはりここは『SF』創作講座であった。

最終候補作が発表された講義の後の飲み会、私は、というか多分多くの受講生が死体だった。墓場の飲み会だった。
そこで私の最終実作への自己アピールに喝を入れてくださった方がいた
「SFが書けないなんて、あんなこと思ってても自己アピールに書いちゃダメ。選ばないでください、って言ってるようなもの」
大人気なくその場で泣いた。その通り過ぎた。

最終実作でSFから逃げたくせに、自己アピールで自己擁護までして、
なんのためにこの講座にやってきたのか。
めちゃくちゃかっこ悪かった。

気持ちを立て直すに、最終選考会のギリギリまでかかった。
でも、もっと時間がかかった、というか、立ち直れないまま、なんとか体だけ引きずって来た人もいたと思う。

選考委員の方々とやりとりしている受講生たちを見ていて、眩しかった。
それは、自分が残れなかった場所に彼らがいるから。
けどそれ以上に、
彼らは自分なりのSF小説から逃げずに戦おうとしている人たちだったからだ。
自分の小説について真摯に受け答えする姿は、とても輝いていた。

ゲンロンSF新人賞を、全会一致で見事受賞された猿場つかささんの
「海にたゆたう一文字に」
はめちゃくちゃ面白いです。(語彙・・・)
ゲンロン本誌に掲載されるのが楽しみでたまらない。
(猿場さんの作品、私は「○」も大好きなのでぜひ。)

こんな面白いもの書く人たちと一緒に一年やってこれたんだな、と思うとほんとすごいところにいたんだな、と実感する。

猿場さん、本当におめでとうございます!!

6、創作者コミュニティとしてのSF創作講座

一年どうだったか、と聞かれたら、「しんどかった」と答える。
とにかくしんどい。肉体的にも精神的にも。

疲れてしまうと物事をちゃんと考えられなくなる。そして明確な目的もないままただ目の前の課題に必死になることで赦されようとしてしまう。
この講座の大部分もそんな時間を過ごしてしまった気がして、本当にもったいなかったと思う。

①プロ作家の、明日から使える知恵を授かる

当初の目標、「大森望のもとで私なりのSFをつかむ!」がデカ過ぎて扱えない、と気づいた時点で、目的をもっと小さなものに変えればよかった
今月の課題ではこれをやってみる、とか、今月はこの小説家っぽいものを目指して書いてみる、とか。

今、ここにある苦しみの元凶を見極めて、細分化して、それを一つ一つ取り除いていく作業を積み重ねる。それこそが、この厳しい講座を生き抜いていくための極意だったかもしれない。

作家ゲストの講義では、そんな小さな目的をクリアしていくための知恵、そもそもの目標設定のやり方を授けてくださるようなものも多い。
梗概や実作の評価に話がいきがちだけど、作家ゲスト講義もとても貴重な機会だと改めて思います。

②応援してくれる先輩、苦しみを分かち合う同期

しんどかった、というのは私だけの感想ではない、はず。
というのもこの講座の周辺には、この過酷な状況を生き抜くための、過去の受講生たちの知恵が詰まった様々な受講生応援システムがある。

全てがありがてぇ。感謝を込めて、以下。

裏SF創作講座・・・おもしろかった梗概や実作に、投票できるサイト。誰でも参加可能。初回講座の際に大森さんが「面白かったものには、面白かったということも大切」とおっしゃってたので、そのためにも私はできるだけ投票してた。

ダールグレンラジオ・・・通称ダルラジ。パーソナリティの先輩受講生(ゲストは作家さんなどもいる、豪華)が、梗概や実作を読んであれやこれやを話してくれる。その他、受講に際する豆知識なんかもある(2022年の初回放送はマジで参考になる)。最終実作では、ダルラジ大賞をいただいたよ!わーい!

やんぐはうすラジオ・・・やんぐはうすに住んでる現役受講生が毎回ゲストを呼んで(これも豪華!)、講座生のあれこれを話してくれる。来年も襲名される?ぽい。

受講生SNS・・・今年はSlackと、discordを使っていた。wordpressの使い方分かんない!教えて!という些細な質問から、商業誌への原稿募集、みたいなチャンスが投下されることもある。遊びに行きましょう、的ななごみもある。立ち上げてくださった同期生に感謝。

講座の後に、毎回飲み会もあるから(大森さんをはじめ、ゲスト作家・編集者が残ってくれることもある)そこで色々話もできるし、そのほかのつながりはTwitter中心に行われている。私はこれを機会に創作用の専用アカウントを作った。

どういうスタンスで関わっていきたいかは人それぞれ、性格や時期や心模様にもよるけど、私は夏に〈ひらめき☆マンガ教室〉との合同授業の後に行われた大きな飲み会のときに(多分100人くらいいた)、そこでいろんな受講生やOBOG、講師陣と話して初めて
「あ、みんなしんどいし、それでも頑張ってるんだな」
とわかった時に、とても救われたというか、それで当たり前なのか、と気づいた。(限界!と思ってた自分がまだ全然足りてない絶望にも襲われたけど)
自分の内ばかり見ていると辛さが濃縮していくけど、顔をあげると、ほんのひとときでもその辛さが拡散することもある。(余計辛くなることもあるけど)

自分の今ある力を最大限発揮するための周辺環境の活用方法を探って、緩急つけながらやっていくの、大切だったなと思います。

この一年、本当にしんどかった。でも、そのしんどさがあったからこその喜びもたくさんあった。
私は、一年受講して本当に良かったと思ってる。

そしていつになるか分かんないけど、この一年の学びの集大成として、必ずや自分なりのSF小説を書き上げたい!


この一年、関わってくださった全ての方に感謝と愛を込めて
2023.3.31 難波行


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?