仕組みで覚える世界史①王様は言うほど強くない??

歴史に詳しい人は当然知っているのに、歴史が苦手な人ほど知らないことがあります。

歴史が好きな人は、歴史が好きなので自分でいっぱい調べます。そうすると、パターンみたいなものに気付きます。

しかし、そのパターンというのは教科書には書いてないので、授業でしか歴史に触れない人には分かりません。

今回のシリーズは歴史好きが当然のように知っている、歴史のパターンやコツを取り扱います。

★絵本の王様のイメージ
歴史を勉強していると、イメージとのギャップがあって、頭に上手く入ってこないことがあります。

その1つが、王様がまあまあ弱いことです。

「絶対王政」という歴史ワードが謎です。「王様ってそもそも絶対じゃないの??」というイメージがあるからです。

歴史のことを調べていると、権力を握っているはずの王様が、批判を浴びてやりたいことがやれなくなったり、家来や貴族たちに言うことを聞いてもらえなかったりしているのをよく見ます。

絵本の王様のイメージだと、気に食わない家来がいたら首にするなり逮捕したりして強行しそうなものですが、わりとしない。当然するにはするのですが、しないことも結構あるのです。なぜそうなるのか。

★王様が支配しているエリア
歴史をちゃんと勉強する前は、なんとなく王様はその国のすべてを領地にしているように思います。

しかし、国王、日本の場合は天皇や将軍に当たるのですが、この人たちは、実際には国の半分も領地にしていない。

では、それ以外の土地は、誰が所有しているかというと、貴族たちが所有しています。

★領主層
貴族と書きましたが、日本の場合、古代なら豪族、平安時代なら貴族、平安時代の途中からは武士などが、この層を構成しますこの人達のことを領主層と言います。

一応、当時の法律では、この国のすべての土地と住民は、天皇のものになっているのですが、「そういう国を目指したいなー」というレベルにとどまっていて、実際は半分も所有していませんでした。

★反乱の可能性
そうなると、どういうことが起きるかというと、貴族や武士たちが結束したら、領地の広さで天皇や将軍を上回ります。

土地の広さは戦闘力みたいなものなので、本気で殴り合ったら、天皇や将軍が負けて、政権が引っくり返ることもあるのです。

★「支持」に注目する
基本的にそうならないのは、全国の土地を持っている人たちが、ノリノリか、イヤイヤかは別にして、一応その政権を支持しているからなのです。

「政権を支持する」というと、「選挙で政治家を選ぶようになってからの話じゃないの?」と思うかもしれませんが、武士がチョンマゲを付けてる時代から、というより、それよりももっと昔から、その国の支配者は支持を得られるかどうかが重要でした。

これは海外も同じです。

★支持を失った例
たとえば鎌倉幕府は源頼朝が武士たちの支持を受けて成立し、後継者たちが支持を維持しつつ、政権を運営していました。

しかし、次第に御家人たちの不満がたまり、鎌倉幕府に挑戦した後醍醐天皇を、御家人たちが支持したことで、政権を維持出来ず滅亡しました。

後醍醐天皇の政権も、最終的に武士の支持を失い、それまで支持してくれた武士たちの大部分は足利尊氏の支持に回り、全国に力を及ぼせなくなります。

一方、足利尊氏も支持を完全には固めきれず、何度か首都である京都を攻め落とされるなど、政権は不安定でした。

徳川政権も、主に西日本の殿様たちから支持を失い、そのグループとの戦争に発展し、敗れて政権を失いました。

このように、天皇や将軍のようなその国の支配者であっても、支持を失うと、最悪の場合、政権を失うのです。

日本の話ばかりなってしまいましたが、海外でも歴史はだいたいこういうパターンで動きます。

★3つの身分
しかし、現代の選挙や支持率とは違う部分もあります。それは身分です。

身分制度は複雑ですが、あえて3つに分けます。

①まず国王や皇帝・ハーンなど、その国の支配者がいます。日本の場合は、天皇や将軍です。

②その次に豪族や貴族・部族長など、領地を持ち、その土地に住む人を支配している層がいます。

日本の場合、御家人・大名などがこの階級に属します。

③最後は一般庶民です。たいていは農業か漁業か畜産業をしています。

★農民反乱
③の層は、なかなか反乱を起こしませんが、生活がかなり苦しくなり追い詰められると、我慢しきれずに反乱を起こします。大抵は農民反乱という形にになります。

そして、農民反乱はほぼ政権を倒すことなく鎮圧されます。つまり、残念ながら、◯◯幕府を滅ぼすレベルでの、歴史を変えるインパクトはありません。

★領主層
歴史を変えられる力を持っているのは、今まで書いたように、②の層になります。

なので、その国の支配者が気を遣ったり、顔色をうかがうのは、この層になります。

この仕組みに気付いていない時は、絵本の王様のイメージがあるので、「王様くらいの権力があるなら、貴族からバンバン領地を没収してムキムキになれば良いのに、なんでやらないんだろう」と思いました。「力こそすべての時代」というイメージがあるからです。

そういう側面もあるにはあるのですが、王様の政権も支持が大事だと分かると、領地をバンバン没収そしたら、貴族たちが「次に領地を奪われるのは俺たちだ。やられる前にやっちまおう」となって、大規模反乱が起きかねないということが想像出来るようになります。

室町幕府の将軍である足利義教(よしのり)は、気に食わない人をバンバン殺した結果、「次に殺されるのは俺だ」と思った大名に殺害されました。

冒頭に書いた絶対王政の謎も、この仕組みが分かると理解が進みますが、もう少し領主層への理解が必要になります。なので、この謎解きは次回やります。


第2回はこちらになります


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