記事一覧
白い牙、ロンドン、光文社古典新訳文庫
いきなり男二人が、死体を一体と、腹を空かせた狼に追われて雪原を移動しているextremeな状況から話がスタートして、引き込まれる。「漂流」を思い出す自然との厳しすぎる戦い。
第二部で、視点が人間から狼に変わるのが面白い。カラマーゾフの兄弟やサイラスマーナーなど、視点が変わる小説は数知らずだが、動物の視点と入れ替わるのは初めて見た。
仔狼が、光に誘われて、洞窟から出ようとするさまは、プラトンの洞
『木曜日だった男』、チェスタトン、光文社古典新訳文庫
・人間が本心で考えていることなど、言葉に出して言うことの半分か、10分の1ぐらいなものだととなえるサイムと、無政府主義を本気で信奉していると主張するグレゴリー。二人の詩人の対決は、グレゴリーが「すごく楽しい一晩を約束する」とサイムを連れ出した酒場で幕を開ける。伊勢海老のマヨネーズ和えが出てくるのが面白い。(海老マヨのこと?)ただ、冒頭の十数ページの作者のポエムがだるい。これからこういう壮大な話が始
もっとみる『サイラス・マーナー』、ジョージ・エリオット、光文社古典新訳文庫
・神が証しをしてくれることを信じつつ、結局は裏切られ無実の罪を着せられたサイラス。第一章のこの描写から、サイラスの神への不信が物語の出発点であるということがわかる。そうして、サイラスはランタンヤードの生活を捨て、ラヴィロー村での暮らしを始めたのであった。太古の神々は、土地を離れられない。サイラスが感じていたランタンヤードの意地悪な神の力も、ひとたびランタンヤードを離れると、力を及ぼさないように感じ
もっとみる秘密の花園、バーネット、光文社古典新訳文庫
・第一章、だれもいなくなってしまった。不器量で愛想の悪い女の子、メアリ・レノックスは、家族でインドに住んでいた時、母親と父親と召使のほとんどをコレラで亡くし、一人家に置いていかれてしまった。そして、イギリスのおじさんの家に引き取られることになった。この出だしのシチュエーション、強烈。
・10年間閉ざされた秘密の花園、100以上もある閉ざされた秘密の部屋、その秘密を解き明かそうと探検を続けるメアリ
Lady Windermere’s Fan, Oscar Wilde
・厳格なピューリタン派のLady Windermereと、言葉巧みに惑わそうとするLord Darlington。Darlingtonは、ドリアングレイにおけるヘンリー卿を思わせる。Mrs. ErlynneとLord Windermereが不倫関係にあると疑ったLady Windermere、しかし、Mrs. ErlynneはLady Windermereの母であった。
・duches of b
幸福の王子、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫
幸福の王子
・ドリアングレイの肖像を書いたワイルドの作とは思えないほど、倫理観に満ち溢れた作品。しかし、貧しい人に有限の富を分け与えるだけでは限界があることもまた明白であった。この世の一番の謎は貧しさがあること、と幸福の王子は言ったが、自然界において飢えは当たり前にあるものなので、どちらかというと富があることがこの世の謎のように感じる。
・The Nightingale and the Rose
カンタヴィルの幽霊/スフィンクス、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫
短編集
アーサー・サヴィル卿の犯罪
・手相占い師に、あなたは殺人を犯すと言われたことを間に受けて、結婚する前にあの手この手で殺人をしようとするも失敗が続くアーサー卿。やがて、夜道でその占い師を見かけた時に、チャンスと見て占い師を殺し、シヴィルという妻を手に入れた、と思い込んでいる人の話。
カンタヴィルの幽霊
・館に住み着いた幽霊が、アメリカ合理主義的な生き方をするオーティス家の住人に逆に脅かさ
サロメ、オスカーワイルド、平野啓一郎訳、光文社古典新訳文庫
・ヨハネの首をヘロデ王に求めた王女サロメの戯曲。聖書からの引用や、キリスト教的象徴(例えば白孔雀がキリストの象徴である、など)が多用されていて面白い。聖書ではサロメは母ヘロディアに唆されてヨハネの首を求めるが、この戯曲では狂っているかのように美青年ヨハネの口づけを求める。
・訳者によると、この作品のサロメは純真である。処女であり、まともに口づけをしたことすらない。故に、ストレートにヨカナーン(ヨ
ドリアン・グレイの肖像、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫
・主人公ドリアングレイの心の醜さや罪がすべて肖像画の中に描かれた自分に写し取られ、本人は美と若さを保ち続けるという寓話的設定の小説で、視覚的表現に溢れ、非常に面白い。中心にあるのは、正しく生きるべきか、刹那的に快楽的に生きるべきか。悪い行いに対する罰がない時、人はどのように行動するのか。視覚的表現が多いので、映画的な表現も面白いのではないかな。実際、映画化や舞台化は数多くされているよう。
誘惑を
シャイロックの子供たち、池井戸潤
・都内の銀行支店に勤めるバンカーたちの群像劇。章ごとに主人公が違うが、全て関連している。銀行では出世しないと意味がない、という信念に駆られて物語では事件や不正が起こり、人の人生を狂わせていく。少し章の数が多くて一見わかりづらく、時系列もたまに追いづらくなるが、面白いのではないか。
優秀なプレーヤーは、なぜ優秀なマネージャーになれないのか
・マネージャーになる人は、個人としての優秀さを訴えてもだめで、チームのパフォーマンスを上げることにフォーカスしなくてはいけない。課長くらいまでは、自分が200%頑張ればなんとかなるかもしれないが、部長以上でそれをやると組織が破綻する。
・マネージャーとして働く上では、「この人と一緒に働きたい」と思われなくてはいけない。そのため、場の空気を読み、メンバーの状況に合わせて意識的に声をかけて着火させる
フィードバック入門、中原淳、PHP
・管理職の難しいのは、getting things done throuth othersなところ。
・コーチングの考え方が普及したことでティーチングが仮想敵のように語られたが、ティーチングが効果を発揮することもある。要は使い分け。
・フィードバックをする時はSBI (situation, behaviour, impact)を具体的に伝えて何が悪かったのか理解させるとよい
・メンバー間で「
超入門コトラーのマーケティングマネジメント、安部徹也
・マーケティングとは、顧客との関係性を強めてものが売れる仕組みを作ること。究極的には、「買ってください」と言わなくても、顧客から「売ってください」と言われる状態にすること。
・ニーズとは生活者が求めているもので、明言されていたりされていなかったりする。ニーズを具体化したものがウォンツで、例えばマクドナルドのハンバーガーがそれにあたる。ウォンツの中には購買力により買えたり買えなかったりするものがあ