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Lady Windermere’s Fan, Oscar Wilde

・厳格なピューリタン派のLady Windermereと、言葉巧みに惑わそうとするLord Darlington。Darlingtonは、ドリアングレイにおけるヘンリー卿を思わせる。Mrs. ErlynneとLord Windermereが不倫関係にあると疑ったLady Windermere、しかし、Mrs. ErlynneはLady Windermereの母であった。 ・duches of berwick saying to lord darlington “I won’

    • 幸福の王子、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫

      幸福の王子 ・ドリアングレイの肖像を書いたワイルドの作とは思えないほど、倫理観に満ち溢れた作品。しかし、貧しい人に有限の富を分け与えるだけでは限界があることもまた明白であった。この世の一番の謎は貧しさがあること、と幸福の王子は言ったが、自然界において飢えは当たり前にあるものなので、どちらかというと富があることがこの世の謎のように感じる。 ・The Nightingale and the Rose ナイチンゲールが命を賭して与えた真紅の薔薇を、役に立たないと投げ捨てる恋する哲

      • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫

        短編集 アーサー・サヴィル卿の犯罪 ・手相占い師に、あなたは殺人を犯すと言われたことを間に受けて、結婚する前にあの手この手で殺人をしようとするも失敗が続くアーサー卿。やがて、夜道でその占い師を見かけた時に、チャンスと見て占い師を殺し、シヴィルという妻を手に入れた、と思い込んでいる人の話。 カンタヴィルの幽霊 ・館に住み着いた幽霊が、アメリカ合理主義的な生き方をするオーティス家の住人に逆に脅かされたりけなされたりしながら復讐を企てる話。しかし、あまりにもバカにされすぎていて

        • サロメ、オスカーワイルド、平野啓一郎訳、光文社古典新訳文庫

          ・ヨハネの首をヘロデ王に求めた王女サロメの戯曲。聖書からの引用や、キリスト教的象徴(例えば白孔雀がキリストの象徴である、など)が多用されていて面白い。聖書ではサロメは母ヘロディアに唆されてヨハネの首を求めるが、この戯曲では狂っているかのように美青年ヨハネの口づけを求める。 ・訳者によると、この作品のサロメは純真である。処女であり、まともに口づけをしたことすらない。故に、ストレートにヨカナーン(ヨハネ)の体を求めるが、これは母ヘロディアが作品においてバビロンと同一視されており

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          ドリアン・グレイの肖像、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫

          ・主人公ドリアングレイの心の醜さや罪がすべて肖像画の中に描かれた自分に写し取られ、本人は美と若さを保ち続けるという寓話的設定の小説で、視覚的表現に溢れ、非常に面白い。中心にあるのは、正しく生きるべきか、刹那的に快楽的に生きるべきか。悪い行いに対する罰がない時、人はどのように行動するのか。視覚的表現が多いので、映画的な表現も面白いのではないかな。実際、映画化や舞台化は数多くされているよう。 誘惑を退けるにはそれに身を任せるしかない。そうしないと人はそれに病的に捕らわれる。罪は

          ドリアン・グレイの肖像、オスカーワイルド、光文社古典新訳文庫

          シャイロックの子供たち、池井戸潤

          ・都内の銀行支店に勤めるバンカーたちの群像劇。章ごとに主人公が違うが、全て関連している。銀行では出世しないと意味がない、という信念に駆られて物語では事件や不正が起こり、人の人生を狂わせていく。少し章の数が多くて一見わかりづらく、時系列もたまに追いづらくなるが、面白いのではないか。

          シャイロックの子供たち、池井戸潤

          未顧客理解、芹澤連

          ・市場の大半は買ってくれない人が、数回買ったことのあるライトユーザ。こうした人たちに、平均的なターゲット層に当てはまらない顧客を加えた群を、「未顧客」と呼ぶことにする。そして、顧客の理解は、データも集めやすいのでやりようもあるが、未顧客はデータを集めることすら難しい。 ・既存顧客の維持の方が新規獲得よりも効率が良いというのはよく聞く話である。だが、そこまで一般化して良いのかというと、少し怪しい。既存顧客の話の出所は、ラインハルトの論文で、「離反率を10%から5%に減らすと、

          未顧客理解、芹澤連

          優秀なプレーヤーは、なぜ優秀なマネージャーになれないのか

          ・マネージャーになる人は、個人としての優秀さを訴えてもだめで、チームのパフォーマンスを上げることにフォーカスしなくてはいけない。課長くらいまでは、自分が200%頑張ればなんとかなるかもしれないが、部長以上でそれをやると組織が破綻する。 ・マネージャーとして働く上では、「この人と一緒に働きたい」と思われなくてはいけない。そのため、場の空気を読み、メンバーの状況に合わせて意識的に声をかけて着火させることが大切。 ・悪い情報に対して感情的に振る舞うと、悪い情報が届かなくなる。感

          優秀なプレーヤーは、なぜ優秀なマネージャーになれないのか

          トップ5%社員の時間術、越川慎司、ディスカバー

          ・ハンマーしか持っていなければ、全てが釘のように見える、という諺。仕事が終わらないのは、もっと簡単な方法を見つけていないから。(だから、全てが釘に見えてハンマーを使おうとする。) ・効率ではなく、効果を重視する。無駄な作業を効率よくこなしても、意味がないので、目的を考え、やらなくて良いことはやらないようにする。 ・個人では達成できないことを成し遂げるために組織があるので、目標を達成するために周りを巻き込み味方にするコミュニケーションに時間を割くべきである。マイクロマネジメ

          トップ5%社員の時間術、越川慎司、ディスカバー

          フィードバック入門、中原淳、PHP

          ・管理職の難しいのは、getting things done throuth othersなところ。 ・コーチングの考え方が普及したことでティーチングが仮想敵のように語られたが、ティーチングが効果を発揮することもある。要は使い分け。 ・フィードバックをする時はSBI (situation, behaviour, impact)を具体的に伝えて何が悪かったのか理解させるとよい ・メンバー間で「誰々のミスが多い」のような批判を聞いた場合は、トライアンギュレーション(三角推量

          フィードバック入門、中原淳、PHP

          超入門コトラーのマーケティングマネジメント、安部徹也

          ・マーケティングとは、顧客との関係性を強めてものが売れる仕組みを作ること。究極的には、「買ってください」と言わなくても、顧客から「売ってください」と言われる状態にすること。 ・ニーズとは生活者が求めているもので、明言されていたりされていなかったりする。ニーズを具体化したものがウォンツで、例えばマクドナルドのハンバーガーがそれにあたる。ウォンツの中には購買力により買えたり買えなかったりするものがあるので、資金力を背景にした需要をディマンズと言う。 ・市場を年齢や職業などで細

          超入門コトラーのマーケティングマネジメント、安部徹也

          何故我々はマネジメントの道を歩むのか、田坂広志、PHP

          人間との出会いや困難との出会いへの感謝に貫かれた良書。全ての人がこの考え方をしているわけではなく、例えば仕事に求めているものが何もない人、割り切り型の人、など多様な人がいる中でチームを実際に率いる上でどこまで通じるかわからないが、マネージャーの心得としては非常に頷ける。レベルの高い組織では確実に通用するだろう。 ・マネージャーは、部下の人生を預かる仕事であり、その意味での責任の重さがある。安易なキャリアアップや権力志向でマネージャーを目指すのはやめた方が良い。根底には、偶然

          何故我々はマネジメントの道を歩むのか、田坂広志、PHP

          たった1%のリーダーのコツ、河野英太郎、ディスカバー21

          ・リーダーとは役割であり、すべての分野でメンバーの力量を上回っている必要はないし、メンバーがそれを求めるのも正しくない。リーダーはメンバーより偉い、ということでもない ・正しいと思っていれば、意見を具申することこそ仕事 ・10人に1人がリーダーのポジションをやっている。そんなに高度な技術が必要とされるものではなく、不安がる必要はない。 ・リーダーは性善説に基づき、人をやる気にさせる人。マネージャーは性悪説に基づき、人を管理する人、という分類ができそう。 ・いかに自分よ

          たった1%のリーダーのコツ、河野英太郎、ディスカバー21

          文学とは何か、加藤周一、角川ソフィア文庫

          ・文学とは何か、というのは抽象度の高い問いだが、具体的に何が文学で何が文学でないかはある程度共通の理解がありそうだ。例えば、谷崎潤一郎の小説は文学だが、新聞の社説や六法全書は文学ではない。これに対して、客観的に文学とは何かというアプローチを取りたい(これは、positivistなアプローチであり、今日的に正しいかはわからないと思われる) ・文学とは何であったか、については、比較的多くの人の意見が一致しやすい(例えば、エリザベス朝文学の最高傑作がハムレットであった、など)が、

          文学とは何か、加藤周一、角川ソフィア文庫

          世界の一流は雑談で何をしているのか、グジバチ

          元Googleの人材育成統括部長のグジバチが雑談について書いた本。 ・雑談=無駄話ではなく、下記の目的を持って雑談をするべきである。 ①状況を確認する ②情報を伝える ③情報を得る ④信用を得る ⑤アクションを決める どちらかというと、small talkやchatよりは、dialogueに近い ・1on1が導入され始めた背景には、メンバーがプライベートな問題を抱えていると、仕事のパフォーマンスが著しく下がるという考え方が定着したからだが、コロナ禍によるメンバーの孤立が、

          世界の一流は雑談で何をしているのか、グジバチ

          AIが突き止めたトップ5%リーダーの習慣、越川慎司

          ・リーダーはメンバーより偉いわけではなく、役割と責任範囲が異なるだけ。リーダーがメンバーの全ての能力を上回っている必要はない。 ・5%リーダーは、メンバーのストロングポイントに着目して伸ばしていた。ウィークポイントは、自分で補ってもらうか、メンバー同士で補い合うよう調整するというアプローチがよい。それを実現するには、性善説でいる必要がある。つまり、メンバーに何かしらのタレントがあると信じること。 ・5%リーダーは、成功確率を上げるのではなく、失敗確率を下げるというアプロー

          AIが突き止めたトップ5%リーダーの習慣、越川慎司