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オリジナル小説│端役の徒然 1


街行く人々が皆、誰かの人生の
メインキャラクターであるように見える。

色んな形はあれど誰かを愛し、愛され
人生という物語の
ヒーローやヒロインなのだろう。


感動的な物語でなくとも、
大恋愛でなくとも、誰かの人生の脇役や
エキストラだとしても
きっと誰かに愛されている。
大切な人がいる。
それならば自分たちの物語の
メインキャラクターである。


そんな私は、未だに
メインキャラクターにはなりきれていない。


─恋人は?

─結婚は?

─今までどんな人と付き合った?

─タイプの人は?

─恋人作りなよ

─恋愛はしておくべき

─愛されるって幸せだよ

いつまでたっても
恋愛至上主義である現代に嫌気が差す。

SNSでは自慢かのように恋人との写真が
アップされたり、結婚報告が並んだり。
頻繁に恋人が変わるあの子は
その度に全部アーカイブにしていたりする。

私だって恋したい。誰かに愛されたいし、
愛される幸せを知りたい。

でも、今まで心惹かれるほどの人に
出会ったことがない。今は働くだけで
精一杯で出会いなんてないし。
理想が高い訳ではない、とは思う。
分からないけれど。

学生時代などを思い返しても
好きになれそうな人はいない。


私自身に何か問題があるのかもしれない。
けれど分からない。
見た目だって直したい部分はあるものの、
激しく悪いわけではないと思う。
人見知りはするけれど話すことはできるし、
異性の友達もいる。
性格は良いってわけではないと思うけれど、
言動には気をつけているし。

私はいつまで経っても、
誰かの人生の端役であり
自分の人生ですらもモノクロである。



都会の短大に通い、就職を期に
地元であるこの田舎へ戻ってきた。

本当はそのまま都会でひとり暮らしを
していたかったが、都会で生きるのは
とてもストレスだった。生きづらかった。
必要な家賃や生活費は高いのに、
給料は低い。
必死で就活しても働くために
生かされているだけになると思った。

何となくで決めた地元の企業。
給料は低いが、転勤も無く実家から通える。
やりたい仕事ではなかったが、
みんな同じ髪色、服装で狂ったように
活動することに耐えられなくて、
就活をいち早くやめたかったから
すぐ決めた。

そんな私はも某感染症が流行り始めた頃に
就職したので、3年ほど
働いていることになる。
仕事内容は単純なものなのですぐ慣れたが、
安い店の販売員なので客層が悪くて
それがストレスだ。
そして、出会いが無いというのも
また悩みである。

今はアプリなどで出会える
便利な時代になってはきている。
だが、それは田舎では意味をなさない。

位置情報で表示される人達の殆どが
知り合い、又は知り合いの知り合い。

狭すぎるこのコミュニティの中で
愛など育める訳がない。私は無理だ。

地元の中学や高校から付き合い、
自分と相手の友人や知り合いが
ほぼ被っている状況なんか
気持ち悪すぎて無理だ。それでも何年か
付き合って結婚している人もいるし、
合う人には合うのだろう。

飲みに出かける、というのも
1つの手ではあるだろうが、
車で出勤しているため飲酒は不可。
最寄り駅に飲み屋街なるものはあるが、
最寄り駅といえど自宅までの距離は
軽く20kmは超えている。タクシーで
帰ろうにも料金がバカ高くなるし、
そもそもタクシーが捕まえられない。
利用客が居ないから。
迎えに来てもらうなんて、
そんな考えは初から無い。

今の私は出会うことを諦めかけている。
この田舎から出ていかなければ、
無理なことは目に見えている。
だがしかし、生きていける気がしない。
そこがまた悩みである。

安い店の販売員は、
正直まともでなんてやってられない。
ストレスばっかりだ。


そんな主人公と、様々な人との物語である。



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