エンドウ

自作の小説を置いてます。 最近は暗い感じの日記も置いてます。

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マガジン

  • 日記

    後ろ暗い日記のような何か

  • 短編

    1つの記事で収まった話をまとめました。

  • 幸福な死

    不幸な男の子と女の子の話です。

  • 草木の如く

    画家のような女の最後の執着の話です。

  • girl

    外国人のロリコンと日本人の女の子の話です。

最近の記事

人生何度目かの『きらきらひかる』を読んで

 私は江國香織の『きらきらひかる』という本が大好きだ。  人生のトップ3に入る(前にも書いたかもしれないけど)本で、なにかあった時、なんでもない時、本棚を眺めていてふと背表紙のタイトルが目に入った時。今、私は『きらきらひかる』を読んで、泣いている。  本当に大好きなので、冗談抜きで10回以上読みなおしているはずなのに、それでもさっき泣いてしまった。  江國香織の本は読み手の心情を反射してこちらに寄越してかえす、と私は前々から思っている。  例えば、ひどい失恋をした後に読む江

    • 『HUNTER×HUNTER』を読んだ素人小説家の感想

       昨晩、冨樫義博先生がTwitterを始められ(本物かどうかさまざまな憶測が飛んだが、村田雄介先生が答え合わせをしてくれたのでおそらく本物だろう。ということにしておく)、『HUNTER×HUNTER』が連載再開するのでは!? と浮き足立つファンがとても多い朝である。  私は、『HUNTER×HUNTER』を去年読み終えたばかりなので、正直あまり感慨深さはない。しかし、古参のファンからしてみたら狂喜乱舞の大騒ぎであろう。あの遅筆で有名な冨樫先生が筆を執り、なんなら進捗をTwi

      • 江國香織と私

         江國香織と私の付き合いはもう本当に長い。  中学の頃に出会って、それから事ある毎に読んできた。同じ本を何回も。  出ている作品はたぶん殆ど読んでしまったし、本棚の1段だけ全て江國香織で埋まっている。  私の人生で一等を決めるとしたら、『きらきらひかる』と『すいかの匂い』だと思う(おかしいことは分かってる。一等なのに2つなのは)。この2冊は何度も何度も読み返した。数年に1度、大抵心がおかしくなっている時に。  中学の頃は恋愛のれの字も知らなかったから(勿論恋はしていたがすべて

        • 素人小説家が、ななまがり『カスタマイズ』を紹介する

           私はななまがりというお笑いコンビが大好きだ。  コントや漫才など、そのネタは多岐に渡り、独特な世界観は他の追随を許さない。私がこのお笑いコンビに出会ったのは昨年の4月頃、自粛期間の最中に吉本興業が打ち出した配信ライブで見たのが始まりだった。強烈なキャラクターと芸風に心惹かれた私は、その後YouTubeで彼らの動画を見漁った。そこで見つけたのが『カスタマイズ』という漫才。知らなかった。3分という短い時間の中で様々な感情を揺さぶってくるエンターテイメントが「お笑い」の中に存在し

        人生何度目かの『きらきらひかる』を読んで

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        • 日記
          9本
        • 短編
          3本
        • 幸福な死
          2本
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        • ミュージカル・チェアーズ
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        記事

          私の爪、あなたのこと

           過去の恋人に手紙を書いた。  その人とはずいぶん前に別れてしまったが、今でも忘れられないくらい好きで、その人から貰ったイヤリングは机の一番上の引き出しにしまってあるし、その人が好んで読んでいた作家の本はすべて本棚に収まっている。  住所が変わっていなければ、今頃届いている筈だ。  山茶花の垣根がひろがった一戸建てに住んでいて、昼間はセールスマンの仕事をしている。その家から見える芝生はあまり手入れが行き届いておらず、茫茫に伸びきった芝生やたわわに穂をつけたネコジャラシが無造作

          私の爪、あなたのこと

          識字障害だけど小説書いてます

           この前、カウンセラーに識字障害じゃない? と言われた。  識字障害とはディスレクシアの別名で、字を読み書きすることに困難があるという障害だ。日本では難読症、読字障害、読み書き困難……とさまざまな名称で呼ばれている。その症例は、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」や伸ばし棒の「ー」が読めない、文字がにじんだりゆがんだりして読めない、など人によってめいめいに違う。  私は、2文字以上のカタカナをうまく認識できない。  まず、カタカナの言葉をうまく書き写せない。提示されたカタカナを単語

          識字障害だけど小説書いてます

          ピアスの話

           私の耳にはピアスが7つほど開いている。  左耳の軟骨に3つ、右耳の軟骨に1対(という表記で合っているのだろうか…)、両耳たぶに1つずつ。  まず始めに耳たぶに開けた。高校を卒業した後の春休みだったと思う。友達と遊んだ際、駅ナカの雑貨店でピアッサーを買った。自分で開けるのは怖かったので、友達にその場で開けてもらった。トイレの前のベンチに座り、慣れない手つきで耳たぶを触る友達。パチン、というよりガチャン、という音に近い衝撃と地を這うような痛みが襲った。  逆の耳たぶのホールを

          ピアスの話

          今年の話

           あっという間に年の瀬だ。  今年はたくさんのことがあった。年頭に体を壊し、半年以上の休職の末、先月付けで仕事を辞めた。元々疑っていた病気が改めてはっきりと認定され、手帳を取得した。三度の恋愛をし、三度の失恋をした。大好きなアーティストが薬物所持で捕まった。  あんまりいいことなかったな、と毎年思って、来年はいい年になるといいな、と静かに願う、そんな年の瀬だ。今年もすっかりそんな風になってしまった。波瀾万丈、とまではいかないけど、それでもなかなかいろんなことがある人生だなあと

          リョナラーの苦悩

           私はリョナラーだ。  リョナとは、対象の痛がる姿や悲鳴などに性的興奮を覚える癖のことで、「猟奇的なシチュエーションでオナニーする」という行為に起因する。この単語は2003年頃にネット上で誕生し、リョナを好む者をリョナラーと呼んだ。しかし、一口にリョナラーといってもその種類は様々で、対象が泣いたり悲鳴を上げたりする様子だけで充分なリョナラーもいれば、四肢切断や内臓露出などのグロテスクな状態にならないと興奮できないリョナラーもいる。リョナというのは大きな幹のようなもので、そこか

          リョナラーの苦悩

          幸福な死 2

           久しぶりに、母さんにぶたれた。夜、遅く帰ってきた母さんは、疲れた顔をしながら、ソファに横になっていた。風邪を引くよ、僕が忠告すると、母さんはいきなり顔を上げて、僕をぶった。何べんも、何べんも。最後には、馬乗りになって、僕の首を絞めた。意識が薄れていく。何故か、彼女の顔が浮かんだ。  会いたい。  今日、彼が休んだ。私は、仮病を使って、早退した。でも、彼の家を、私は知らない。あてもなく、歩いた。ただ歩くことしか、できなかった。  会いたい。  気づいたら、昼過ぎだった

          幸福な死 2

          幸福な死 1

           僕の母さんは、僕をうつ。痛いと泣いても、僕をうつ。最近やっと、少しだけやめてくれたけど、昔の傷はなかなか癒えない。僕は、学校で服を脱ぐことができない。背中を、みんなの前でさらすことが、できない。  今日、転校生がきた。色の白い、女の子。僕の隣の席になった。仲よくできるといいのだけれど。僕は、口べただから。みんなとも、うまく話せないから。よ、よろしくね。勇気を出していってみた。女の子もよろしくね、といってくれた。良かった。なんとか、嫌われずにすみそう。  私を、私として認

          幸福な死 1

          平成の終わりに恋人ができた話

           平成の終わりに、恋人ができた。    Facebookに「もし良かったらやりとりしませんか?」というコメントが来ていた。所謂出会い厨だ。  普段の私だったらスルーしていた。ネットでの出会いなんて言語道断、会った事もない人間と文面だけでやりとりするなんて…しかし、その時の私は妙に強気だった。いやただ無気力だっただけかもしれない。「いいですよ」、軽い気持ちでLINEを教えた。  しばらくその人とぼんやりとしたやりとりを続けていた。趣味の話、近況、日々のetc……。  ある日そ

          平成の終わりに恋人ができた話

          ピエール瀧が捕まって元カノが号泣した話

          「本当に辛い」  ある日の午後、彼女はそう言いながら泣いた。春先とはいえまだ寒さの残る3月上旬、外からの光をカーテンで遮断した部屋で、通話口から彼女の泣き声が洩れている。ピエール瀧が捕まって一晩あけた午後、電気グルーヴのファンである彼女と私はお互いを慰める為に通話をしていた。  私と電気グルーヴとの出会いは、恋人である彼女が『富士山』を歌っていたところから始まる。当時高校生だった私たちは、カラオケという娯楽でしかストレスを発散できなかった。そんな中で歌った『富士山』は鬱屈し

          ピエール瀧が捕まって元カノが号泣した話

          草木の如く 7

           パチパチと音を立てて火柱が上がる。蛍のような火の粉が散らばって、辺りを明るく濡らしていく。私はそこに乾燥したスギの葉をくべた。よく乾いたスギの葉は木を燃やすより幾分か燃えやすい。実家の風呂を薪で沸かしていた頃、祖母がやっていたことだった。まず焚き口の奥に薪を入れ、その手前にスギの葉を詰めていく。最後にくしゃくしゃに丸めたチラシ紙に火をつけ、そこに投げ入れるのだ。火は一度小さくなって、チラシ紙を焦がしながら一気に燃え上がる。スギの葉に移ればあとは全て燃えてしまう。私はその作業

          草木の如く 7

          草木の如く 6

          「何食べたい」 「なんにも食べたくない」  私は吐き捨てるように言った。横の彼女が困ったような表情をする。そんな顔をされても食べたくないものは食べたくない。私は自分のつま先を見つめる。パンプスから覗く足の甲が恐ろしいほど白い。固形物は丸四日食べていなかった。  自分の腕を切ったあの日、朦朧とする意識の中で私はスマホに手を伸ばした。指が勝手に操作する。電話帳を開いて一番上、その名前に電話を掛ける。繋がった先で彼女が不機嫌そうに言った。もしもし? その声を聞いて私はまた意識

          草木の如く 6

          草木の如く 5

           先生とはもう三年の付き合いになる。  初めて会ったのは美術部の展覧会の時。高校で幽霊部員をしていた私はほとんど絵を描いたことがなかった。卒業する前に一枚くらい描き上げろ、そう言われて渋々描いた絵が県主催の展覧会で飾られることになった。確か女の絵だったと思う。美術部の顧問がモデルで、それを誰にも打ち明けずに私は高校を卒業した。その絵を賞賛したのが先生だった。わざわざ高校に電話してきて、うちの大学に来なさいと受話器越しに言われた。おせっかい焼きなのだ、先生は。当時の私は言われ

          草木の如く 5