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好きな本、おすすめ本を紹介していきます。
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『昔話の深層』河合隼雄

『昔話の深層』河合隼雄

河合隼雄がユング心理学の視点から古くから伝わる昔話を考察した本です。
私たちが知っているグリム童話を中心に紹介されているので、よく知る話も多く新たな角度からもう一度読み直したくなる内容です。

特に序文でユングの体験を通して、昔話を通底する“瞬間”の考察はとても興味深かったです。

ユングが東アフリカの山中に滞在中、住民が日の出の際の太陽を崇拝するのを知り「太陽は神様なのか」と尋ねます。すると住民

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『生誕の災厄』

『生誕の災厄』

『生誕の災厄』
E.M.シオラン 出口裕弘訳 紀伊國屋書店

「生誕こそが、死にまさる真の災厄」とする思想をもとに、痛烈なアフォリズムで迫る本書は、まさにシオランの痛覚で書かれている。読者も理屈で読むのではなく痛覚で読むに相応しい内容。

苦しい時や息詰まりを感じた時、本書を気の赴くままにパラパラめくると、きれい事ではないシオランの筆致に、生きる事の凄惨さが転じて、今生の愛おしさを感じるだろう。

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『良薬ナル読書ハ百ノ医薬二勝ル』

『良薬ナル読書ハ百ノ医薬二勝ル』

立冬が過ぎ、いよいよ本格的に冬の到来を感じさせる季節になってきました。
寒い冬の夜、どのようにお過ごしでしょうか。

良い睡眠を取る為に、多くの専門家は就寝前のリラックスできる習慣を薦めています。
暖かい飲み物を飲む、マッサージをする、音楽を聴く、その中でも効果が高いと言われているのが読書です。
就寝前に穏やかな気持ちになれる本を読むと、ストレスレベルが下がり、質の良い睡眠につながると言われます。

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【あんなに あんなに】著/ヨシタケ シンスケ

【あんなに あんなに】著/ヨシタケ シンスケ

『あんなに あんなに』

あんなに泣いていたのに、もうこんな。
あんなに欲しがっていたのに、もうこんな。
あんなに小さかったのに、もうこんな。

なんてこと無い当たり前の毎日は、当たり前のように過ぎ去ります。
意識しなかったら、日々は刹那の如く過ぎ去ります。

でも私たちは時間を意識すると、もうこんなに過ぎてしまった、と過去に哀愁を感じる事ができます。未来に目を向けて、これからの毎日に希望を見出す

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『丁寧な暮らしをする餓鬼』塵芥居士

『丁寧な暮らしをする餓鬼』塵芥居士

巷では〈ガッキーロス〉という事で、男子界隈がなんとなく騒がしくなっておりますが、私たち界隈で〈ガッキー〉といえば、六道輪廻の一つ、餓鬼界に住まわれる〈ガッキー〉の事です。
そんな餓鬼の〈ガッキー〉が活躍する漫画

『丁寧な暮らしをする餓鬼』塵芥居士著

これ良いです。
お友達の牛鬼(ノマドワーカー)の為に、家具を組み立てたり、弁当を作って仕事終わりの乾杯の用意をしたりと、丁寧に生きている餓鬼の話で

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『鬼は逃げる』

『鬼は逃げる』

昨日は節分でしたね。
「鬼はそと、福はうち」と豆をまき、鬼はどこか遠くに逃げていきましたか?
ふと、昨日の事を思い出しながら温かく香るコーヒーを飲んでいると「逃げた鬼はどこに行ったのかなぁ」「何をしているのだろう」と考えてしまいます。
毎年、当たり前のように豆を投げつけられる鬼も、一年間どこかで一生懸命生きているのかも、もしかしたら温かく家に迎入れて欲しいのかもしれないなぁ、と勝手に想像します。

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【7日間ブックカバーチャレンジ #7】

【7日間ブックカバーチャレンジ #7】

さて最終日の本日、皆さまにご紹介させて頂く本は、とても不思議な気持ちになる本です。
読んで全く琴線に触れない人もいます、しかしこの雰囲気好きかも?と思ったらズブズブ魅力にハマってしまう魅力的な著者です。
クラフト・エヴィング商會「星を賣る店」をオススメします。
クラフト・エヴィング商會は吉田浩美さんと吉田篤弘さんの屋号です。
私はクラフト・エヴィング商會の本も、吉田篤弘さん名義の本も概ね好きです。

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【7日間ブックカバーチャレンジ #号外】

【7日間ブックカバーチャレンジ #号外】

こ、これはリアル。
中国で発生した強毒性H5N1型鳥インフルエンザによって世界中がパンデミックに陥る、という話ですがリアル過ぎて怖い。
「首都感染」高嶋哲夫 講談社文庫
この作品は約10年前に書かれた作品です。
著者の高嶋さんは工学部出身で日本原子力研究所の研究員を経た異色の作家ですが、その科学的な知見と論理の組み立てによって、ここまで現実に近い作品になるのだと驚きです。
知識のある方が推論を進め

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【7日間ブックカバーチャレンジ #6】

【7日間ブックカバーチャレンジ #6】

いよいよ残すところ後2日。
6日目の今日は大好きな批評家、エッセイストの若松英輔さん「悲しみの秘義」を紹介します。

私は役目柄、人の悲しみに寄り添う事が多いです。
大切な人を亡くした時、人は悲しみます。
亡き人の思い出が走馬灯のように流れ、自然と涙が頬をつたいます。
人目はばからず涙する時もあります。
涙すら出ない悲しみもあります。
人の悲しみの形はそれぞれです。
そして一つとして同じ悲しみはあ

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【7日間ブックカバーチャレンジ #5】

【7日間ブックカバーチャレンジ #5】

5日目の今日は、永井一正「つくることば いきることば」をオススメします。
私は今年1月末に書坊として二子玉川本屋博に出店した際、真似事で店番をさせてもらいました。
その際、自分のお店のラインナップを何気なく確認していると、何度も目を止めてしまう素敵な本があるのです。
それが今日オススメする「つくることば いきることば」です。
これに説明は不要です。
見開き右側に永井さんの珠玉の短い言葉、左側に銅版

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【7日間ブックカバーチャレンジ #4】

【7日間ブックカバーチャレンジ #4】

4日目の今日は、遠藤周作「深い河」をご紹介します。もう名著ですので、いまさら感もあるかもしれませんが、何度読んでも没入してしまう、まるで底無し沼の様な本だと思います。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062632578/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_9sp2DbAJSCA5C

みなさんは、少し大きなき悩み、深い悩みを抱えた時、どうしますか?
誰かに相談す

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【7日間ブックカバーチャレンジ #3】

【7日間ブックカバーチャレンジ #3】

3日目は、好きな詩集をご紹介したいと思います。
140文字よりも少ない文字数で、自分の感情や世界観を伝える歌はじっくりと向き合わないと味わえない、ファストな読書と対局にあるものです。家にいる時間の長い“今”いかがでしょうか。

『えーえんとくちから』著:笹井宏之 ちくま文庫
https://www.amazon.co.jp/dp/4480435751/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_

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7日間ブックカバーチャレンジ#2

7日間ブックカバーチャレンジ#2

チャレンジ2日目は、立川談春「赤めだか」を紹介します。
この本は書坊主催のイベントで、ある参加者の方が紹介していたのでフムフムと手に取ってみたのですが、笑って泣いてまた笑って、と最高の随筆です。
立川談志の弟子である談春さんの自伝なのですが、話が面白い人は文章も魅力的です。言葉の素晴らしいリズムとストーリーの起伏であっという間に読み終えてしまう気楽さがありながら、人生を考えさせる深みもあるます。

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7日間ブックカバーチャレンジ#1

7日間ブックカバーチャレンジ#1

今日からFBで【7日間ブックカバーチャレンジ】というのを始めたので、せっかくだからnoteにも残していこうと思います。

【初日】

まず初日は、三輪舎発行の「本を贈る」という本を紹介します。
この本は丸善 丸の内本店をフラフラしている時に発見したのですが、その装丁の美しさに思わずジャケ買いした本です。わたし達の周りには当たり前の様に本が溢れています。そして当然ですがその本は出来上がるまでには多く

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