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この夏最強の一冊!戸田山和久『教養の書』筑摩書房

戸田山和久(2020)『教養の書』筑摩書房は、
私の読書の夏の期間中最強本になるでしょう。なぜ最強かって、それは読んでからのお楽しみなのだが、教養の幅広さを正面から受け止めた本書は、
「知識、知識+α=教養、人間の認知の歪み、学問の歴史、論理学、文章作成術、大学の歴史とあり方など…」をカバーしている。まさに学生のためのバイブルなのだ。
回りくどい感はあれど、それも狙いの上だと思えば素晴らしく良く書けていて、はっきりいって感動的。「高校3年生~大学1年生」の期間にこの本を読むチャンスがあることが「超羨ましい🤤」。

※300頁越えで、注釈も多く通読は少々大変だが、その価値はあるし、これを読み通せない人に「教養」はつかないと思う。戸田山さんもそう言うはず(調子のって=煽って=マウントとってごめんなさい、こんなことしかマウントとれないので許してくださいな…。ただ、読み通した者にしかわからない境地があります。約束します)。

さて、教養という言葉を、きっちり定義できる大人が果たしてどれ程いるだろう。

巷のおじさんおばさん、学校の先生、ワイドショーのコメンテーターに、近年の若者の教養の無さが嘆かれることがあるように思うが(私の被害妄想かもしれない…😮)、
そもそも「教養って何?」「なぜ必要なの?」といった問いにしっかりと答えが与えられてこそ「府に落ちる」し、より「教養ゲットするぞーー!!」とやる気になる。

『教養の書』ほど「教養を一貫して論じた」しかも「若者向けの明快な本」はないのでは?と浅学のひよっこ読書家ながら思う。

戸田山さんは、教養を本書の中で以下のように定義する。

"「社会の担い手であることを自覚し、公共圏における議論を通じて、未来へ向けて社会を改善し存続させようとする存在」であるために必要な素養・能力(市民的器量)であり、また、己に「規矩」を課すことによってそうした素養・能力を持つ人格へと自己形成するための過程も意味する。ここでの素養・能力には、以下のものが含まれる。①大きな座標系に位置づけられ、互いに関連づけられた豊かな知識。さりとて既存の知識を絶対視はしない健全な懐疑。②より大きな価値基準に照らして自己を相対化し、必要があれば自分の意見を変えることを厭わない闊達さ。公共圏と私生活圏のバランスをとる柔軟性。③答えの見つからない状態に対する耐性。見通しのきかない中でも、少しでも良い方向に社会を変化させることができると信じ、その方向に向かって①②を用いて努力し続けるしたたかな楽天性とコミットメント。(本書125頁より引用、太字強調は筆者)"

以上が「教養の定義」だ。いやー、本当に立派な定義…今のところここまで網羅的で明快かつ明確な定義はないのでは?
恐縮ながら、わりと真面目な話、
「教養論」として学術的な価値の高い定義だと思う。

私なりに解説したいところだが、随分長くなりそうなので、本書を買うなり、立ち読みするなりしてくださると幸いである。後輩の皆さん、難しい単語は早速グーグル先生🔍でござる!!一言加えておくとしたら、定義の中の「互いに関連づけられた」は、構造化されたと言い換えられる。
もう一点、本質的だなぁと思ったのが
人間のあらゆる認知の歪み」を「自覚し」「矯正する」意義を述べていることだ。かの有名なフランシス・ベーコンの「4つのイドラ」という概念を懇切丁寧に教えてくれる内容はとりわけ必見である。

この夏、「教養人」に近づきたい方は「必ず」読みましょう!

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