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#ショートストーリー
野原のちいさな物語り
広大な野原に、十字の形をした墓標が、何千、何百と立ち並んでおりました。墓標といってもそれは立派なものではなく、もともと海辺に流れついた流木であったり、壊れた船の柱であったりしました。しかし年月が経つにつれ、雨風に傷んで弱く、もろくなってゆきました。
春のことです。
ひとつの白い木でできた墓標の前に、舞い降りてきたものがありました。それは、花が咲き乱れる野原を夢見ていた綿毛です。白い半透明の
ひとりで歌うおんなのこ
朝の静けさに包まれた町の、そこかしこが穴ぼこの石の円形劇場で、女の子は歌っていました。雲が流れてきて、たずねます。
「どうして誰もいないのに歌っているんだい」
「歌いたいからよ」
女の子は笑って言いました。
「ひとりでさみしくないのかい」
「こうして、あなたみたいに声をかけてくれる人がいるもの、さみしくないわ。あなたもひとりなのね?」
女の子がそう聞くと、雲はばかにしたように笑って言いました。