マガジンのカバー画像

オリジナル小説「アスタラビスタ」

59
人を殺めようとした紅羽を止めたのは、憑依者と呼ばれる特殊体質の男だった。キャラが憑依し合うヴィジュアル小説!
運営しているクリエイター

#武道

アスタラビスタ 8話 part6

アスタラビスタ 8話 part6

 気を取り直したように、雅臣は私に説明し始めた。

「他の憑依者はここに住んでるんだよ。ここは組織の本部でもあり、憑依者の寮なんだ」

 彼らの姿を見送った雅臣が、私に教えてくれた。

「ここにいれば家賃はかからないんだが、なんせ住んでる人間たちが特殊な奴らばかりだ。だから俺と清水はここを出た。亜理や晃も」

 私は今の彼らを見て、雅臣と清水がここを出た理由が分かった。もし私がここに住めと言われて

もっとみる
アスタラビスタ 8話 part5

アスタラビスタ 8話 part5

「佐々木、清水がよろしくって言ってたぞ」
 雅臣が清水の言葉を伝えると、彼は呆れたように笑った。
「直接言えって伝えろ。誰のお陰で身体提供者になれたと思ってるんだ」
 雅臣の近くに来た男は、雅臣よりも背が高かった。スリムな体型だったので、遠目ではそこまで大きく見えなかったが、近づいてきた男は思った以上に大きく、私は首が痛くなるほど見上げた。
「俺は伝書鳩か」
 雅臣は眉間に皺を寄せて、男に不満の表

もっとみる
アスタラビスタ 8話 part4

アスタラビスタ 8話 part4

 雅臣の運転する車に乗り、彼らに連れて来られたのは、東京駅近くの大きなビルだった。
 私はこの近辺に訪れたことがある。夢と希望を持って上京したとき、私が初めて降り立った駅が東京駅だった。
 彼らの組織の本部だというビルは、人目を嫌うように外壁も窓も黒く、数社の企業が入っていてもおかしくないほど大きなものだった。
 私はビルを見上げ、雅臣に尋ねた。彼はこのビルには自分たちの組織しか入っていないと答え

もっとみる
アスタラビスタ 7話 part3

アスタラビスタ 7話 part3

「本気でやりたいんだろ? 晃」
 雅臣は真顔で晃に問いかけた。何を当然のことを言っているのかという表情で、晃は頷いた。

 すると雅臣は「なら、ナンバー戦をやろう」と答えた。
 先ほどまで彼を挑発していた晃だったが、突然の彼の提案に驚いた様子だった。

「そりゃ、俺、本気でやりたいって言いましたけど……いいんですか?」
「別にいいぞ。じゃないと、俺らも本気になれないからな。なぁ、清水」

もっとみる
アスタラビスタ 5話 part1

アスタラビスタ 5話 part1

   あれから動悸や吐き気、眩暈に襲われることはなくなった。不安になる要素もなくなり、抗不安薬を飲むのもやめた。

  本来あるべき健康な生活を、私は取り戻しつつある。しかしそれでも、心にぽっかりと穴が空いている状態は変わらず、未だ喪失感は消えない。

  雅臣と薙刀で手合せをした後、私は彼ら三人に問い詰められた。薙刀での私の動きが、ただならぬものであると感じたらしい。

  私は初めて、別れた彼

もっとみる
アスタラビスタ 3話 part7

アスタラビスタ 3話 part7

 稽古着に着替えて戻ってくると、圭が道場の中を裸足で意味もなく走り回って遊んでいた。その様子は、到底同い年とは思えないものだった。

「お! 紅羽が戻って来た!」

 圭が走り回っているスピードのまま、私のところへ駆け寄って来た。

「それが薙刀の道着かぁ! 袖、剣道の道着に比べて短いんだな!」

 指摘され、私は自分の腕に目をやる。半袖の道着にはゴムが入っており、二の腕で自由に調節できる。

もっとみる
アスタラビスタ 2話 part3

アスタラビスタ 2話 part3

 沈黙する私に代わって、「へ?」と声を上げたのは圭と清水だった。圭はカップ麺をすすることを止めて私へと目を向け、清水は余裕のある表情から一転して戸惑ったように雅臣へと目を向けた。

「ちょっと待ってよ。雅臣は紅羽ちゃんが、これを使えるって言いたいの?」

 言葉をやっと繋げて尋ねてきた清水に、雅臣は何も答えなかった。それどころか清水に目を向けることもなく、ただ私を見ていた。私は彼に、自分が答えるこ

もっとみる