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Dan Seiga
2023年8月19日 00:29
ミモザの木の下でUnder a Mimosa Tree露のしずくたちが風に揺れる草に残り、陽光に照らされる蜻蛉がすばやく舞うと、唸る風に吹かれる〈イトスギ〉の木が黒ずんだ大枝を上げる――雲一つない青を湛える空へと。ハチドリが黄金の杯から蜜を吸い、生け垣に隠れて鳥が歌ると、花に囲まれて舞う蝶が教えてくれる――我が魂にも羽があると。今回、紹介いたしましたのは、グレース・ヒバード
2023年7月29日 00:23
海辺のサンフアンSan Juan by the Sea夕日を浴びる貴方を見た、海辺の麗しいサンフアンを、帯状に連なる黄金の光輪のような西の空だった。海の紺碧色が空の橙色に交われば、やがて極淡の黄金色に変わり天上では星が一つ耀いた。このたび、紹介しましたのは、グレース・ヒバード(1835-1911)というアメリカの女性詩人が1893年の詩集Wild Poppiesに収めた作品
2023年7月15日 00:04
夜の海Night at Sea蝋燭の火のごとく、幾多もの星が燃え海の深くをも広く照らす夏の景風のごとく、幾多もの風が戦げば眠ろう、平穏につつまれて父なる神が星を照らし嵐の乱した海淵を静めればその御声は風を意のままになさったゆえに眠ろう、平穏につつまれてこのほど、紹介したのは、グレース・ヒバード(1835-1911)というアメリカの女性詩人が1893年の詩集Wild Pop
2023年6月25日 15:45
つぐないCompensation空一面に黒の雲がかぶさり見えるのは星一つだけ嘆きがもれた、絶望のあまり「眩い星よ、私を照らせ」たゆたう紫の雲に星は隠されるだが、あの雲たちがかつていた地にうるわしい月が皓々とかがやく今回、上掲しましたのは、アメリカの女性詩人であるグレース・ヒバード(1835-1911)が1893年の詩集Wild Poppiesに所収した作品です。原文は、こ
2023年6月17日 10:20
りんごの花Apple Blossoms快い春のある日のことあの女はあの男にりんごの花を渡した意味を知らぬまま「私の心はあなたのもの」と花がささやいたけれども、あの女の恋心はなぜかいかめしく冷淡な男を避けるようにさすらった桃色がかった白い可憐な花が老齢のりんごの木からふらりと離れるように男は、女の温和な青い目を見た刹那昔から語られる素敵な話を思い出した女の頬をさっ
2023年4月29日 09:56
花菱草(カリフォルニアの州花)Wild Poppies: The State Flower of Californiaぬくぬくと穏やかな風にゆれる黄金の花菱草よ、見事なり。この世の最上の美をほこる地を象徴するに、そなたは相応しい。黄金の花菱草よ、誰に植えてもらったか。世界が生まれてすぐにこの地にいたのか。朝が色彩を入れてくれたのか。そなたが映し出すのは日没の色なのか。人の
2023年3月18日 00:00
希望Hope果てなく続くものか、わびしく希望が無いばかりの朝が。終われば、見えてこよう薔薇、黄金、紫水晶の色をたたえる輝きが、ルビーワインの色調が。果てなく続くものか、霧と漂流の雨に包まれた夜が。雲がたゆたえば、顔をまた出すだろうあまたの星が。このほど、紹介したのは、グレース・ヒバード(1835-1911)というアメリカの女性詩人が1902年の詩集California V
2023年2月18日 00:00
ポンペイにてAt Pompeii雲なき蒼穹のもとで、 束縛されぬ西風に吹かれて、生を、この生を神に感謝し、 我は立つ、死せるポンペイに。鳥の啼かぬ静寂は、 蜜蜂を呼び起こすことは露もないが、生を、この生を神に感謝し、 我は立つ、死せるポンペイに。このたび、上掲したのは、グレース・ヒバード(1835-1911)というアメリカの女性詩人が1902年の詩集California
2023年2月4日 00:00
夢で会ってくれた人He Came to Me in a Dream Last Night昨夜の夢で会ってくれた 愛しい人が、今や天にいる人が。私の額に、手に口づけをして やさしい言葉をたくさんかけてくれた。どれほどの年月が経ったかと かけがえのない存在は他にいないと最愛の声を聞けて、最愛の顔を見られた うれしさを口にした。目が覚める、野鳥のさえずりに するどく差しこむ光
2023年1月28日 00:14
我がためにあらずNot for Me(K・イカディの日本語の文に倣って)庭園の塀のかなたでうららかな一輪のばら堂々と伸びゆく。「誓って貴方のためにあらず」と風がささやく庭園の塀のはるか上で。庭園の塀に白いばらが寄りかかる優雅に伸び伸びと。誓って我がためにあらずと、この身が愛の悲願を夢見る途中、花びらが落ちゆく、雪のように。今回、紹介したのは、アメリカの女性詩人
2022年12月24日 11:16
愛を歌おうA Love Songもしも私たちがあの砂浜にいる海鳥で、 どこかへ翔び立とうと私が翼を広げれば、ああ、愛する者よ、ひと時の住まいとなった岸から ついてきてくれようか、白い行雲の上まで。もしも私が砂浜にいる海鳥で、 翼で蒼穹へと舞い上がれるのなら、この翼をほかならぬ喜びで広げ、 貴方について行こう、白い行雲の上まで。このほど、紹介したのは、グレース・ヒバード(1
2022年11月26日 11:22
日本の蝶の唄Japanese butterfly song死を経て私は白い翅の蝶に生まれ変わる、 我が花嫁ティスィは星のよう。きゃしゃな翅では昇れそうにない 桜の上にひろがる空までも このままなら、美しいティスィのもとにも。もしも私が星なら、風吹く空を敏速の翅で舞い上がり こちらに来てくれようか。もしも私が小さな白い雲なら、我が花嫁を隠せるだろうに 見上げる者たちの目
2022年11月23日 11:49
異教の少女、太陽に祈るA Pagan Girl's Prayer to the Sun(紀元前500年のこと)太陽よ、我が民が幾年も崇めてきた御神よ。今や海に沈みそうになるも空にとどまる赤き火の球、そのままであらんことを、我が祈りをお聞きになるために。闇の地を光で照らし、花、虹に色彩をもたらし、あふれんばかりの光で蓮の杯を充たされるお方よ、我が悲しみを聞きたまえ。輝け