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山根大翔(埼玉・昌平)


今年の埼玉には

実は王者・花咲徳栄と互角に渡り合いながらも、甲子園切符を掴み損ねた強豪校がある。

埼玉高校野球の勢力図を塗り替えるほど目覚ましい成長を遂げている、昌平だ。

ここ数年に見られる昌平の大躍進については、以下の記事で要点をまとめつつ取り上げているので、ぜひ一読してくれ。

今年の昌平は創部以来、最強の呼び声高いチームを形成。

選手層の分厚い投手陣と徳栄に匹敵する強力打線をもって、昨秋から今夏までの埼玉を盛り上げてくれた。

特に夏の大会は

2番~6番打者までの5人が大爆発。この5人だけで7試合52安打39打点も稼ぎ出している。実に1人あたま10安打8打点弱の換算だ。

そりゃ反対ブロック同士の徳栄と昌平による一騎打ちの結末になるのはもちろん、歴史的な壮絶乱打戦を繰り広げたのも頷ける。

上記動画の場面は4点ビハインドで迎えた昌平の8回裏、反撃の一発を見舞った男こそが、五人衆における不動の3番打者・山根大翔だ。

この灼熱3ランで、昌平は1点差まで詰め寄った。なおも続く櫻井ユウヤの3ベースと渡辺暁斗の犠牲フライで、昌平が遂に試合を振り出しに戻す。

最終回は両校ともに無得点で迎えた延長10回タイブレーク。徳栄は一挙5点のビッグイニングで試合をひっくり返したが、昌平も負けてはいない。

この回トップの2番・大槻真広が、山根に続く3ランの一発攻勢で2点差まで追い上げる。

ここから櫻井の3ベースと渡辺のフォアボールで再び一打同点のチャンスを作ったが、反撃もここまで。

昨秋から

埼玉大会ファイナルに進出すること3度。全ての大会において決勝戦まで進みながら、奇しくも行く手を悉く阻んだのは花咲徳栄だった。


それにしても

これほどまでに屈強な埼玉準V校は他に例がない。

諸手を挙げて喜べることではないが、結果として埼玉高校野球史上初の3大会準グランドスラムを達成した点は立派すぎる。

ドラフト2024注目の二刀流

山根にいたっても、チームは悲願の初聖地を逃したものの、彼らしいラスト大一番での熱盛アーチという有終の美を飾っている。

そして最後の夏は、同校2人目となるプロ野球選手の誕生に拍車をかける打撃成績を残した。

打っては高校通算25発、投げてはMAX146km左腕、走っても一塁到達4秒フラットに迫る、走攻守・三拍子揃った超高校級プレーヤー、それが山根大翔だ。

右の石塚、左の山根

埼玉では、花咲徳栄が甲子園に出場したことで、ドラフト上位候補の石塚裕惺はさらなる知名度を得た。

その石塚に高校通算ホームラン数1本差まで迫ったのが山根で、打点と得点圏打率では山根の方が上回っている


山根大翔:プロフィール

「やまね だいと」2006年生まれ
東京都出身 183cm88kg 左投げ左打ち
大田区立大森第四中学校(東京城南ボーイズ)
東京城南ボーイズでは控え選手
高校通算25発 MAX146km 背番号8
ポジション:センター ファースト
一塁到達4.09秒(夏の埼玉大会2024準々決勝)

・東京城南ボーイズ著名OB
吉野創士(昌平→楽天2021年ドラ1)

・東京城南ボーイズ同期
渡辺暁斗 法橋瑛良(桐光学園)
※佐藤龍月(1年下)

最下部のソース(情報源)一覧に記載

投手としては

昔ながらのスタメンの守備位置から、2番手以降にマウンドに上がるオーソドックスなタイプ。

バリバリの先発完投型ではないが、自慢の球威を武器にワンポイントの場面などで三振を奪える本格派だ。

投手デビューは

2年時の埼玉大会夏の県予選だ。

リリーフとして2試合に登板しベスト4に貢献しながら、春からレギュラーの座を掴んだ打撃でも自己キャリアハイとなる5割超の打率をマークしている。

とりわけ投球回数は、1登板あたり長くても3イニング弱。登板数も少ないが、高い奪三振率を誇る。

以下が山根大翔の高校通算投手成績だ。

先発1 完投0 2年時の四死球7(3登板)

3年時は6登板に対し3四死球と制球力を上げている。

やはりゲーム中盤以降に短いイニングを任されるタイプの投手にとって、自滅を招く与四死球は命取り。

そんな課題を克服しつつ、奪三振の精度を落とさないところが、投手としての山根大翔の伸び代だ。

ちなみに山根は、高2~高3にかけての1年間で身長2cm・体重6kg増と身体が一回りサイズアップしている。これを踏まえても、やはり伸び代しかない。

そんな訳で、ここからはドラフト2024において指名を受ける可能性が高い山根大翔の真骨頂、類稀な打撃センスを各大会毎のデータとともに振り返っていこう。


山根大翔:全データ


打撃センス2つの特徴

ややコンパクトなクラウチング気味の構えから、大阪桐蔭さながらの強振フォロースルーで長打を量産するのが、打者・山根大翔の真骨頂だ。

1年秋に公式戦デビューを果たして以来、昌平の主力選手としてチームの勝利に貢献。同期のなかで、公式戦の出場回数は断トツを誇る。

その活躍を支えた屋台骨は2つある。1つは対左・対右、満遍なく均等に高打率を残せていることだ。

公式戦通算で4割に迫る打率を記録しているが、対左も対右も4割を優に超えている

一般的にはプロ野球を代表するように、左打者は左投手に弱い。なかには稀だが、対左に強い左打者もいる。

今年の高校野球における秀逸な左打者を引き合いに出すなら、青森山田の原田純希だ。

原田はアベレージタイプではないため、通算打率は3割前後と高校野球にしては低い部類に入る。

それでも、どういう訳か対左で4割強と破格な数値を残している。その分、対右は極端に打率を落とすオチもあるが、詳細は以下の記事を一読してくれ。

そして山根真骨頂のもう1つが、チャンスに頗る強い点だ。公式戦の通算得点圏打率は、前出の昌平五人衆の中でも突出している。

これらを踏まえながら、改めて山根大翔の全データを見ていこう。

春の関東大会2024では、神奈川王者武相を相手に1試合2発5打点(3ラン・2ラン)の大噴火でコールド勝ちを収めている。


秋季埼玉大会2022成績(優勝)

県予選の先にある関東大会の開催地が埼玉なので、上位3校が出場権を得られるなか、昌平は見事2年ぶり2回目の優勝を飾りスーパーシードを獲得。

山根は県予選の準々決勝、正智深谷戦で公式戦代打デビューを果たすも、結果は凡打に終わる。

それでも当時の黒坂洋介監督(前任者)から「パワーと飛距離はチームナンバーワン」「と評価されていた。


秋季関東大会2022成績(ベスト8)

昌平のみ1回戦を免除されるスーパーシードで臨んだ関東大会。山根は県予選同様に代打で出場し、慶應の小宅雅己から公式戦初安打を記録している。

試合は惜しくも敗れたが、慶應は翌夏の甲子園で全国制覇を果たすことになるチーム。その優勝投手に輝いたのが、小宅雅己だ。

山根は記念すべき1本を、同学年の大物右腕から放ったことになる。


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