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短編集 ~温~

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単発小説とかそういうのの置き場です。あたたかみのあるお話(作者による主観)が置いてあります。
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#怖い話

【創作怪談】トイレの花子っくりさん

【創作怪談】トイレの花子っくりさん

 バカな思いつきを実行に移す人というのは、いつの世にもいる。 
 Nさんはそんなバカな女子のひとりであった。昭和の時代、小学5年の頃の体験だそうだ。

 放課後、当時流行っていたオカルト本を友達3人で回し読みしていた時、Nさんはすごいことを思いついた。
「ねぇねぇ……『こっくりさん』を、『花子さん』を呼び出しながらやったら、どうなるかな?」 

 こっくりさんとはご存じの通り、大きな紙に平仮名の五

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【田舎恐怖小説】さあばさま

【田舎恐怖小説】さあばさま

「それと、いちばん奥の間ァは、開けちゃなンねぇぞ」
 障子戸を開けようとした直前、ヨシエさんは云った。
「さあばさまが、おらっしゃるでな」

 その言葉に、興味を引かれた。
 戸にかけていた手を離して、囲炉裏ばたに座るヨシエさんの方に向きなおる。
「ヨシエさん、『さあばさま』って、何です?」
 尋ねると、小さな老婆は首を横にゆっくりと振った。
「わがらねェ。オラにゃ、詳しいごだぁわがらねェぢゃ」

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【短編】ビジュアル系バンドが、心霊スポットで、熱々のおでんを食べて、呪われる話【三題噺】

【短編】ビジュアル系バンドが、心霊スポットで、熱々のおでんを食べて、呪われる話【三題噺】

 ビジュアル系アマチュアロックバンド・艶夜華~adeyaka~は、いま危機に直面していた。
 結成して2年目、もはや崖っぷちとも言ってよかった。

 86回。

 これが彼らの新曲の、1週間の再生回数である。

「なぁ、こんなにいい曲なのに、なんで伸びないんだろうな?」
 ボーカルのkyoが、動画の再生回数を見て誰に向かってとでもなく呟いた。 
 八畳の和室、kyoの自宅アパートである。整頓されて

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「頭をむしり取る男(Man tearing off the head)」についてのレポート[抄訳]

「頭をむしり取る男(Man tearing off the head)」についてのレポート[抄訳]

【はじめに】
 本記事はアメリカのユタ州立総合大学 Utah State Organized university に勤める知人から、私に送られてきたレポートの抄訳(=ダイジェスト版の翻訳)である。
 レポートそのものにも序文がついていたが学術的で長いため、それに代わって私(訳者)による簡単な解説を、ここにまとめておきたいと思う。

 その知人は、ごく最近の欧米の怪奇・心霊体験/都市伝説を研究して

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【恐怖譚】ひっくり返る家

【恐怖譚】ひっくり返る家

「俺も当時はヤンチャしてたんで、廃屋なんて、って馬鹿にしきってたんスけど」
 この体験をしてからすっかりマジメになったというAさんは、そう語った。
「本当に、すごい体験をしました……」

 山奥にポツリと建つ一軒屋。平屋建ての、和風建築の屋敷。
 そこに入ると、「とんでもない目に遭う」という噂が地元で広まっていたという。

 ところが。
 その「とんでもない目」というのが、どういう目なのか皆目わか

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【怪奇短編小説】 レット・イット・ビー

【怪奇短編小説】 レット・イット・ビー

 母が死んでから、父はひどく無口になった。
 大学の仕事も辞めてしまい、お手伝いさんたちにも暇を出した。毎日書斎に閉じこもって分厚い本をひっくり返している。かと思えば庭に出て土を調べたり、買ってきた薬品や肥料のようなものを混ぜてみたりしている。
 わたしが朝に女学校に行く時も、授業とその後のお稽古が終わって帰ってきた時も、父はひとりきりの広い屋敷でそのような謎めいた行動を続けていた。

 怖いと思

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