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人生の最期に何が残るのかを考える「滅ぼす」

<文学(26歩目)>
フランスの現代政治を舞台に、「滅びる」ことから「何が残るか」を考えてみる。

滅ぼす 上
ミシェル・ウエルベック (著), 野崎 歓 (翻訳), 齋藤 可津子 (翻訳), 木内 尭 (翻訳)
河出書房新社

滅ぼす 下
ミシェル・ウエルベック (著), 野崎 歓 (翻訳), 齋藤 可津子 (翻訳), 木内 尭 (翻訳)
河出書房新社

「26歩目」は題名の「滅ぼす」という言葉が、作品の中で何を意味するのかを考える作品。

ミシェル・ウエルベックさんは、現代フランスの作家では最も成功されている作家。「服従 河出書房新社」にガツーンと来て、一気に全作品を読んでみました。

「服従」は2022年のフランス大統領選挙を舞台にした作品。「滅ぼす」は2027年のフランス大統領選挙を舞台にした作品であり、また「国民連合(Rassemblement National)」(旧:国民戦線(Front National)」への警鐘を掲げる作品です。

※第二次世界大戦後のフランス政治の中では、常に「右翼」がくすぶっています。その中でも支持者を拡大しているのが、「国民連合(Rassemblement National)」(旧:国民戦線(Front National)」です。

前作は、国民戦線(Front National)の勝利を防ぐために、「消極的な選択」としてイスラム系の政党に一本化した作品。今作では、僥倖により「国民連合(Rassemblement National)」は敗れるも、火種は残っています。

おそらく、2032年のフランス大統領選挙を舞台にした作品も現在執筆されていると思います。(待ち遠しい!)

今作では、前作よりもより具体的な選挙にかかわることが描かれていますが、その中で「滅ぼす(Anéantir)」という動詞が、どこにかかる言葉なのか?これに最後まで付き合う必要あり。

この疑問を探る読者にとっては、ちょっとプロットとして提示される大統領選挙を舞台にする必要はないではないか?との批判も受けているようですが、美しい「愛(amour)」の描写は、ウエルベックさんの他の素晴らしい作品でもある「ある島の可能性」「プラットフォーム」と同じ路線だと思いました。

またこの作品では、「老い」と「介護」が特に重要なテーマになっていて、ここしばらくフランスでも日本同様に「老い」と「介護」は一丁目一番地として切り取られる話題になるのかなと感じた。

それにしても、ちょっと難解なこと(政治)をテーマにして、作品を書かれている。日本人読者としては「とても難しいテーマに取り組まれていて、これが売れるのか??」と思うところあり。しかし、ウエルベックさんはベストセラー作家であること。フランスの読者のレベルに驚いています。

是非、手に取りやすい文庫化されたらおススメです。
次作(2032年のフランス大統領選挙)では、「国民連合(Rassemblement National)」が政権を獲得してからになりそうな気がします。

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