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#戦争

散開

血と鉄の雨が
降り止んだなら
戦場で踊らないか
バシールみたいに
ここにいる理由なんて
誰も考えない
ただ敵に向けて
機関銃を撃ち捲るだけ
気違いみたいに
声を上げながら
照明弾に晒された
仲間の體が吹き飛んだなら
迫撃砲を撃ち返す
さよならを告げるより早く

ノーベアハンター

戦場から帰還した兵士は
二度と熊狩りには戻れない
獣は地雷も手榴弾も
機関銃すら撃たないのだから
人が考えた最新で
最高の悪意をぶつけ合う
それが戦争の背骨だと
徴兵されるまで
彼は知らなかった
そして知ってしまった
地獄の中で生き残った者は
地獄の淵を彷徨う事しか
叶わないのだと

アンフィスバエナ

双頭の瞳から
悲しみの涙を零す
アンフィスバエナ
溢れ出す涙が
川へ変わろうとも
人々の争いは止まらずに
異国の空が赤く燃える
異常な博士が愛した水爆が
世界を焼き尽くしても
憎しみだけは永遠に
残り続けるだろう
地球から人が居なくなっても

ティンクルベル

僕が異国で
戦争をしている頃
君は祈りながら
ティンクルベルを鳴らす
地獄の筈なのに
僕には戦場が向いていた
君の事など忘れ
銃を撃ち敵を倒す
君は健気に
ティンクルベルを鳴らす
僕の帰りを
待ちわびながら

ラストダンス

爆撃された街で
ラストダンスを
踊るバシール
世界は混沌に満ちて
民は見えない何かに
怯えて生きてる
どうでも良いねと
権力者は笑う
高級な革張りの椅子に
腰掛けながら
残骸となった街で
ラストダンスを
踊るバシール
願いは叶わなくても
祈る事しか出来なくても

アンソニー

静かな午後に
ピアノを弾くアンソニー
穏やかな日々が
続くと信じていた
何も言えない儘
異国で戦うアンソニー
照明弾で照らされた
街の片隅に
銃を撃ち捲る
怒号と悲鳴を
全て掻き消しても
皆何かに取り付かれ
廃墟と化した街を
幽霊の様に突き進む
考える事を止め
殺戮の機械へ
その姿を変貌させて

地獄で悪魔と口笛を

人の心を持たない者が
泣き叫ぶ民衆を撃ちまくる
星が落ちそうな夜に
延々と続く市街戦
せめてこの世の果てに
終わりがあると言うのなら
地獄で悪魔と口笛を
吹いて歩き回るのだろう
人の形をしている者は

ヴァルターの銃弾を

やさぐれた夜に
ヴァルターの銃弾を
受け倒れる悪人達
射撃が上手いだけで
戦争へ駆り出された狩人
戦場でもがきながら
国へ帰還した時に
待ち受けていた物は
無垢な民衆の圧力だった
耐え切れず自殺する友を
横目に写しながら
彼は祝福されるだろう
願わなくとも定めならば

カモミーユ

咲き乱れたカモミーユが
戦車に踏み潰され
跡形も無く砕け散っても
残る物があるなら
僕に教えてくれないか
山の様な人の波が
一瞬で消え去っても
消えない何かがあるなら
僕だけに見せてくれないか
そんな事が存在するなら
どうか囁いておくれよ

砂時計が落ちるまで

秘密の店で購入した
砂時計が落ちるまで
貴方と何を話そう
赤紙で戦場へと
駆り出される僕に
慰めの言葉は要らない
全てが定めならば
逃れる事など叶わないから
時が過ぎたから貴方に
さよならを言おう
如何か振り向かないで
僕は人を止めるのだから

砂嵐

異国の街は
砂嵐が酷くて
貴方を見失いそうになる
だから握った手を
如何か離さないで
異国の空が
赤く燃えて
爆音と熱風が走る
息を潜め
手を取り合って
僕達の国へ帰ろう
二人の幸せは
探せやしないけど

ブラッド・レイン

寂しがり屋の街に
血の雨が降る
それはすぐ固まって
取れない染みへ変わった
望まなくとも
降り注ぐだけ
延々と終わらない
WW3みたいに

国葬

第3次世界大戦に負け
1000垓で売られた
この国の最後の日に
皆何を話すのだろう
在りし日の思い出や
他愛の無い出来事を
振り返りながら
涙を零すのだろうか
明日からは全ての物を
異国に抱き抱えられ
私達はこの国を葬る
記憶の彼方へ
そして他の国が捨て去った
寂れた土地へ移される
二度と戻れない祖国は
快楽とドラッグに染まるだろう
確実な死を携えた
四人の騎士を出迎えて

十字を切る者

異国の地で
敵兵を撃ち斃す
何も知らない儘
山の様に重なる遺体
気が触れた仲間が
手榴弾を體に纏って
敵陣へと向かい
途中で撃たれ自爆した
ありふれた
何時もの日常に
僕はただ十字を切る
祈る神すら探せない
この美しい地獄で
僕はただ十字を切り
銃を乱射する
生き残る為だけに