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まなかい ローカル72候マラソン

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まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
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#ガーデンデザイン

秋分;第46候・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

秋分;第46候・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

秋分。太陽は真西に沈む。彼岸は西の果てにあるから、彼岸の住人となった死者たちに想いを致す。お墓参りで花を供え、手を合わせ、いろんなことを話したり思い出したりしながら、植え込みのお手入れをしたり、清めてさっぱりとしてもらう。

はじめて今年、母と一緒におはぎを作った。餡子と黄な粉と胡麻。分量がおかしくて二人しかいないのに40個以上できた。手の中で炊いた餅米を丸める。丸めると心もまろくなる。ゆっくりと

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芒種 第27候・梅子黄(うめのみきばむ)

芒種 第27候・梅子黄(うめのみきばむ)

「ながめる」とは 永い雨、長雨(ながめ)から来ているという。

間断なく降り続く雨を眺めていると そこはかないぼんやりしたときが過ぎていく。焦点はどこか遠くなっていく。

夜半過ぎても雨が降り続いていたりすると もぞもぞ起き出して 手近な異界である書物を読みたくなる 五月雨に濡れそぼる五月闇。雨は日常を異界にしてくれるから、雨音を聴きながら書物という森を踏み迷うにはうってつけだ。

「梅子黄 うめ

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小満;第24候・麦秋至(むぎのときいたる)

小満;第24候・麦秋至(むぎのときいたる)

麦は自給率も低いし、稲に比べると馴染みが薄い。金色の麦畑を見たことも数えるほどしかない。でも見かけた時はやっぱり美しくて記憶に残っている。

パンは好きだし、ケーキも好き。コーヒーとケーキはやっぱり合う。パスタもクラフトビールも好きだ。ユーラシアの行事を繙いていると稲と麦という東西の主食の違いが目に見えるものの差を生んでいるのがわかるから興味深い。

中国から伝わった七夕(しちせき)の行事ではかつ

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立夏;第21候・竹笋生(たけのこしょうず)

立夏;第21候・竹笋生(たけのこしょうず)

筍の旬は10日ほどだという。ここから「旬」という概念も生まれているそうだ。

1日で1メートル伸びるなんて、

国語の「たけ」は猛々しいとか、高い、逞しいなどとも通じている。

竹の子のあのギュッと詰まった円すい形

竹の皮に包まれ 土を突き抜け

圧縮され凝縮されたエネルギーをいただく

一日1メートル伸びる その節の間の余白

水の通り道 

空への意志

かぐや姫さえも孕んで

目覚めたばか

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穀雨 第18候・牡丹華(ぼたんはなさく)

穀雨 第18候・牡丹華(ぼたんはなさく)

牡丹や文目が咲くともう夏だ。

「あなた、牡丹は赤じゃなきゃ だめよ」と長年バルコニーのお庭をお手入れさせていただいているお客様に言われたことがあった。別の場所にあった牡丹を随分前に移植して自宅のバルコニーに欲しいと言われたことがあって、以来その2株だけだったので、珍しいと思って黄色い牡丹をお持ちした時だった。

言われてみれば「牡丹」という名前には「丹」が入っていて赤なのだ。クラシックなものは襖

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穀雨 第17候・霜止出苗(しもやんでなえいづる)

穀雨 第17候・霜止出苗(しもやんでなえいづる)

4月25日。個人邸の造園引渡しがあった。

門柱と表札、インターフォンを取り付けて、足元の灌木地被類などを納めた。

霜やんで苗出づる。

緑は穀雨の雨を受けて広がり大いに繁茂するタイミング。

お施主さんご夫婦と庭師二人とで眺める。お家ができて引越しを挟んでずっと現場の進捗をご家族皆さんが見てくれていた。コロナによる自粛のタイミングだったから。友人である施主が一番よく見ていてくれたと思う。都度対

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清明 第15候・虹始見(にじはじめてあらわる)木を立て 気を立てる

清明 第15候・虹始見(にじはじめてあらわる)木を立て 気を立てる





春の土用を前に 個人邸のお庭は大体 引き渡しまでこれた

木を立てるのは 気を立てること 

彼らがおさまるところにおさまると 気立てのいい庭になる 

沓脱ぎ石も据えた 飛び石も打った 園路も整えた 

石は静かに 放散しがちな気を 鎮めてくれる

新しい時が動き始めるのを確認して お客さんへお渡しする

デザインの仕事はいちど手を離れる



夜間作業となるホテルの仕事はまだ途中だ

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春分 第11候・桜始開(さくらはじめてひらく)

春分 第11候・桜始開(さくらはじめてひらく)

楽しみに準備してきた弟の結婚式が感染リスクを避けるため延期になった。

都内の桜が満開を迎えるちょっと前の「すわ!」という時期だっただけに余計にもの悲しい。両家の親も楽しみにしていてくれた。本人たちも。僕もひとまわり年が違う弟の やや遅い晴れ姿を楽しみにしていた。

花見の自粛は震災を思い出す。

あの時も桜はいつもの桜ではなかった。

桜はいつものように咲いているけれど、愛でる人の目がそれをいつ

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啓蟄 第9候・菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

啓蟄 第9候・菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

小さな青虫が紋白蝶になる

軽井沢へ行った日、見慣れた浅間山は雪雲の中 この日はここから更に雲って行き 山が吹雪いているのが見えるほど 終日山沿いの街には風花が舞い続けた

季語に「雪の果(ゆきのはて)」がある

雪雲はもう里まで降りてこれないようだ 冬が終わろうとしている

雪が、白い蝶となって沫雪のように舞うのかもしれない

翌日見せてもらった庭

春空に斑(はだら)雪

まだ冬と春の間でうと

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啓蟄 第7候・蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

啓蟄 第7候・蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

郡山はまだ梅も咲いていなかった。ゆっくり、そして一気に春はやってくるのだろう。

啓蟄と聞くと、いつも宮崎駿の『風の谷のナウシカ』を思い出す。2011/3/11以降強く。毒はばら撒かれてしまったけど、愚を負うて歩くしかない。

「毒」という文字は頭に過剰に飾りをつけた女性を象っているという。頭の飾りはもしかしたら頭でっかちとなってしまった人の姿なのかもしれない。つまり身体の感覚に鈍感で、パンパンの

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雨水 第4候・土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

雨水 第4候・土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

 春は足元からやってくるという。雨水は日が長くなって気温も上がり、氷も溶け、雪も雨に変わり、それを感じた地中の虫や見えない微生物たちが動き始める頃。気象も行きつ戻りつしながらジグザグと春になっていく。日本橋に誕生した新しい保育園の外構が引き渡し。コロナに負けず、ピカピカの園児たちの水仙の芽のようなうるうるとした園での学びがはじまると嬉しい。

 お庭とバルコニーには方位に合わせ春夏秋冬を象徴する木

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