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春分 第11候・桜始開(さくらはじめてひらく)

楽しみに準備してきた弟の結婚式が感染リスクを避けるため延期になった。

都内の桜が満開を迎えるちょっと前の「すわ!」という時期だっただけに余計にもの悲しい。両家の親も楽しみにしていてくれた。本人たちも。僕もひとまわり年が違う弟の やや遅い晴れ姿を楽しみにしていた。


花見の自粛は震災を思い出す。

あの時も桜はいつもの桜ではなかった。

桜はいつものように咲いているけれど、愛でる人の目がそれをいつものように見て感受することができなかった。

浮き沈みがあって、桜は美しさ儚さを増していく。

荒ぶって荒んで 花の凄みを体取する。


コロナの影響か、時間がゆっくり過ぎていくような気がする。

庭の現場、花活けの現場と移動しながら、桜色は高速道路からの遠目に泡のように見えたり、街中では運転中の目の端を過っていく。目黒川を越える時、青山墓地を横切る時、その両側に続く桜並木を束の間でも見ようとすると忙しない。千鳥ヶ淵を首都高から一瞬見るのも好きだ。この間通った時は夜だった。四谷あたりのお堀の土手も綺麗だろう。幼い頃通った小学校の校庭は老いた桜に囲まれていたけど、今もまだ元気なら会いに行きたい。

  さまざまのこと思い出す桜かな(芭蕉)


桜色の飛沫 吹き上がる間欠泉

超超スローモーションのはなび


咲く前からそわそわし

咲いてからは春のお天気にやきもき

はらはらと散り始めたならおろおろと

桜吹雪で拐われる


あとさきの所在なきこと桜前線


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