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書評

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#未来

垣谷美雨(2020)『リセット〈新装版〉』双葉文庫



人生に疲れた中年女性が、記憶をそのままに高校時代からやり直すストーリー。過去を追体験しながら、当時は気が付けなかった様々な事柄を発見し租借しなおしていく物語。

現実ではタイムスリップは難しいかもしれないけども、自分の記憶を頼りに少し昔のことについて振り返ってみることは出来るだろう。その当時はあんな気持ちでいたけれど、今から考えると、といったようなことは私たちの人生にも数多くある。変えられるの

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野村證券投資情報部(2020)『未来イノベーションに投資しよう』日本経済新聞出版



30年後の未来、親子の年齢の差が例えば30歳だとして、親世代の人たちがいまの自分の年齢だったころの世界を想像してみる。当然全く違う世の中で、だからこそ技術の進歩は侮れないと痛感する。

ITとバイオとナノ、三つのテクノロジーの融合で有り得べき未来を予測する一冊。俄かには理解しがたい難解な技術ではあるが、少し想像は出来る。量子コンピューターで最適な選択肢を導き、食糧や電気には困らない。病気は克服

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若林恵編(2019)『次世代ガバメント:小さくて大きい政府の作り方』黒鳥社



行政府のデジタルトランスフォーメーションを説く一冊。配給制からオーダーメイド制への変革を求める。ほかに印象深いのは、計画の実現にはゴールとなる理想像をはっきりと示すことで国民の理解を得る必要があるとするところ。

本書を読んでも未だぼんやりしているのは、グローバル化の結果によって多様性がもたらされ市民の行政需要も多様化しているという前提について、分かるんだけどまだ誰も証明していない気がしてしま

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首藤信彦・鳩山友紀夫(2019)『次の日本へ』詩想社新書



国民が共に、手を携えて、お互いを認め合って、望むべき正しい姿=共通善を実現しようと共和主義を唱える本。参考になる部分もあるが、この手の類の本を読む際に気を付けなければならないのは、理想や目標という明るい部分に共感できるからといって、彼らが当座の敵と見なすものや改革の矛先という主張の暗い部分を無批判に受け入れてはならないということ。

政治は中道に寄ると言われる通り、我々人間の望む理想の世界なん

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中川雅之(2015)『ニッポンの貧困:必要なのは「慈善」より「投資」』日経BP社



こうした主題の本の重要な役割は、ただ貧困という現実を社会のオトナたちに突き付けることにあると思う。注目すべきは著者・企画者である日経記者の刊行時の年齢、33歳であること。今この国で貧困を語るのは若者ばかりではないかとすら思われてくる。

社会はあまりにも広すぎて、遠く離れた物事はほとんど目に見えない。他人がただひたすらに遠い、遠くて温度の感じられない存在でしかない。富のある人は何をすればいいか

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落合陽一(2019)『日本進化論』SB新書



数年前から流行っている聞きなれない肩書の学者が、何を語っているのかを知らなければと思い手にした一冊。非常に網羅的に簡潔にこの社会の課題がまとめられていた。とりあえず、社会の全員がこの現状認識を持つところからスタートすればいいと思う。

デジタルネイチャー?、等の固有の考え方についてはまた別の著作を読んだ方がいいのかもしれないが、社会課題の公約数を最大にここまで近づけて記述しているのであれば、氏

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