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雑誌「1番近いイタリア」

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雑誌「1番近いイタリア」に関する記事。 マンマのイタリア家庭料理研究家Aoi Aurora、こと中小路葵が編集長を務める季刊誌です。 コンセプトは「日本の家庭で楽しむイタリア料…
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#編集後記

編集後記「1番近いイタリアvo.17 2024春」

編集後記「1番近いイタリアvo.17 2024春」

雲に隠れまいと橙色の光を放つ太陽は、オリーブが所々見える平原の向こうの海に吸い込まれるように、あっという間に沈んでいく。5日前と同じ道を走る。今日は夕日を左側に見ながら。そして、今日は歳を1つ重ねた私が。島から本土に戻り、ボローニャに帰る道は、5日前と確かに同じ道で、でも不思議なことに、たった5日前が遠い過去に思えるくらいには景色が違って見えた。

30歳のお誕生日には、行き先シークレットの旅行が

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編集後記(「1番近いイタリア」Vol. 16 2024冬号)

編集後記(「1番近いイタリア」Vol. 16 2024冬号)

フェイスブックに「2年前の思い出」として、ボローニャに着いた日の写真が上がってきた。駅のホーム、赤い高速列車、食べたパニーニ。あれからちょうど2年。大学院を卒業して、ボローニャに残ることを決めて、ボローニャに家を買ったり、ボローニャ大学の博士課程に進学したり。広く17州の家庭を訪ねたり、深く農家料理を研究したり。失恋したり、新しい恋が愛に変わったり。自分にとっては激動の2年で、赤ちゃんが生きていく

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編集後記「時を重ねて」

編集後記「時を重ねて」

静かな日曜日の朝、小さなバルコニーで春の陽光を受けながら筆を取る。昨日までの雨が嘘のように晴れ、花びらのしずくがキラキラと輝く。小鳥のさえずりが聞こえ、大きく息を吸えば春の空気が胸を満たす。

イタリアに来て、3ヶ月が過ぎた。「過ぎ去った」という感覚がないのは、物事の非効率さと、それを補う人々の優しさに包まれて、時の流れがゆったりとしているからだろうか。もしこの世に時計がなければ、同じ時間が過ぎた

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編集後記「バッターボックスに立ち続けて」

編集後記「バッターボックスに立ち続けて」

※この記事は雑誌「1番近いイタリア2021秋号」の編集後記からの抜粋です

編集後記「バッターボックスに立ち続けて」シートベルト着用サインが点灯し、まもなく着陸態勢に入るとアナウンスが流れた。近づいてくる成田の夜景を見ながら、着陸の瞬間が好きだと思った。旅の終わりを予告され残念な気持ちがおこるともに、何とも言い難い安堵感に包まれる。シートに頭を付けて目を閉じると、イタリアでの日々がありありと浮かぶ

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