マガジンのカバー画像

思考整理の文章置き場

28
日記ではない長文のエッセイや、もぐら会「書くことコース」の原稿などをまとめています。
運営しているクリエイター

#ヨーロッパ

気づかずに通り過ぎることだけは避けたい愛を書き連ねる

気づかずに通り過ぎることだけは避けたい愛を書き連ねる

・夏の早朝の透き通った空気

夏の朝はやく、5時でも6時でもいい。
まだ暑くなる前の透き通った空気、騒音のない静かな雰囲気、誰にも汚されていない時間帯。まだ鳥も人間も目が覚めていないような、世界中がまだ眠っているような、そんなぽっかり穴があいたような空間にただひとり、起きる。この世界をはじめるのはわたしだ、と高らかに宣言しても誰も聞いていないような、そんな見放された時間がとにかく好きだ。

・ヨー

もっとみる
巡礼路、大地を踏みしめて歩いたことの確かな記憶。

巡礼路、大地を踏みしめて歩いたことの確かな記憶。

今日、NHK BSプレミアムで「聖なる巡礼路を行く 〜カミーノ・デ・サンティアゴ 1500km〜」という番組が放送されていた。

全三回放送のこのシリーズは、1ヶ月ほど前すでにBS8Kの高画質でヨーロッパの大地、青空、草花、石垣、教会、巡礼路を美しい色合いそのままに視聴者に届けていたらしい。反響があったことからBSプレミアムで放送、初回が本日だった。フランス国内のLe Puy-en-Velay(ル

もっとみる
悲しみで世界が覆い尽くされないように

悲しみで世界が覆い尽くされないように

朝、目が覚めるといつも、ここはいったいどこだろうと考える。長期滞在していたフランスでもスペインでもなく、イタリアへの旅行中でもない。視界の前にある天井を見てクローゼットを見ると、実家のある大阪でもなく、東京都心のちいさなわたしの部屋だ。その次に考える。いまはどの時間軸にいるだろう。曜日、時間、月、年。すこしずつ範囲を広げて記憶を取り戻していく。抱えていたタスクはなんだっただろう、やり残していた仕事

もっとみる
しなやかな強さを求めて生きたひと。須賀敦子の面影を探して

しなやかな強さを求めて生きたひと。須賀敦子の面影を探して

イタリアのミラノにあるサン・カルロ書店(旧・コルシア・ディ・セルヴィ書店)に訪れたときのことはいまでもはっきりと、覚えている。

作家・エッセイスト須賀敦子の著書に登場するコルシア・ディ・セルヴィ書店。『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』など作品のなかで何度も舞台となったこの場所は、イタリアのミラノの中心部、ドゥオーモから歩いて10分程度のサン・カルロ教会の建物の右隣にひっそりとたたずん

もっとみる