マガジンのカバー画像

読んだ本についてあれこれ語るマガジン

82
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

車輪の下で

車輪の下で

おとなは、子どもに過度の期待をすることでつぶしてしまうこともある。
教育とはかならずしも人間を幸せにはしない、という感じの小説。
名作と呼ばれるだけあって、説得力がある。
教育に疑問を感じている人は納得するかもしれない。

「ハイパーソニック・エフェクト」

「ハイパーソニック・エフェクト」

なかなかおもしろかった。

人間の耳には聴こえない超高周波が人体に与える影響について、という研究。

熱帯雨林などでさまざまな音がする中に、そういった超高周波が含まれているという。それを浴びることによって、人間は本来の感覚を取り戻すことができる。それをハイパーソニックエフェクトという。

可聴音ではないので、証明することが難しく、さまざまな実験をおこなって実績をあげていく。知る人ぞ知る成果、といっ

もっとみる
パパ・ユーア クレイジー

パパ・ユーア クレイジー

なかなかよかった。
サローヤンが自分の十歳の息子の視線を借りて、父親との生活を描く。
十歳の子どもがこんな会話をするだろうか、という印象だが、アメリカではそうなのかもしれない。むしろ大切なのは、物事にたいして自分なりの視点や考えを持つということで、そうすることによって自分なりに世界を見つけていくことができる。その過程とは、ディスカッションを大切にするアメリカという国の教育そのものなのかもしれない。

もっとみる
シラノ・ド・ベルジュラック

シラノ・ド・ベルジュラック

軽やかなセリフ回しと、掛け合いを楽しむ戯曲なのだと思う。
本で読むよりも舞台で、それもフランス語で鑑賞すべきものなのだろう。

主人公のモデルになったのはサヴィニヤン・ド・シラノ・ド・ベルジュラック。1655年没とのこと。つまり江戸時代の初期か。初演は1897年。つまり明治時代。
本作の主人公であるシラノは剣豪でありながら詩人。本作では詩を作れるという点が、ある種のステイタスであるように扱われてい

もっとみる
ペスト

ペスト

予想だにしない不条理に見舞われた時、小生のような普通の人間はどうしたらいいのか。それが本作においてカミュが立てた問いだと思う。
不条理であろうとなかろうと、小生たちには日常があり、歩むべき人生がある。どんな状況下にあろうと、困難と闘い、日々を生きるだけだ。それがカミュが出した答えだと思う。
思えば「夜と霧」も「グスコーブドリの伝記」もそうだった。人はいつも不条理の中で生きてきたのだった。そういう意

もっとみる