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シラノ・ド・ベルジュラック

軽やかなセリフ回しと、掛け合いを楽しむ戯曲なのだと思う。
本で読むよりも舞台で、それもフランス語で鑑賞すべきものなのだろう。

主人公のモデルになったのはサヴィニヤン・ド・シラノ・ド・ベルジュラック。1655年没とのこと。つまり江戸時代の初期か。初演は1897年。つまり明治時代。
本作の主人公であるシラノは剣豪でありながら詩人。本作では詩を作れるという点が、ある種のステイタスであるように扱われている。この価値観は1650年代のものなのか、1890年代のものなのか、というのがわからない。ただ、マッチョとインテリをあわせもつことへの評価、もしくはインテリへの移行といった感覚が、日本では明治時代に初演されたこの戯曲で描かれているのは興味深い。当時の日本も、武から文へと価値観が変化していった時代だろう。

本作は、出だしはドタバタコメディだが、やがて純愛物語としての姿を見せていく。この流れは巧くて、商業的な成功をおさめたというのも納得できる。シラノの、愛する人への気持ちをひた隠しにする姿は、ある種のヒーロー像を作り上げている。

今まで読んだことがなかったが、あまり読まない類の本を読むと、新しい感覚を学ぶことができていい。

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