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📚15【無人島のふたり】が、ひとりになってから2年(追記11/16AM)

無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記
山本文緒(1962〜2021年)

新潮社 168頁
2022/10/20発行
※ヘッダーは表紙部分


山本文緒氏が惜しまれながら膵臓がんのため亡くなったのは、2021年10月13日
「恋愛中毒(吉川英治文学新人賞)」や「プラナリア(直木賞)」の頃はよく読んでいた


離婚されたことも、それほど間をおかずに再婚されたことも知っていた
「恋愛に奔放な方なのかな?」と勝手に思っていたのだけれど、著作を読まない間にも、彼女のお人柄がどれほど素晴らしいかというエピソードはよく目にしていた


「自転しながら公転する」が島清恋愛文学賞と中央公論文芸賞を受賞されたときに、闘病中だと知り慌てて読んでみた


2021年4月、私は突然膵臓がんと診断され、そのとき既にステージは4bだった。治療法はなく、抗がん剤で進行を遅らせることしか手立てはなかった。
 昔と違って副作用は軽くなっていると聞いて臨んだ抗がん剤治療は地獄だった。がんで死ぬより先に抗がん剤で死んでしまうと思ったほどだ。医師やカウンセラー、そして夫と話し合い、私は緩和ケアへ進むことを決めた。
 そんな2021年、5月からの日記です。

本書より

本書は、5月24日から10月4日までの闘病日記が4章立てになっている
日記を出版すると決まった後で、書かれた記述が「初めに」に当たるのだろう
訃報から2年
改めて読み直してみる


今日はここまでとさせてください。明日また書けましたら、明日。

10月4日(月)

最後の日記は亡くなる9日前
「明日。」と書いたのに、書ける日が訪れなかったことが悔しい


突然20フィートの大波に襲われ、ふたりで無人島に流されてしまったような、世の中の流れから離れてしまったような我々も、これから少しずつ無人島に親しい人を招待してお別れの挨拶を(心の中で)しようと思っている。

6月9日(水)

ふたりで暮らしていた無人島だが、あと数週間で夫は本島へ帰り、私は無人島に残る時がもうすぐ来るらしい。

9月3日(金)

膵臓がんの宣告に、夫婦ふたりで闘病する時間や場所を、生きては戻れない世界のことを「無人島」という言葉で表している
ふたりなら励まし合える無人島に、ひとりで取り残されるのは何とも心細い
そして、ひとりで本島に帰って行く夫氏は更に寂しいに違いない


 帰りの新幹線のホームで、それまであまり言われたことにピンときていなかったのが、「4ヶ月ってたった120日じゃん」と唐突に実感が湧いて涙が止まらなくなった。(中略)
 しかし泣きながらも、『120日後に死ぬフミオ』って本を出したらパクリとか言われるかなとも考えた。(中略)
もうすぐ死ぬとわかっていても、読みかけの本の続きが気になって読んだ。(後略)

6月1日(火)

サブタイトルにある「120日」は、セカンドオピニオンで宣告された余命の「4ヶ月」のこと
ゲラ読みができる日も、外食ができるほど元気で「実は死なないのではないか?」という日もあるかと思えば、突然の急変で救急搬送される日もある
毎日がどんなに辛く不安だったことだろう


苦しい闘病生活の中で、これほど他者に気遣いができるものなのだろうか
取り乱しても致し方のないような状況でも、残される夫を労い、お見舞いに来てくれた人を思い、編集者に礼を尽くし、医療•看護に関わる人に感謝できるものだろうか
信望が厚いのも当然の人だった


振り返ってみると、この日記を書くことで頭の中が暇にならずに済んでよかったと思っている。何も書かなかったら、ただ「病と私」のふたりきりだったと思う。長年小説を書いてきてもういい加減「書かなくちゃ」という強迫観念から解き放たれたいと感じるかと思ったら、やはり終わりを目前にしても「書きたい」という気持ちが残っていて、それに助けられるとは思ってもいなかった。

9月11日(土)

最初から最後まで作家だった
病床にあっても、書かざるを得なかった
書きたくて書いていた
未だ未だ書きたい気持ちを持ち続けていた
書きたいことがあった
そこには、ただ時間だけが足りなかった


「入院だけは嫌」という強い意思と献身的な夫氏の存在により、最期を自宅で迎えた
訪問診療•訪問看護との連携、福祉用具の活用、介護認定を受けケアマネジャーを中心としたチームケア
末期がんの緩和ケアを自宅で受けることが可能だ、というサンプルとして読むこともできると思う



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