茶の湯辞典

茶の湯や茶道で使われる言葉を綴っていきます

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記事一覧

花薬欄(かやくらん)

「花薬欄」とは『碧巌録』の一節。 「挙す、僧雲門に問う 如何なるか是れ、清浄法身 門云く、花薬欄」 (訳) 雲門に問う 清浄な悟りの本体とはどんなものであるか。 雲門い…

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佐保姫と竜田姫

「佐保姫」とは、春をつかさどる女神の呼び名です。「佐保」とは、奈良県の「佐保山」のこと。「佐保山」は、平城京の東側にあります。方角の「東」は、陰陽道の四季で表す…

茶の湯辞典
2週間前
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雲錦

桜と紅葉、両方描いてある模様を「雲錦模様」といいます。陶器や着物などの柄に使われますが両方が描いてあるので、春と秋どちらの季節にも使うことができます。「雲錦」と…

茶の湯辞典
4週間前
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利久饅頭と五事一行

2月28日は利休忌。旧暦3月28日までに各流派で利休忌が行われます。 我が流派では、利休様に供茶を差し上げてから、同じ茶で拝服します。その後、五事一行という七事式を行…

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茶の湯辞典
1か月前
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柳緑花紅

「柳緑花紅」 「柳は緑、花は紅」 11世紀の中国の詩人・蘇軾(そしょく)の詩からの引用です。 柳は緑色に葉を伸ばし、花は紅色に咲く。 自然そのままであり、それぞれの…

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1か月前
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お水取り

東大寺二月堂修二会(しゅにえ)のことを、「お水取り」と言います。これは、11人の僧侶が一般の人に代わって苦行を引き受け、安泰を祈る行事です。旧暦2月1日から14日まで行…

茶の湯辞典
2か月前
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夜舟、北窓という和菓子

春彼岸とは、3月の春分の日をはさんで前後3日合計7日間のことです。 秋彼岸とは、9月の秋分の日をはさんで前後3日合計7日間のことです。 彼岸というのは仏教用語でありま…

茶の湯辞典
2か月前
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ムスビ眉なし口開き

お雛様の七段飾りの二段目。お雛様に仕えているのが三人官女です。女の子の身代わりをしてくれるお人形なので、魔除けの意味のある赤い着物を着ていることが多いです。 七…

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2か月前
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左近の桜、右近の橘

お雛様の七段飾り。 七段飾りにも色々な意味合いが隠れていて、解明すると楽しい。 四段目の弓矢を持つ二人。お内裏様とお雛様の護衛をしている随身は、左大臣と右大臣です…

茶の湯辞典
2か月前
1

菱餅と雛あられ

三月三日の上巳の節句。 雛人形にお供えするのは、菱餅と雛あられ。 菱餅は三色。 春の季節を表しています。 上のピンク色は、桃の花。 真ん中の白色は、雪。 下の緑色は、…

茶の湯辞典
2か月前
1

はなむけ

「はなむけ」の語源が面白い。 「はなむけ」は「はなむけの言葉」でよく使われ、転勤する方とか披露宴のお祝いの言葉として使われたり、「はなむけ」として品物を贈ったり…

茶の湯辞典
2か月前
1

春雨

春雨の季節 二十四節気では「雨水」 雪どけ水が温む頃です。' 'サーと降る雨が終わると暖かくなり花が芽吹き、蕗の薹が出てきます。 床の間には 「芽柳や土堤に行きかう地…

茶の湯辞典
2か月前
1

振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)

「ぶりぶり」という香合があります。これは、昔「振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)」という男の子の遊びがあり、「毬杖(ぎっちょう)」という、八角形の木槌に車輪と紐のつい…

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茶の湯辞典
2か月前
2

初午

「初午」とは、二月の初めの午の日の稲荷神社の祭日のことです。稲荷神社のご神体は宇迦御魂命(うがのみたまのみこと)、五穀を司る神です。神様の使者は狐です。この頃、田…

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茶の湯辞典
2か月前
2

竹の子目

茶室とは何とも落ち着く空間であります。 正座をすると、重心が低くなり心と身体が安定します。 茶室に入り床の間を拝見したが、それは掛け軸と花を見るためです。 心が落…

茶の湯辞典
2か月前

吐月峯

静岡県の北部にある「吐月峯柴屋寺(とげっぽうさいおくじ)」は、「駿府匠宿」の奥にあり、ひっそりと佇んでいます。 「吐月峯柴屋寺」は、その昔、今川氏親の丸子城内の一…

茶の湯辞典
3か月前
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花薬欄(かやくらん)

花薬欄(かやくらん)

「花薬欄」とは『碧巌録』の一節。
「挙す、僧雲門に問う
如何なるか是れ、清浄法身
門云く、花薬欄」
(訳)
雲門に問う
清浄な悟りの本体とはどんなものであるか。
雲門いわく
それは、花薬欄である。
(意味)
悟りの本来はどんなことでありましょうか。
花に例えたら「花薬欄」という言葉あろう。
花はどんな花もよい。
たとえ牡丹や芍薬でなくても、小さな名もない雑草であったとしても、色々な花が咲き乱れてい

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佐保姫と竜田姫

佐保姫と竜田姫

「佐保姫」とは、春をつかさどる女神の呼び名です。「佐保」とは、奈良県の「佐保山」のこと。「佐保山」は、平城京の東側にあります。方角の「東」は、陰陽道の四季で表すと「春」に当たります。そのため、「佐保姫」は春の女神といわれてきました。様々な和歌でも佐保姫は詠まれています。「佐保姫の糸染めかくる青柳をふきなみりそ春のやまかぜ」(兼盛集)

そして、「佐保姫」と対になっているのが「竜田姫」です。「竜田姫

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雲錦

雲錦

桜と紅葉、両方描いてある模様を「雲錦模様」といいます。陶器や着物などの柄に使われますが両方が描いてあるので、春と秋どちらの季節にも使うことができます。「雲錦」という言葉は、奈良県吉野から始まっています。
「古今和歌集」の中の一文、『秋の夕べ竜田川に流るるもみぢをば、帝の御目に錦と見たまひ、春のあした吉野の山のさくらは人麿が心には雲かとのみなむおぼえける』この一文から桜のことを「雲」紅葉のことを「錦

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利久饅頭と五事一行

2月28日は利休忌。旧暦3月28日までに各流派で利休忌が行われます。
我が流派では、利休様に供茶を差し上げてから、同じ茶で拝服します。その後、五事一行という七事式を行い、埋み豆腐を頂いて終了となります。

我が家の利休像の掛軸と三具足は、裏千家の先生から頂いたもので、有り難く使わせていただいています。

三具足とは、燭台と香炉と花入の仏具です。花入には、菜の花を生けます。菜の花は、利休様が亡くなっ

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柳緑花紅

柳緑花紅

「柳緑花紅」
「柳は緑、花は紅」
11世紀の中国の詩人・蘇軾(そしょく)の詩からの引用です。

柳は緑色に葉を伸ばし、花は紅色に咲く。
自然そのままであり、それぞれのものが春になると毎年、芽吹き花開くという意味です。自然界の中に自分が生かされているのを感じる四字熟語です。
春になると、茶道では掛軸でかけられる言葉ですが、沖縄の琉球舞踊でも使われるそうです。
沖縄の三線の唄に「柳節(やなじぶし)」と

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お水取り

お水取り

東大寺二月堂修二会(しゅにえ)のことを、「お水取り」と言います。これは、11人の僧侶が一般の人に代わって苦行を引き受け、安泰を祈る行事です。旧暦2月1日から14日まで行われていた行事を現在では3月1日から14日まで行っています。
11人の僧侶「練行衆」は、1カ月以上かけて様々な準備をします。年明けから声明や所作を覚え、2月からはお祓いをして身を清め、東大寺二月堂内をしめ縄を張り巡らして結界を張りま

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夜舟、北窓という和菓子

夜舟、北窓という和菓子

春彼岸とは、3月の春分の日をはさんで前後3日合計7日間のことです。

秋彼岸とは、9月の秋分の日をはさんで前後3日合計7日間のことです。

彼岸というのは仏教用語であります。
現世を「此岸(しがん)」と呼び、それに対して、死後の世界を「彼岸(ひがん)」と呼びます。「此岸」とは「現世の岸」という意味で、「彼岸」は「死後の岸」の意味です。そして、両側の岸の間には川が流れています。この川のことを「三途の

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ムスビ眉なし口開き

ムスビ眉なし口開き

お雛様の七段飾りの二段目。お雛様に仕えているのが三人官女です。女の子の身代わりをしてくれるお人形なので、魔除けの意味のある赤い着物を着ていることが多いです。

七段飾りのお雛様はすべて違うお顔をしていると言われます。
こちらの三人官女とも違う顔をしていて「ムスビ」「眉なし」「口開き」と言われます。

真ん中の官女は「眉なし」で眉毛が剃ってあったり、お歯黒をしていたりします。眉を剃っていたり、お歯黒

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左近の桜、右近の橘

左近の桜、右近の橘

お雛様の七段飾り。
七段飾りにも色々な意味合いが隠れていて、解明すると楽しい。
四段目の弓矢を持つ二人。お内裏様とお雛様の護衛をしている随身は、左大臣と右大臣です。
左大臣はお年寄り。
右大臣は若者。
左上位の時代ですから、左大臣の方が上の位です。
服装の色でも位がわかります。
緋袍は五位。黒袍は四位以上を表しています。
したがって、位の高い左大臣が黒い服。
緋色の服が右大臣となります。

そう思

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菱餅と雛あられ

菱餅と雛あられ

三月三日の上巳の節句。
雛人形にお供えするのは、菱餅と雛あられ。
菱餅は三色。
春の季節を表しています。
上のピンク色は、桃の花。
真ん中の白色は、雪。
下の緑色は、草を表しています。
春になると、桃の花が咲き、雪の下からは雪間の草が生えてきている様子を表しています。
緑色は「健康」
白色は「清浄」
ピンク色は「魔よけ」の意味も持ち合わせています。

そして、菱餅の形は菱形。なんで菱形なのだろうと

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はなむけ

はなむけ

「はなむけ」の語源が面白い。
「はなむけ」は「はなむけの言葉」でよく使われ、転勤する方とか披露宴のお祝いの言葉として使われたり、「はなむけ」として品物を贈ったりします。
「はなむけ」の「はな」は「花」ではなくて「鼻」
花を向ける(贈る)ことが「はなむけ」なのかと思っていましたが、鼻を向けることが「はなむけ」なのです。そして、何の鼻を向けるのかというと「馬」の鼻です。
昔、旅に出る人の道中の無事を祈

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春雨

春雨

春雨の季節
二十四節気では「雨水」
雪どけ水が温む頃です。'
'サーと降る雨が終わると暖かくなり花が芽吹き、蕗の薹が出てきます。
床の間には
「芽柳や土堤に行きかう地の目傘」

お弟子さんに「春雨」の様子ですね、と伝えたら「春雨」?「春雨」は食べ物の「春雨」と関係ありますか、と聞かれて調べてみました。

春雨が中国から伝わったのは、鎌倉時代。禅僧の精進料理の「粉餅(フェンピン)」として伝わりました

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振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)

振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)

「ぶりぶり」という香合があります。これは、昔「振振毬杖(ぶりぶりぎっちょう)」という男の子の遊びがあり、「毬杖(ぎっちょう)」という、八角形の木槌に車輪と紐のついたものを振って遊んだ遊び道具の形だけ残って香合になったものです。

「ぶりぶりぎっちょう」と掛け声をして紐を引っ張って、輪のような玉を打って遊びました。玉転がし、あるいはホッケーやゴルフのような遊びだったのでしょうか。おもちゃとしては廃れ

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初午

初午

「初午」とは、二月の初めの午の日の稲荷神社の祭日のことです。稲荷神社のご神体は宇迦御魂命(うがのみたまのみこと)、五穀を司る神です。神様の使者は狐です。この頃、田の神が山から降りてくると考えられていたので、田の神を祀る日とされています。

「初午」の「午」には理由があります。
午の刻は、現在の「正午」
そして方角は「南」
太陽が一番高くにある時間です。
まだ寒さの残る春ではありますが、太陽の恵みを

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竹の子目

竹の子目

茶室とは何とも落ち着く空間であります。
正座をすると、重心が低くなり心と身体が安定します。
茶室に入り床の間を拝見したが、それは掛け軸と花を見るためです。
心が落ち着いた後に、ゆっくりと茶室全体を眺めて見る。
床の間から天井まで様々な数寄屋大工のこだわりに出会えて感嘆します。

床の間には、床柱というものがあります。床柱は、様々な木が使われていてご亭主の思い入れが詰まった場所です。そして、この床柱

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吐月峯

吐月峯

静岡県の北部にある「吐月峯柴屋寺(とげっぽうさいおくじ)」は、「駿府匠宿」の奥にあり、ひっそりと佇んでいます。

「吐月峯柴屋寺」は、その昔、今川氏親の丸子城内の一部であって、連歌師柴屋宗長によって和歌を詠むために建てられた寺です。氏親が駿府城に帰った後も、徳川家康に支配されても、修復して残されていた場所です。
「春夏秋冬」すべての季節を和歌が楽しめるように、春は庭に桜が植えてあり、夏は枯山水の滝

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