見出し画像

お水取り

東大寺二月堂修二会(しゅにえ)のことを、「お水取り」と言います。これは、11人の僧侶が一般の人に代わって苦行を引き受け、安泰を祈る行事です。旧暦2月1日から14日まで行われていた行事を現在では3月1日から14日まで行っています。
11人の僧侶「練行衆」は、1カ月以上かけて様々な準備をします。年明けから声明や所作を覚え、2月からはお祓いをして身を清め、東大寺二月堂内をしめ縄を張り巡らして結界を張ります。その中で、修二会に必要な「糊こぼし」「紙衣(かみこ)」「灯芯」「お供え餅」「差懸(さしかけ)」を作ります。
「糊こぼし」とは東大寺を開山した良弁僧正を祀る開山堂の庭に咲く椿を赤と白の紙で作った椿の造花です。
「紙衣」は、厚い和紙をもみこみ、紙で作られた着物のことで、保温性に大変すぐれています。
「差懸」は、練行衆が履く木沓のことです。木沓に畳表を張って、雨草履のような帽子がついています。練行衆が履いて歩くと木沓の音が高らかにします。

糊こぼしの椿

この期間、様々な更なる精進をしていきます。食事も一日一回。一汁一菜で皆のために祈り捧げつつ無言で食事をして、食事を終えた後、懐紙に包んだご飯を向かいの若狭井の屋根に投げる。これは、生飯(さば)といって、鳥たちに分け与えるために投げ入れます。昼ごはんをとると、一日の行が終わるまで水一滴すら飲めません。
そして、3月12日「お水取り」本番。12日の真夜中つまり13日の早朝3時頃に二月堂下の「閼伽井屋(若狭井戸)」から香水を汲み上げます。「閼伽井」とは、仏にお供えする香水が湧く井戸のことです。
言い伝えでは、この日にしか香水は湧いてこないことになっています。この東大寺のお水取りの行事は、1200年余り続いている行事です。

二月堂

この後、早朝から集まった信者や群衆にお祓いの意である二月堂欄干で焚かれた11本の松明の火の粉を浴びせかける達陀(だったん)の行が行われます。夜空に松明が勢いよく燃えて、最も華やかな場面です。そのため、「お水取り」は水の行事でありながら、火の行事でもあるのです。

二月堂のお水取りが終わると、奈良には春がやってくると言われています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?