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雲錦

桜と紅葉、両方描いてある模様を「雲錦模様」といいます。陶器や着物などの柄に使われますが両方が描いてあるので、春と秋どちらの季節にも使うことができます。「雲錦」という言葉は、奈良県吉野から始まっています。
「古今和歌集」の中の一文、『秋の夕べ竜田川に流るるもみぢをば、帝の御目にと見たまひ、春のあした吉野の山のさくらは人麿が心にはかとのみなむおぼえける』この一文から桜のことを「雲」紅葉のことを「錦」というようになったようです。日本人ならではの、比喩表現です。
その他に、京都の言葉遊びに「吉野の桜はかとぞ見え、竜田の紅葉はの如し」がある。
茶道では、この言葉の意を汲んで、仁阿弥道八(高橋道八)が雲錦模様の鉢を作ったのが始まりのようです。

桜と紅葉を使った文様はたくさんあります。吉野の桜と紅葉を川と組み合わせて「竜田川」や「桜川」の文様も意匠化されています。
桜の花びらが散り、川面にたくさん浮かび、花びらが固まって流れていく様子のことを「花筏」と言います。
「花筏」は植物の名前でもあります。

花筏

桜一つとっても様々な文様があって、咲き始めの桜から散った花びらの桜まで流れゆく季節のうつろいを茶室でいつまでも楽しむことができます。


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