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『心中天網島』の虚実皮膜

篠田正浩監督による『心中天網島』(1969)は、妻子がありながら、ちまたで評判の女郎と契りを交わした若い男が、身内の制止を振り切り、女郎と偽りのない愛を確かめ合った…

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2週間前
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『ひとりでいく』の多重露光

『ひとりでいく』は、鎌倉に住む関根愛が、仕事やワーケーションで訪れた遠方の街の人、食、景色との出合い、再会の中で見つけた気づき、家族と自身の過去の記憶に思いを巡…

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1か月前
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『秋刀魚の味』の通奏低音

小津安二郎監督の遺作となった『秋刀魚の味』(1962)は、初老の男が旧友や恩師との交流を経て、自分の年頃の娘を嫁に出そうと決心する話。 この映画の中で特に秀逸な瞬間は…

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1か月前
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『心中天網島』の虚実皮膜

篠田正浩監督による『心中天網島』(1969)は、妻子がありながら、ちまたで評判の女郎と契りを交わした若い男が、身内の制止を振り切り、女郎と偽りのない愛を確かめ合った果てに、壮絶な心中を遂げる、実験的な「浄瑠璃映画」。

映画は人形浄瑠璃のメイキング映像で始まる。人形の胴体から外された頭が置かれていたり、人形遣いがリハーサルをしていたりする間、監督自身が電話で脚本家と打ち合わせる会話の音声が数分にわ

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『ひとりでいく』の多重露光

『ひとりでいく』の多重露光

『ひとりでいく』は、鎌倉に住む関根愛が、仕事やワーケーションで訪れた遠方の街の人、食、景色との出合い、再会の中で見つけた気づき、家族と自身の過去の記憶に思いを巡らせ、著者の死生観にまで迫る詩的なエッセイだ。
https://megumisekine.base.shop/items/86386722

ジャンル横断的な読み物だが、まず人々の温度が、手作りの食を通して伝わってくるのが心地よい。尾道の年

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『秋刀魚の味』の通奏低音

『秋刀魚の味』の通奏低音

小津安二郎監督の遺作となった『秋刀魚の味』(1962)は、初老の男が旧友や恩師との交流を経て、自分の年頃の娘を嫁に出そうと決心する話。

この映画の中で特に秀逸な瞬間は、初老の平山(笠智衆)が、亡妻の面影をみとめる若いマダム(岸田今日子)のバーで呑む2つのシーンにある。1つ目は、戦時中に艦長だった平山と、当時の部下で一等兵だった男との会話。

坂本「敗けたからこそね、今の若い奴等、向うの真似しやが

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