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「図書館」「新刊書店」「古書市」の連鎖

読書の秋。古本まつりのシーズンでもあります。

今年も神保町古書店街で、10月27日から11月3日まで開催されるようです。天候が崩れぬことを祈るばかり。

リアル書店の醍醐味のひとつは衝動買い。じっくり棚を眺めるなかで思いがけない一冊と出会い、同時に「ああ、こういうことを学びたかったのか」と自分の知らない自分を発見できる。特に古書市ではその傾向が強くなります。「そうか、俺はこの本を買いたくて今日ここへ足を運んだのか」と腑に落ちてしまう。

衝動買いがいつしか目的買いにすり替わる。「この世に偶然はない。必然だけ」と主張する人がいます。一方で「世の中はすべて偶然で成り立っている」みたいに唱える連中も少なくない。真理はその両者に跨り、ふんわりと網を掛けている印象を受けます。私の解釈だと「偶然から始まった必然と出会いの恵みに感謝」でしょうか。

昨年のこのイベントで↓を発掘しました。

村上朝日堂シリーズのエッセイ、さらに春樹さんと読者のメールのやり取りを楽しめる一冊です。CD-ROMで安西水丸さんとの対談も聞けます。

同書と出会うのは二度目。数年前に地元の図書館で借り、毒にも薬にもならぬ会話にニヤニヤし「どこかで買えないかなあ」と願っていたのです。

この再会には伏線がありました。同じく昨年の秋に開催された都内某所の古書市で見つけた↓です。

やはりおふたりの対談がCD-ROMに収録されています。「夢の~」に続編があるとは知らず、大喜びで買いました。

少し前に行った古書市では↓を購入。

2000年におこなわれたシドニー五輪の観戦記。併せてオーストラリアの歴史も学べます。

読みながら思い出したのは、2年前に新刊書店で買った沢木耕太郎「オリンピア1996冠<廃墟の光>」です。本来の趣旨から離れていく商業主義の加速に嫌気を感じ、沢木さんはどんなに喉が渇いても期間中は決してコカ・コーラを口にしませんでした(メインスポンサーのひとつ)。

商業五輪に対する感情は春樹さんも同じ。しかし彼の場合は大会そのものが退屈であると言い切っています(掲載した出版社にも気骨を感じました)。

一方でマラソンやトライアスロンなど、個々の競技で奮闘した選手たちへの賞賛は熱い筆致で記しています。しかも春樹さんは勝者だけではなく敗者の姿からも何かを見出そうとする。選手にとっては何よりもメダルが大事。だが見る側までそれでいいのか、と。

結局はすべて繋がってくるのかもしれません。勝てば官軍。経済至上主義。お金の問題は切実です。キレイごとだけでは生き残っていけない。斜陽と呼ばれて久しい書店業界に長く身を置いているゆえ、その辺の厳しさは日々痛感しています。でも。

図書館で借りた本から縁が始まり、新刊書店で買った書籍からいただいた「問い」の芽を古書市で見つけた一冊に育ててもらう。そんな不思議な連鎖を感じました。

今年の秋はぜひ古書市へ。

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