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短編小説@ぼんじー

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短編小説をまとめました. これまで読んでくださった方,これから読んでくださる方,本当にありがとうございます. 26年間で,感じたこと,考えたことを,拙い文章ですが誰かと共有したい… もっと読む
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記事一覧

こみあげてきたものは幸福感か、惨めさか。

こみあげてきたものは幸福感か、惨めさか。

こんにちは,ぼんじーです.
#小説 #お金について考える
です.

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雨。

新品の服をしっとり濡らす雨の中、雨粒をはじく芝生の上を歩いた。
小高い山に設けられた、地方の公園。

広場の隅、木製のベンチからは湿った木の匂いが伝わってくる。
僕の白い靴下に、泥が跳ねた。

父は車が汚れると嫌がったが、髪の毛が湿り、また足元から汚れていくのが僕は好き

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息をするのも下手くそなのか。

息をするのも下手くそなのか。

こんにちは,ぼんじーです. #小説
です.

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今日は朝から、イライラとして機嫌が悪かった。

自分のちょっとしたミスから生じた、スケジュールの変更。
乗るはずのなかった電車。

黄色い点字ブロックの内側に立つ僕は、ホームに滑り込んでくる電車から自然と目をそらす。

すし詰めにされた人たち。
扉の近くにいる人たちは、「もう乗ってくるなよ。」とこちらを見ていた。
しかし、数本見送った

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夜空には、星すら見えずに。

夜空には、星すら見えずに。

こんにちは,ぼんじーです. #小説
です.

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「好きな人ができたの。」
と、彼女が切り出したとき、僕の思考は完全に止まった。

 僕が振られるということ。それよりも、『彼女が僕のことを振るということ』が理解できなかった。

 あんなにも僕のことが好きだと言ってくれていた。
 彼女の友人も、「〇〇に、すっごい好かれてるね」といつも言っていた。

「その人、とても魅力的で…」

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今、名前も知らず、意識は手元の文庫本に深く潜っている女性との距離は、こんなにも近い。

今、名前も知らず、意識は手元の文庫本に深く潜っている女性との距離は、こんなにも近い。

こんにちは,ぼんじーです. #小説
です.

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 ハンバーガーを包んでいた紙を、僕はクシャクシャと丸め、ポテトフライをつかみ、口に運ぶ。

 東南アジア辺りだろうか、外国人の家族が向かいの席で、何やら話をしている。
 言葉はわからない。

 12:05。東京、御徒町のハンバーガーチェーン。

 平日のこの時間は、多種多様な人でごった返す。

 サラリーマンだろうか、スーツを着て

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