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大切に何度でも読みたい宝物♡
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掌編小説 | 梅の花 | シロクマ文芸部 

掌編小説 | 梅の花 | シロクマ文芸部 

 梅の花がいいと言ったら、渋いねと言った。その女は、オフショルダーのカットソーを着ていた。肌には、背中から肩へ這い上がってきたような格好のヘビが彫られている。悪戯な表情のヘビは、もう少しで彼女の鎖骨を丸呑みしそうだ。
 「テスって呼んで。ヘビじゃなくて、アタシのこと」そう言って笑った。外人の男の子のような顔。色白で、後ろを刈り上げた金髪のショートヘアがよく似合う。
 テスに、わたしはタトゥー入れそ

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大切なもの  #シロクマ文芸部

大切なもの  #シロクマ文芸部

新しい記憶を手に入れた。
何もかも新鮮で刺激的に感じられる。

でも、

どんな場所に行っても、どんなに高級な食事をしても、どんなに高価なものを身に纏っても、どんなに素敵な異性と時間を過ごしても、心が満たされない。

本当に大切なものが何か覚えていないから。

何でも新しければ良いというものではないらしい。

出来ることなら取り戻したい。
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ありがとう  #シロクマ文芸部

ありがとう #シロクマ文芸部

「ありがとうは?あ・り・が・とう」
「……ありがとう、ございます」
母親に強く握られていた手首は、開放されたあとも窮屈な痛みが残っていた。
「ありがとうは基本です。どんな時でもありがとう。ありがとうを言えない人間に価値はありません」
「……はい」

ああ、もうこんな時間。
約束の時間、15分も過ぎてる。
皆、先に行っちゃっただろうな。
また私だけ行けなかった。

「莉央、友達と約束があるんじゃない

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