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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】頻尿と鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

あれ??さっき家を出る前にトイレを済ませてきたばかりなのに、なんだかまたトイレに行きたいような気がする・・・・、まずい、トイレはどこーーーー!!
こんなふうに、つらい『頻尿』で悩んでいる人、実は結構たくさんいるようです。
しかし、排尿に関することは非常にデリケートなことであることから、周りの人にも相談がしづらく、病院にもいけず、自分一人で抱えてしまっていることが少なくありません。
 今回は、このようなつらい悩み『頻尿』について、どうしておこるのか、症状ごとのタイプや原因、治療方法についてみていきましょう!
なお、最後の章では、実際に鍼灸治療によるアプローチで『頻尿』の症状が解消した症例をひとつご紹介していきます。


1.頻尿とは

 頻尿とは、尿が近い、あるいは排尿回数が多い症状のことをいいます。
では、具体的に何回以上の排尿があったら頻尿というのか?というと、一般的には、人の排尿回数の正常値は日中5~7回とされており、朝起きてから就寝までに8回以上の排尿がある場合を『中間頻尿』といいます。
一方、寝ている最中は0回が正常であるといわれており、夜間に排尿がある場合を『夜間頻尿』といい区別をしています。
また、このような定義にかかわらず、本人が排尿回数が多いと感じている場合も『頻尿』とみなされます。

2.症状

頻尿は、一般的な症状としてトイレの回数が増えるほかに、次のような症状を伴うことが多くあります。
・急に我慢できないような切迫した尿意がある(尿意切迫感)
・夜中に何度もトイレに行きたくなり目が覚める(夜間頻尿)
・急な尿意を感じ、我慢することができずに漏れてしまう(尿漏れ・切迫性尿失禁)
・排尿時に灼熱感または痛みを伴う(排尿困難)
・排尿後もすっきりとした感じがしない(残尿感)

3.排尿のしくみ

身体の余分な水分と排泄物を身体の外に出す排尿という生理現象は、私たちの身体の中でどのようにして行われているのでしょうか。西洋医学的にみると、尿を体外に排出するまでに関わる代表的な器官として、
・腎臓
・尿管
・膀胱
・尿道
があります。
尿は、体内に2つある腎臓で生成されます。腎臓では、血液中から不必要な物質をろ過し、それらを排泄するために原尿を産生し、その過程で、必要な栄養素や水分は身体の中に再吸収されていきます。その後、腎臓で作られた尿は、尿管という管を通り膀胱に貯められます。
膀胱は弾性のあるゴム袋のように拡大することでよりたくさんの尿をためることができます。
そして、容量が一杯になるといよいよ排尿がおこなわれます。排尿行為は基本的には自然とおこりますが、ある程度は意思によりコントロールすることも可能で、膀胱から尿道を通り、男性では陰茎を通過して、女性では外陰部(女性の外性器の領域)から体外に排出されます。
通常、尿の成分の95%は水であり、残りの成分が、尿素、アンモニアなどを始めとする、身体の中で排出された老廃物が含まれます。

4.頻尿の原因

では、頻尿はいったいどのようにしておこるのでしょうか。

4-1.器質的疾患によるもの

先にご紹介をした、排尿のしくみに何らかの異常がおこり、尿の量が著しく増えたり、尿を膀胱に貯めることができなくなったり、溜まった尿をすべて排出できなくなったりすることが原因でおこります。
代表的なものとして、過活動膀胱、残尿、多尿、尿路感染、炎症(膀胱炎、膀胱結石など)、腫瘍などの疾患があります。

4-2.心因性によるもの

頻尿の症状がありトイレに繰り返しいくが、原因となるべき身体や尿の異常がなく、精神的不安や葛藤(かっとう)などがきっかけとなって生じる頻尿を心因性頻尿といいます。
ストレスにより緊張感が高まることにより尿意を感じやすくなることから、仕事での大事な場面、試験、遠方への外出などの場合に尿意を感じやすくなり、リラックスしている場面ではトイレを気にする回数が自然と減ります。
心因性頻尿では、尿量の問題はなく、夜就寝中は排尿のことを気にすることはないので夜間尿の症状がないことが多いようです。

5.頻尿に対するアプローチ

5ー1.西洋医学によるアプローチ

西洋医学では、頻尿の原因を調べるために、一般的に尿・血液検査、腹部のレントゲン撮影、腹部エコー検査などが行われます。
その結果、頻尿の症状をひきおこす原因疾患がみつかった場合には、個々の病気に対する治療が行われ、投薬が行われます。
また、心因性の頻尿の場合には、排尿の回数や時間を記録する排尿日誌をつけながら医師の診察を繰り返し受けることで改善する人が多いようです。
それでも、改善しない場合は飲み薬などを使うほか、不安感が強い場合には心療内科や精神科を受診してカウンセリングや投薬が行われます。

5-2.鍼灸によるアプローチ

「頻尿は鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、頻尿の症状も鍼灸で治療可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
一般的な投薬治療では、頻尿のつらい症状を飲み薬により抑えます。投薬による治療を受けている方の中には、『いつまで薬を使い続ければよいのか』『薬を使い続けるのは不安がある』『薬が効かなくなってきたように感じる』『何度も再発をしているので、対処療法ではなく根本から治したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。
一方、鍼灸治療による頻尿の治し方は「症状が起こっている原因」を正すことによって、頻尿の症状を取り除くとともに、再発しない身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「季候、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で尿を生成・排泄する働きに変調が起こることにより、頻尿を発症をする」と考え治療にあたります。
頻尿の症状がなぜ起こっているのか、その原因やメカニズムを明確にした上で、治療や養生指導(日常生活の注意事項)にあたることから、体質・体調・気候・性格なども考慮した上で、可能な限りお一人お一人に合ったもの治療を提供していくことができます。

6.東洋医学における頻尿とは

東洋医学では、頻尿のことを『淋証』といいます。『淋証』では、排尿が頻繁・少量・困難で、刺痛・残尿感・下腹部に締め付けられるような痛みが現れるのが特徴とされます。また、単に排尿の回数が多いものは『小便頻数』と呼ぶこともあります。
では次に、頻尿の東洋医学的分類について、原因をわけて見ていきたいと思います。

6-1.食べ過ぎ飲みすぎによる体内の余分な熱を原因とするもの(膀胱湿熱)

本来、食べ物や飲み物は口から摂取されて消化管に入り、体内に栄養として取り込まれ、
その過程で発生した老廃物(食べ物のカス)や余った水分は、汗・尿・便などによって体外に排出されます。
しかし、刺激の強い物、脂っこい食べ物、甘い物、生もの、水分を摂りすぎることにより、消化吸収するのに負担がかかり余分な熱が発生します。また、その過剰な熱は、消化の過程で生まれる老廃物や水分の余りとくっついた状態=湿熱となり、膀胱内に入り込み蓄積していきます。そして、膀胱に溜まった湿熱が尿をためて身体の外に排出する、という膀胱の正常な働きを妨ることから、尿の回数が多くなったり、痛みを伴う膀胱炎のような症状をひきおこします。
このタイプの特徴として、尿の量は少なく回数が多い、排尿時に焼けるような刺すような痛みを伴う、尿の色が濃い、下腹部に張ったような痛みがある、などを伴うことがあります。
時に、その熱により尿が濃縮され、その状態が長く続くことにより、尿中の物質が結晶化して砂・石状になることもあります。これが、いわゆる尿路結石の症状がおこる、東洋医学的なメカニズムです。
さらに、本来は分泌されることのない脂肪状の物質が尿中に含まれるようになることもあります。そうすると、尿の色が米のとぎ汁用に混濁したり、油が浮いたような状態になります。
まれには、その余分な熱があまりにも過剰になりすぎて、体内の小さな血管を傷つけてしまうことから、排尿時に出血を伴い血尿のような症状となって現れることもあります。

6-2.疲労、体力の低下・身体の弱りを原因とするもの(脾腎虧虚 ヒジンヒキョ)

体内で発生する余分な熱が湿熱という老廃物となり、東洋医学的には頻尿の症状をひきおこす原因となることは、先にご紹介したとおりです。
頻尿の症状を長期間そのまま放置したり、何度も繰り返していたりすることで、身体へのダメージはさらに深刻化して健康な状態を取り戻しづらくなります。
また、高齢、慢性病、性生活の乱れ、過労などによっても、体力が低下するとともに身体の様々な機能が低下しやすくなります。
体内循環は低下して、尿をうまく溜めたり、排出したりする作用が弱まることから、頻尿の症状をひきおこします。
このタイプの特徴として、頻尿の症状が慢性化して治りづらくなるとともに、疲れやすさ・手足や腰のだるだ・めまい・痩せ・冷えなどを伴うことがあります。
また、尿の色はあまり変化がないか薄くなり、排尿時の痛みや腹痛もそれほど激しくなく、滴のような尿がポタポタととまりずらくなり、疲労によって症状が再発しやすい、という傾向がみられます。

6-3.心身の緊張を原因とするもの(肝鬱気滞)

現代社会は、学校や仕事・人間関係など多くのストレスであふれています。
精神的なストレスにより気持ちがピーンとはった状態が続くことで、おのずと身体も緊張しやすくなります。
心身が緊張すると、呼吸は無意識に浅くなり、外界からの新鮮な空気を口や鼻から取り込み、食べ物を口から体内に取り入れ、それらを巡らせて吸収し最終的に排出する、つまりは一連の体内循環が滞ってしまい、体内では余分な熱が発生します。
先にご紹介したメカニズムにより、こうしてひきおこされる循環の停滞により発生した熱が湿熱として膀胱に蓄積していくことから、頻尿の症状をひきおこします。
会社や学校で嫌な事を控えたタイミングで頻尿がおきやすいというような、西洋医学の分類上における心因性頻尿がどうしておこるのかが、こうしたメカニズムにより説明ができます。
このタイプの特徴は、性格的にイライラしやすかったり不安に感じやすかったりする他、排尿困難、下腹部の張りを伴うこともあります。
また、日常生活の中で緊張したタイミングで症状がおこりやすく、一日リラックスして休日を過ごした場合には症状を忘れていることが多いという特徴を持ちます。

7.鍼灸治療で頻尿が改善した症例


次に、鍼灸治療で頻尿が改善した症例をご紹介したいと思います。
一度の施術で使うツボは1つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。
なお、使用したツボは敢えて明かしていません。
というのは、人間の身体は全身の状態が複雑に絡み合っているため、「このタイプの頻尿=このツボ」という簡単な方程式は成り立たず、似たような症状であっても同じツボを使えるとは限らないからです。
ツボを選定する際にはその人の症状だけでなく、その人の体質、その時の体調、施術をする時の気候、さらに言えばその人の性格までを考慮しなければ、シャープに効かせることはできません。これら全てを考慮にいれて、やっとオーダーメイド治療となるのです。
【患者】40代女性、身長160cm、体重48kg。
【初診】20XX年11月X日
【主訴】頻尿(膀胱炎)
【問診】
今年の春に転職をした。転職をしてからは、慣れない仕事と人間関係により、それまでに感じたことのないような緊張感を感じることが増えた。
6月頃に長時間におよぶ会議があった時に、トイレに行きたくなったが、ひたすら我慢をした。その後、限界まで我慢をしてトイレに行った。冷や汗が出てかなりの緊張感をともなった。
それ以降、通勤の電車や仕事中など、自由にトイレに行くことができない環境になると、トイレに行きたくなり、一日の排尿回数が合計で15回を超えるようになった。
尿意を感じてトイレに行ってみるが、実際の尿量は少なめであった。その後、泌尿器科を受診して服薬を始め、一時的には良くなり尿意の回数は減少してあまり不自由を感じなくなった。
夏の間、仕事場でエアコンが非常によく効いていたせいか、腰から足にかけて冷えを感じることが多かった。
秋口から仕事が繁忙期に入り仕事量も増え残業もするぐらい忙しくなり、心身ともに疲労感を感じていた。
9月終わり頃、再び尿意が気になりだし、排尿回数が増え始めた。排尿時にチリチリした痛みを感じるようになってきた。冷えがきついと尿意の回数が増えて症状が悪化した。
再度、泌尿器科を受診して服薬により症状が治まるが、服薬を中止すると排尿回数が増え、排尿時の痛み、恥骨の部分に痛みを感じるようになってきた。
何度も頻尿の症状が再発していること、薬に頼り続けることに不安があり、鍼での治療をしてみたいと、来院をした。
【初診時の症状】
・1時間に1回程度、尿意を感じる。
・夜間は数時間おきに尿意で目が覚める。
・排尿時に焼けるような痛みを感じる。
・尿の色は濃くてにごった感じ
・排尿後も全部出きった感じがしない。
・恥骨のあたりに痛みを感じる。
【特記事項】
・幼少期に風邪をひいて高熱を出すことが度々あった。
・学生の頃は、ラーメンなどが好きで暴飲暴食を繰り返し、10㎏以上太っていた。
【診断と治療方針】
新生活を始めて心身の過緊張状態が続くことで体内に過剰な熱が発生し、不適切な飲食による消化吸収力の低下もあり、我慢をしたことをきっかけに老廃物が尿として対外に排出されづらくなった。
その結果、湿熱が身体下部の膀胱に溜まり膀胱炎を発症したと判断。
従って、身体の緊張を緩めながら、湿熱をを取り除くよう処置。
【日常生活での注意点】
・適度に運動する。
・身体を緊張させる作用をもつ、カフェイン類の摂取をひかえる。
【経過】
初診 排尿時の痛みが少しやわらいだ感じがする。
2診~10診 徐々に排尿回数が減少し、夜間は尿意で目を覚ますことがない日も出てきた。排尿時の痛みと恥骨のあたりの痛みがなくなり、頻尿への心配も薄れて生活に支障がなくなった。
10診~ さらに症状を改善して再発しない身体づくりをしたいとのことから、引き続き治療を継続中。 

8.まとめ

いかがでしたか?
今回は頻尿について、症状ごとのタイプや原因、治療方法について解説をしました。
東洋医学、鍼灸においても、頻尿に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。

今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132
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画像の出典:https://www.photo-ac.com/




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