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#恋愛
大樹【ショートショート 恋愛】
アールグレイの香りで、自分の調子が分かるようになった。軽ければ快調、重ければ不調。
今朝は重いなと感じながら支度をし家を出た。
その判断はすぐに後悔することになる。
会社はフレックスなので、ラッシュアワーを避けて遅めに出勤している。ラッシュ時なら混雑するホームも、人はまばらだ。そこにぼんやりと立ち、きれいだなと雲を眺めていた後の記憶がない。
目を覚ますと、そこには太った男が汗をふきふき座ってい
逃避行【ショートショート】
来ないで。
そう思いながら駅のベンチで待っていた。
春は来た。けれど風は冷たい。マフラーをきゅっと巻き直す。
今夜十時に、とあなたは言った。
二人で遠い街へ行こうと。
私は静かに頷き、互いに少しだけの荷物を取りに家に戻った。
もうすぐ十時。
来ないで、と祈るような気持ちで時計を見る。
「ごめん遅くなって」
息を弾ませて、いつもの笑顔で来たあなた。
二人の未来を疑わぬあなた。
私も笑顔で応じる
恋【ショートショート】
今日、街頭インタビューで「そんな遠いところの奥様とどのように出会われたのですか」と聞かれた。
こんな田舎町にテレビが来るなんて思ってもみなくて、しどろもどろに「大恋愛でした」と答えた。
24の時だった。私は大学院へ行っており、まだ学生だった。好いた女性は10歳年上で、地元の会社で事務員をしていた。当時34歳で結婚していないのは、肩身が狭いようだった。
彼女との出会いは書店であった。同じ本を同時
さようなら【恋愛 ショートショート】
夏とはいえ、雨も降っていたし、明け方には少し肌寒く感じた。
私は小さなボストンバッグを抱え、小さな無人駅の木でできたベンチにぽつねんと座っていた。
「22時の電車に乗ろう」
約束して別れた。
私は少しの着替えとありったけのお金だけを持ち、21時半に駅に間に合うよう、走って行った。
二人で生きていくんだ。
そんな覚悟と期待の入り混じった感覚。
若かったからだろうか、不思議と先の怖さはなかった
一夜【ショートショート 恋愛】
目が覚めると胸が苦しかった。久しぶりだ。最近は嫌なことがなかったから、この苦しさからも開放されていた。
起きなきゃ。会社へ行かなくては。体の重さと戦い、よろめきながら洗面へ行く。
疲れきった、ひどい顔をしていた。青ざめてすら見える。
そんな自分の顔を眺めていて、昨日の出来事を思い出した。
私は今の会社に中途で入社したばかりだ。入社してひと月経ったくらいか。
小さな会社だ。主にホームページの更新を
春間近【ショートショート 恋愛】
※性的表現があります^^; 不快に思われる方もいらっしゃると思いますので、念の為冒頭に書かせて頂きました。
梅が咲いて、雪が降った。一面真っ白だけど、どことなく心が騒いでいる。心が。体が。春を待ち望んでいる。
ある晩、私たちは一夜だけの関係になった。私はその人のエロティックなところに惹かれていただけだし、それで満足だった。
うそ。本当はうそ。私はその人に抱かれて、その人の瞳も指先も声も話し方も
スーパームーンラブストーリー【ショートショート】
目を覚ますと月夜だった。カーテンを閉め忘れている。圭吾は隣でぐっすり寝ている。白い月明かりが彼の顔を照らしていた。くしゅん。まだ夜は肌寒い。毛布をかけ直して再び眠りについた。
「きゃっ…」
別の部署に届け物に行く途中、出会い頭に誰かとぶつかった。私は弾みで尻餅をついた。
「ごめんね、大丈夫?」
手を差し出され、立ち上がる。
「ええ。すみません、私が前をよく見てなくて、本当にすみません……って、立