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ショートショート

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記事一覧

大樹【ショートショート 恋愛】

大樹【ショートショート 恋愛】

アールグレイの香りで、自分の調子が分かるようになった。軽ければ快調、重ければ不調。
今朝は重いなと感じながら支度をし家を出た。
その判断はすぐに後悔することになる。

会社はフレックスなので、ラッシュアワーを避けて遅めに出勤している。ラッシュ時なら混雑するホームも、人はまばらだ。そこにぼんやりと立ち、きれいだなと雲を眺めていた後の記憶がない。

目を覚ますと、そこには太った男が汗をふきふき座ってい

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死ぬなって言える?【ショートショート】

死ぬなって言える?【ショートショート】

わかった時には私の腎機能は5割になっていた。
健康診断で、血圧が高いと言われたのがきっかけでわかった。
この病気は家族性のものらしいけど、私の場合突発性だったから、診断がつくのに時間がかかった。
正直、自覚症状なんてないような気がする。言われてみれば疲れやすいような気もするけど。けどもともとの貧血もあるし。あ、貧血も腎臓のせいなのか。

ひとりカウンターバーで飲んでいた。ふらふらと歩いてたどり着い

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夢【ショートショート】

夢【ショートショート】

いつものようになんとなく仕事をして帰る。
もうアジサイが開き始めている。まだ今年になったばかりだと思っていたのに。もう少しで今年も半分終わる。

結婚はとうに諦めた。10年前、同期たちの結婚ラッシュのさなか、彼と出会った。私もなんとか20代で結婚できる、と胸を撫で下ろしたものだった。それから3年経ち結婚の2文字を出したが彼はお茶を濁し、更に2年経ち婚活を始めたいと言ったら、転職したいんだ、来年には

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春の雨【ショートショート ファンタジー】

春の雨【ショートショート ファンタジー】

春の雨はさらさらと降る。小雨だから20分傘を差さずにいても、そんなに濡れない。それでも、仕事帰りに濡れながらみみを探すのはまいる。
最近私は目が見えづらく、動くものくらいしか見えなかった。帰宅するともうすでに暗かった。しかし玄関のドアをするっとみみが通り抜けるのは、うっすらと見えた。あれは本気で外へ出たかったのだ。おむかえなんかの時は、玄関でちょこんと待っている。
「みみちゃん、ぬれるから帰ってお

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あの世もこの世も【ショートショート SF】

あの世もこの世も【ショートショート SF】

ある朝出勤すると、私のデスクの上に花の鉢が置いてあった。ピンクの石楠花だった。見事な大輪である。きれいだなあとしばらく眺めた。ところで、それはいいのだが普段私の使っている仕事道具が何もない。パソコンも、資料もない。これはどういうことだろう。
仕事柄出勤時間がまちまちで、朝は人が少ない。しかし同じ課の者は出勤しているはずなので、しばらく待てば誰か来るだろう。椅子に腰をおろしてぼんやりと待つ。
やがて

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はつ恋【ショートショート】

はつ恋【ショートショート】

予報では雨だったのに、きれいに晴れた。さすが
誠也だ。

「皆川さん」
ごみ捨てに行く途中、後ろから声をかけられ振り返った。
「おう、どうした、幸成」
クラスの男子だった。なんだか震えている。
「寒いんじゃない?」
声をかけながら近寄った私の手を取って幸成は言った。
「…あのさ、俺と付き合って」
…え?
「俺、前から皆川さんのこと好きで」
私、幸成のこと好きなのかな?そう問いかけると心臓がとくんと

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逃避行【ショートショート】

逃避行【ショートショート】

来ないで。
そう思いながら駅のベンチで待っていた。
春は来た。けれど風は冷たい。マフラーをきゅっと巻き直す。

今夜十時に、とあなたは言った。
二人で遠い街へ行こうと。
私は静かに頷き、互いに少しだけの荷物を取りに家に戻った。

もうすぐ十時。
来ないで、と祈るような気持ちで時計を見る。

「ごめん遅くなって」
息を弾ませて、いつもの笑顔で来たあなた。
二人の未来を疑わぬあなた。
私も笑顔で応じる

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悔いて【ショートショート】

悔いて【ショートショート】

高校生の頃、仲の良かった友達と口を聞かなくなった。
私は幼稚園に通う頃から「お心が強い」と言われており、自分で言うのもなんだが、我慢強いほうだった。
その子が何をしたのか、何がきっかけで口を聞かなくなったのかは、思い出せない。
そんな些細なことだったが、多分積み重なって嫌になってしまったのだ。
その子はそれからも何度も私に話しかけてきた。
けれど私がそれに応じることはなく、そのまま卒業して、それか

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小牧幸助文学賞 応募作品

①funeral
母の遺体を生前好きだった鉢植えで囲んだ。

②題名:burial
母を炭焼きし、庭の桜の樹のもとに埋めた。

本当はもう少し連作で書くつもりでしたが、仕事が決まったため応募期間に間に合わなくなる可能性を考え、応募させていただきました。

夢の話

夢の話

気づいたら私は囚人になっていた。おかしな房だ。囚人全員が同じ部屋に閉じ込められていた。それぞれに1つずつベッドがあてがわれていた。老若男女、囚人服でなく様々な格好をしていた。食べ物に事欠くことはなかったが、不衛生極まりない部屋だった。
赤いセーターの老女が特に新入りである私の世話を焼いてくれた。食事を運んでくれたり薄汚れたカトラリーをくれたり。
中には少女もいた。名前はメモだった。

その後突然の

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たそがれのお菓子やさん【ファンタジー ショートショート】

たそがれのお菓子やさん【ファンタジー ショートショート】

そのお菓子屋さんは、ときどきやってくる。
ふかふかした三毛猫さんが、お菓子のワゴンを押してくる。三毛猫さんは手足がちっちゃくかわいらしくて、てちてちと歩いてくる。

ワゴンは薄いピンク色で、前面にはステンシルで白い文字がtwilightと書いてある。白いスカラップのお屋根が付いていて、パンチングされてレースみたいになっている。夕日を浴びながら三毛猫さんはてちてちと歩く。

公園に着くと三毛猫さんは

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あの子は今…【ショートショート】

あの子は今…【ショートショート】

幼い頃の彼女のことは知っていた。
と言っても同じクラスだっただけだが。
僕は子供の頃名前に興味があった。彼女はもちろん可愛かったので気になったのもあるが、名前が好きだった。僕は貴いという字が好きだった。

小学校高学年になり、彼女は転校して行った。芸能人になる為に東京へ行ったのだった。
彼女くらい綺麗な子ならさもありなんと思っていた。

しかし彼女は中学の時帰ってきた。都会っぽく垢抜けて、更にかわ

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眠れぬ夜のための【ファンタジー  ショートショート】

眠れぬ夜のための【ファンタジー ショートショート】

今年の梅雨開け宣言はなかった。
どうせそんなことだろうと思っていた。
ここのところ有耶無耶に終わることが多かったし、ゲリラ豪雨なんかも増えてきたからだ。
仕方の無いことだとは思う。だけど、梅雨入り宣言はしているのに、しれっとフェイドアウトして終わっていくなんて、なんかズルすぎはしないか?僕はスルーされた梅雨明け宣言に対して、いつもそんなふうに思い、明ける頃になると毎日天気予報に目を光らせていた。

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草海原❴ショートショート❵

草海原❴ショートショート❵

夏空、草いきれ。
暑いさなかの草原に体を横たえる。
長毛種の犬の背のような草原を風が撫で、その草原が僕を撫でる。

緑色の長毛種に安心して身を横たえる。

汗がダラダラと流れて行くのが気持ちいい。

帰ったらきっと、日焼けしてるだろうな。鼻の頭どころか顔全体に腕にハーフパンツから出た足まで。

それでも気持ちよくて僕はここに横たわり続ける。

暑い風がざあっと通り過ぎ、ふと眠気が襲ってくると、僕は

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