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レモネード【恋愛 ショートショート】

真夏の午後3時。
カフェで涼むのは最高だ。
一面ガラス張りの窓から見下ろす交差点。
陽炎が立っている。
こんな中、もう歩きたくない。…けど、歩いて帰らなきゃいけない。
店内には、女子高生たちのざわめきが聞こえる。
私達は冷たい水に入れられた金魚みたい。
ソーダ水。レモネード。アイスティー。
冷たい飲み物を飲み干して、ガラスの水槽の中を泳ぐの。

そんな物思いに耽っている千夏をよそに、目の前の裕太はアイドルの握手会の話を興奮気味にしている。
千夏と裕太は、付き合い始めて半年になる。
けれど、まだ何もない。キスをしたことも、それどころか手をつないだことすら。
しばしばファストフードでハンバーガーをぱくつきながらおしゃべりをし、ごくまれに、こんなおしゃれなカフェでお茶をして、駅まで一緒に歩く。
デートはまだ3回。水族館に遊園地に映画館。
裕太にすれば、学校帰りのファストフードもデートのうちだなんて言いそうだが。

伊月さん。彼ならどんなところへ連れて行ってくれるかしら。
伊月さんはお姉ちゃんの彼氏だ。
大学生のお姉ちゃんより4つ年上の伊月さんは、聞けば誰でも知ってるような会社で働いている。
お姉ちゃんが卒業したら、2人は結婚する。
伊月さんは、私が知る限り、お姉ちゃんの初めての彼氏だ。
お姉ちゃんは、初めて付き合った人と…結婚するのだ。
伊月さんとお姉ちゃんは、もう、キスしたのだろうか。
伊月さんはどんなキスをするのだろう。
伊月さんは、いつも5月の風のようだったから、彼のキスはミントの香りがしそうだった。

「千夏ちゃん?」
私はドキンとした。たった今考えていた人がそこにいたからだ。
「珍しいね。彼氏?」
伊月さんは裕太にも微笑みかける。裕太はぎこちなく笑う。
私はこくんとうなづく。
「デートの邪魔しちゃったかな」
ごめんね、と伊月さんが行こうとすると、裕太が派手な音を立てて立ち上がり言った。
「やば!時間だ!千夏、悪い!駅前で野口ゆあちゃんのミニライブがあるんだ!」
裕太は伊月さんに向かって、それじゃ、と頭を下げると、小銭をテーブルに置いて走っていった。
いつものことだ。私が溜息をつくと、伊月さんが笑った。
「これから、千夏ちゃんの家へ行くんだけど、乗ってく?」

伊月さんの車の中は、なんの匂いもしなかった。まるで彼自身のようだった。
車内はうだるように暑いのに、伊月さんは涼しい顔をしていて、裕太と同じ人間とは思えなかった。
裕太は、いつも裕太の匂いがした。それは女の子のとは違って、それを嗅ぐと千夏は少し恥ずかしくなった。
「彼とは長いの?」
ぼうっと考え事をしていた千夏ははっとする。
「は、半年です」
現実に引き戻されると急にドキドキしてきた。車内には、千夏と伊月さん2人だけ。
「そっか。1番楽しいときだね」
「は、はい」
不意に伊月さんが表情を変えて言った。
「少し、海でも見ていかない?」

「時々、ここへ来るんだ」
誰と?1人で?小高い丘の上からは、少し遠いけれど海がよく見えた。
真夏の風が吹いてくる。けれど街中よりはずっと涼しい。
「ねえ、千夏ちゃんは…」
「え?」
伊月さんが何か言いかけたけれど、風にかき消される。
その時、ひときわ強い風が吹いて、千夏はよろめいた。
「大丈夫?」
千夏は伊月さんに抱き寄せられた。
どうしよう。鼓動が、大きくなる。
キスされる。
そう思ったとき、伊月さんが言った。
「そろそろ行こうか」
千夏はこくんとうなづいた。


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ぶくおさんの記事の一節「レモネード」から思いついて書きました(^^)

ぶくおさん、勝手にすみませんm(_ _)m

ぶくおさんの記事は、いつも透明感とウイットに富んでいて素敵です(✪▽✪)



最近、昼間は熱中症→クーラーがんがんにする→冷えのぼせ、に悩まされてます(^_^;)

どうもそのせいで疲れるらしく、メンタルにきてます(;´д`)トホホ…

早く働きたいけど、今週は動かないことにしました。

早くホルモン剤が効いてくれるといいのですが……。



先日は、長い長いプロフィール、見て頂いてありがとうございましたm(_ _)m

実は、人生の暗い部分だけ切り取った「裏プロフィール」も書いてあって(なぜ書いたのか自分でもわかりません(^_^;))。

けど、読み返してみると、くだらない内容な気がして、アップロードしようかどうしようか迷っています(;´д`)トホホ…

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