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一級建築士学科試験フォルダ

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学科試験の学習の心構えや解説など
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一級建築士学科試験と設計製図試験から見た2方向避難における家具の配置と歩行距離の測り方

一級建築士学科試験と設計製図試験から見た2方向避難における家具の配置と歩行距離の測り方

合格発表時に公表されている通り、設計製図試験において「法令への重大な不適合」と判断されかねないのが、「直通階段に至る重複区間の長さ」や「避難経路」になりますので、歩行距離に関する考え方をよく理解しておくことは重要です。
勿論、令和3年に出題されていますので、学科試験においてもです。

まず、令和3年一級建築士学科試験での出題になりますが、以下の記述を「最も不適当なもの」としています。

次に、「見

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一級建築士学科試験の法規や施工に影響する改正民法による契約不適合という考え方

一級建築士学科試験の法規や施工に影響する改正民法による契約不適合という考え方

改正民法が、令和2年4月1日から施行され、これに伴って、関係法令や契約約款なども一部改められています。

令和3年の学科試験から、法規や施工の問題に、改正民法における「契約不適合」関係の規定が影響してくるところがありますので、整理しておきます。

1.民法改正により「瑕疵」から「契約不適合」へ(買主の追完請求権)
第562条第1項
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しな

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一級建築士試験|コロナ禍において受験者に課せられる試練と受験手数料の返還措置

一級建築士試験|コロナ禍において受験者に課せられる試練と受験手数料の返還措置

7月3日付で、公益財団法人建築技術教育普及センター(以下「センター」とします。)のホームページにおいて、受験手数料の返還について下記内容が公表されています。

また、6月に入り予定通りの日程で実施すると公表した際に、新型コロナウイルス感染症などへの対応として、『新型コロナウイルス感染症の疑いがある方は、必要に応じて保健所やかかりつけの医師等に相談の上、当日の受験を控えていただくようお願いします。』

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一級建築士学科試験│法規において建築士法の問題を確実に得点することの意義

一級建築士学科試験│法規において建築士法の問題を確実に得点することの意義

法規の問題30問中、建築士法からの出題数に着目してみます。

<令和元年>3問+(1問)
<平成30年>3問+(1問)
<平成29年>4問+(1問)
<平成28年>4問+(1問)
<平成27年>4問+(2問)
 ✳( ):建築基準法等との融合問題数

1.建築士法からの出題建築士法は全44条からなる法律で、試験で出題されるのは、その中の一部に基づいたものとなります。施行規則に基づく出題もありますが

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一級建築士学科試験と設計製図試験|バリアフリー法上の要求と多機能トイレのあり方の見直し

一級建築士学科試験と設計製図試験|バリアフリー法上の要求と多機能トイレのあり方の見直し

<見出し画像>出典:高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(平成29年3月 国土交通省)

1.バリアフリー法高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令における「建築物移動等円滑化基準」のうち、第14条が便所についての規定になり、以下の通りとなっています。

(便所)
第14条 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する便所を設ける場合には、その

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一級建築士学科試験と設計製図試験をコラボして、建蔽率の改正に基づく設計与条件を掘り下げてみる

一級建築士学科試験と設計製図試験をコラボして、建蔽率の改正に基づく設計与条件を掘り下げてみる

平成30年「健康づくりのためのスポーツ施設」の設計与条件に照らして、改正建築基準法に基づく、今後の建蔽率の限度の扱いについて考察してみます。

1.平成30年当時の設計与条件・敷地は、第一種住居地域及び準防火地域に指定されている。また、建蔽率の限度は70%(特定行政庁が指定した角地における加算を含む。)、容積率の限度は200%である。
・床面積の合計は、2,300㎡以上2,800㎡以下とする。

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一級建築士学科試験|内装制限の役割と改正建築基準法における考え方

一級建築士学科試験|内装制限の役割と改正建築基準法における考え方

1.内装制限の役割・出火機会を低減
・初期火災の拡大を遅延
・有害な煙の発生を抑制
・安全な避難を確保

2.内装制限の緩和要件上の内装制限の役割を他の措置に代えることができるなら、内装制限に求められている役割は免除されるだろうとの想像はできるかと思います。

内装制限の緩和や免除をする要件として、以下の規定があげられます。
・煙の降下を抑止できる天井の高さの確保による制限の免除
 (令第128条

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一級建築士学科試験│仕様書改定により過去問が出題根拠を失うこともある

一級建築士学科試験│仕様書改定により過去問が出題根拠を失うこともある

下記は、平成25年学科Ⅴ(施工)の問題の適当な記述の一つです。この記述は『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)』の規定に基づき出題されたものだと思われます。同仕様書は3年ごとに改定されており、最新のものは『平成31年版』になります。

<平成25年学科Ⅴ>
鉄筋コンクリート造の建築物における内部工事の下地材として使用する木材について、代用樹種の使用が認められていたので、すぎの代わりにべいつがを使用

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一級建築士学科試験/記述を正誤判別するためのキーポイントの覚え方

一級建築士学科試験/記述を正誤判別するためのキーポイントの覚え方

試験問題の記述には、「~とする。」で結ぶものと、「~とした。」で結ぶものとがあります。前者を規定型の出題とするなら、後者は例示型の出題と言えるかと思います。

問題の記述を読み、選択肢一つ一つの正誤判別をし、最も不適当なもの又は適当なものを結論づけていくのが、答えを絞り込んでいくプロセスになります。

不適当な記述は、正誤判別をする上でのキーポイントとなる部分の数値や大小関係を、正しくないものにし

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一級建築士学科試験における具体的な目標得点の重要性

一級建築士学科試験における具体的な目標得点の重要性

1.合格基準点平成21年以降の現行試験においては、各科目は過半の得点、総得点は概ね90点程度を基本的な水準として、合格基準点を定めているとされています。総得点125点満点中、90点を取るためには、72%を正解とする必要があります。

また、各年の難易度によって合格基準点の調整もしており、総得点については最低の87点から最高の97点まで10点の開きがあります。各科目については、平成27年に一度だけ、

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一級建築士学科試験…知らない問題をどう解くか?の意義

一級建築士学科試験…知らない問題をどう解くか?の意義

1.合格率と知らない問題の量「知らない問題をどう解くかは、知っている問題の量を増やすこと以上に重要」。これは平成14年に学科試験に合格した、ある企業研修での受講者(20代女性)が、合格体験談で残してくれた言葉になります。こういった考え方をされる方ですから、この年の設計製図試験に、一度の受験で合格されています。

当時から20年近くが経とうしている中、今さら旧試験の古い話を?と思うかもしれませんが、

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一級建築士学科試験…本試験問題の「誤植」から得る教訓…達成感と集中力

一級建築士学科試験…本試験問題の「誤植」から得る教訓…達成感と集中力

「令和元年」、新元号を冠した最初の一級建築士試験になりますが、学科Ⅰ(計画)の問題の記述に誤植と思われるものがありました。

以下の抜粋の通り、一つの記述の中に「欠如」と「欠除」が不自然に混在しており、出題者が引用している基準書に照らしても、正しいのは「欠除」だと言えます。

(問題の記述を部分的に抜粋)
~の欠如は、~の欠除はないものとする。

解答するに当たって、受験者の判断に大きく影響すると

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一級建築士学科試験に限らず学びに天狗はご法度…わかっているつもり止まり

一級建築士学科試験に限らず学びに天狗はご法度…わかっているつもり止まり

 受験回数を重ね、合格基準点まで、あと一歩という力がついてくると、合格できない自分に対するマイナスイメージの反対側に、ある程度はできるという自負も芽生えてくるのは自然なことだと思います。
 しかし、この自負によって、基本から学び直してみるという、最も大事な謙虚さを忘れがちになります。
 そんなことはわかっている。そこは十分理解できている。この自負が、実は、わかっているつもり止まりであって、理解

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一級建築士学科試験、何のために試験勉強をするのか?何のために過去問を解くのか?

一級建築士学科試験、何のために試験勉強をするのか?何のために過去問を解くのか?

学科試験に合格し、設計製図試験に合格する。これらを経て、一級建築士の資格が与えられる。
一級建築士をめざす者に、求められているものは何か?
設計製図試験の合格者すなわちランクⅠとは、「知識及び技能」を有するもの、とされている。
そして、「知識及び技能」とは、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいう、とされる。
これを踏まえると、学科試験において

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