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「ハイキュー」が学ぶ「負け」ることの意義

「”負け”は弱さの証明ですか?君達がそこに這いつくばったままなら、それこそが弱さの証明です。」

✔烏野高校バレー部顧問:武田一鉄先生

 インターハイ準々決勝で、及川率いる青葉城西に負けた後、悔しすぎてなかなか立ち上がれない、日向(CV:村瀬歩)と影山(CV:石川界人)に、顧問の武田一鉄先生(CV:神谷浩史)が近づいて行きます。

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 日向たちは、勝つことしか考えていませんでしたし、実際、全く勝てない戦いでもありませんでした。なので、余計に悔しかったのだと思います。「確かに負けましたが、実りある試合だったのでは?」と、微笑みながら言う武田先生に、日向は「でも負けました」と、言い返します。それに対して返した言葉が「”負け”は弱さの証明ですか?君達がそこに這いつくばったままなら、それこそが弱さの証明です。」でした。 

 武田先生は、バレー経験もなければルールも知らない顧問でしたが、部員のために必死に練習試合を取り合つけたり、古豪の烏野高校の黄金時代を築いた鵜飼コーチの孫で、元OBにコーチになってほしい、と毎日熱心に頼み込んだり…と、バレーの事が分からないなりに、できる事をできる限りしてくれる素晴らしい顧問です。

✔本当の「弱さ」

 一般的に、負けるのは弱いからで、強きが勝つ…当然の認識です。ですが、そんな一般論に、一石を投じてくれる珠玉の名言ではないでしょうか。私自身も、誰かや何かに負けたと感じたら、それは自分が劣っているから、弱いからなのだと自己完結してしまいますし、きっと、多くの人の認識だと思います。

 ですが、武田先生の「負けは弱さの証明ですか?」という言葉に、私はとても魂を揺さぶられました。「負ける」ということは、二度と自分が立ち上がれないこと、二度と勝とうとしないこと、二度と次への希望に目を向けないこと、そして、二度と自分やチームを信じられなくなったことをいうのだと、気づかされた言葉でした。

 「負け」という事実だけにしか目を向けらない時は、確かにあるかもしれません。ですが、一刻も早く顔を上げ、負けの事実だけでなく以外に、目を向ける必要があります。そこに目を向けられなければ、「負けを弱さの証明」にしてしまうのです。

 ✔「負け」から何を得るのか

 武田先生は「負けは、今の力の認識」だとも言っています。つまり、負けという事実は、単に自分の現状把握の機会でしかないということです。実際、何事でも、上手くいった時や勝っている時よりも、負けの時にこそ気づきは多く、自分自身の至らなや必要な努力ポイント、伸びしろさえも教えてくれる重要な経験と言えます。

 しかし、そうなるかどうかは、負けた後の己の行動次第です。自分がなぜ負けたのか、と同時に、自分がその中でも勝てていたポイントを謙虚に分析して、良かった点をさらに磨き伸ばし、不足の点は克服できる点なのか、それとも捨てて他を伸ばすべきなのかの判断をして、行動していくことが肝要です。

 「負けた」時に、負けただけで終わらせるのか、次への課題とできるのかは大きな違いです。ちなみにこの時、スラムダンク最終話で山王の監督の「這い上がろう。負けたことがあるという事がいつか大きな財産になる」という言葉も思い出しました。

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 10年以上頂点に君臨し続けた最強の山王高校は、文字通り「負けを知らないチーム」でした。勝つことが当たり前とされ、そのすさまじいプレッシャーに打ち勝ってきた山王にとって、「負け」が「弱さの証明」でないことは自明の理です。

✔負けを「経験と糧」にするために不可欠なこと

 そんな山王は、間違いなく「負け」を経験とし、糧として、さらに強くなっていくことは疑いありません。山王の選手たちも、悔しくはあっても「恥」とは思っていなかったと思います。

 元々、いかなる対戦相手でも侮ることなく、100%で挑んできた山王高校です。誰よりも自分たちが強いことを知っている彼らは、自分たちを倒した相手が、どれほどすごいことをやってのけたかを、一番理解していたはずです。「名将のみ名将を知る」といったところでしょうか。

 「負け」の事実を経験と糧にするには、自分たちを負かした相手に敬意を払えるか、悔しさ以上に賞賛できるかにかかっていると考えます。そもそも、勝者に対して、僻みや妬みや侮蔑といった感情しか持ち合わせていないと、自分たちの敗因を正確に分析できないのは当然ですし、成長など見込めるはずもありません。

 ハイキューにせよ、スラムダンクにせよ、僻みや妬みや侮蔑と言った感情に凝り固まった、見ていて不愉快になるキャラクターは一切いません。いずれも、バレーとバスケを純粋に愛し、ひたむきに強くなるために「ただの部活」に全てを注いで打ち込むキャラクターしかいなくて、その姿に私たちは感動させられます。

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 その純粋に強くなろうとする姿、困難を克服していく姿、「負け」からの成長…あらゆる彼らの姿を通して、二次元の彼らは、心打たれる名言と名シーンと共に、さまざまなことを教えてくれます。この2つの作品に出会えたことは、とても幸せなことだと、心から思います…。


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