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アルセーヌ・ルパン『バール・イ・ヴァ荘』その1-恋と冒険のはじまり-

みなさん、こんにちは!

今回から、アルセーヌ・ルパンシリーズの『バール・イ・ヴァ荘』を取り上げていきたいと思います。

原作のフランス語タイトルは、『Barre-y-va』なので、フランス語の発音では「バリバ」に近いのではと思っています。

まず、バール・イ・ヴァというところが、フランスのどこにあるかといいますと、ルパンシリーズではお馴染みのノルマンディーです。

拙著とYoutubeでも、ノルマンデーを取り上げていますので、あわせてご覧いただけると嬉しいです。

https://youtu.be/FSC5MnO8NQY

原作では、タンカルビルとリルボンヌの間にある砂州が舞台となっていて、実際にGoogle mapで調べると「ラディカテル」という地名がありました。

事件が起こるノルマンディーのラディカル

しかし、バリバという地名はラディカテルの村から少し離れたセーヌ川に面した場所にあります。

しかも、『カリオストロ伯爵夫人』で登場する、「7つの修道院」の1つであるサン・ワンドリーユの修道院の近く!

実際、バリバ(黄色マーカー部分)とラディカテル(赤丸部分)は、このくらい離れています。

2019年にフランスを訪れて判明したのですが、ラディカルのモデルは、現在のサン・ジャン・ド・フォルビル荘園(hameau de Saint Jean de Folleville) です。

いつかサン・ジャン・ド・フォルビルも聖地巡礼してみたいですね。

今回の物語は、ルパンに助けを求めてやってきた女性が、ラディカテルの村に住んでいて、そこである事件が起こります。

「バール・イ・ヴァ荘」は、大部分がノルマンディーのラディカルを舞台としていますが、冒頭はパリのルパンの自宅から始まります。

冒頭で、珍しく(⁉)、ルパンの体型や生活習慣が描写されていて、彼の体つきや生活を垣間見ることが出来ます。

”スマートな体の線。がっしりとした肩幅。胸飾りのついたシャツの下で力強くはりだした胸部。”

そして、”贅沢極まりない気まぐれを満足させる時間と金のある、センスのよい人間だけが住むことの出来るアパルトマン”に住んでいることが分かります。

ある夜、ルパンがパリのアパルトマンに帰ってくると、なんと見知らぬ女性がいましたΣ(・□・;)

でも、この時ルパンは驚かなかったんですね~。

なぜなら、ルパンは自分はモテるという自負(実際、いろんな女性からチヤホヤされていた)があり、この女性も“自分に惚れているに違いない!!”と思ったんですね。

でも、この女性は、ルパンのことが好きになって部屋におしかけてきたわけではないのがわかると、”あなたがぼくに会いに来た理由は、多くの人達がシャーロック・ホームズをベーカー街の自宅に訪ねて彼に相談するのと同じというわけか!”と言って、シャーロック・ホームズを引き合いに出しながら、「何か相談事があって会いに来た」ことに気づきます。

すると、そこで1本の電話が鳴ります。

それはベシュからで、彼もルパンに助けを求めていました。

(ベシュといえば、以前記事にした「怪奇な家」で、事件をルパンと一緒に解決した刑事ですね。)

ベシュはリルボンヌとタンカルビルの間にある「ラディカテル」という村に数ヶ月前から滞在していて、ある事件を追っていた。

今日、若い娘が姿を消し、その娘の義理の兄が銃で撃たれて殺されたらしく、それでルパンに助けを求める電話をよこしたのだった。

近くでルパンの電話を聞いていた娘は“殺人”という言葉を聞いて気を失ってしまう。

ルパンは考えた末、車を飛ばしてラディカテルの村まで行く。

(ルパンは、いつも行動が素早い!”いつでも用意が出来ているスーツケース”を取り出して、パリから事件現場のノルマンディーまで、車を飛ばすんですから。)

そこで一旦、その女性(カトリーヌ)と別れ、ベシュが用意してくれた別荘に腰を落ち着ける。

ルパンはこれからはじまる冒険にわくわくしながら眠りにつく。

続く。

(追記:冒頭に、「ルパンが大好きなこと」も描写されているのですが、それが「寝る前の食前酒」。

ぼんやりとした夢の世界に漂いながら、その日に起こったことや、次の計画を思い浮かべたりするのが楽しみなんですね。

これは現代の人にも当てはまると思います。

まどろんでいるときに、ふと良い考えがひらめくんですよね。)

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