フォローしませんか?
シェア
青豆ノノ
2023年11月5日 10:25
「最後の旅にでてくるわ」婆さんはそう言うと、たいそう不格好な杖を手にした。「そんな杖で大丈夫?途中で折れてしまうんでない?」ずっと婆さんの世話をしてきた女が心配そうに尋ねる。「大丈夫大丈夫。じゃ、行ってくるで」婆さんは最後の旅に出た。しばらく歩いて、途中腹が減ると杖を齧った。「硬いけど美味いわ」婆さんの杖は、炊いた米を棒状に練ったものだ。婆さんは茶屋に寄った。温かい茶をい
2023年10月27日 14:20
珈琲とコーヒーの印象の違いについて考えながら、何気なく食器棚の扉を開けた。すると、珈琲カップとコーヒーカップの間に寝そべっている、手のひらに乗るくらい小さいおじさんと目が合った。「いつからそこにいるの」「さぁねぇ」「どうしてそんなにやる気無さそうなの」おじさんは起き上がった。そして僕に言った。「お前もどうせ、珈琲なんざ飲まんのだろ」おじさんは冷たい目をしていた。「飲むよ。スチャ
2023年10月17日 13:06
「最近はいつもこの時間だね」僕がよく行くレストランで働く馴染みの配膳ロボットは言った。「バイトを変えたからね。だけど、この時間の方がこの店は落ち着いているからいいね」22時を過ぎた平日のレストランでフロアを動き回るのは、二台の配膳ロボットだけだった。キッチンにこもってお喋りに夢中のアルバイトたちは、レジの近くに人が寄った時にしか姿を見せない。数ヶ月前から顔見知りになったこの配膳ロボットと僕