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読書感想

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本の感想や書評を書いた記事です。主に小説について書いています。一部のノウハウや個人的な話は有料にさせていただいています
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#読書の秋2022

筧裕介さん作『認知症世界の歩き方』

筧裕介さん作『認知症世界の歩き方』

この本は、認知症の方がどう周りを見ているのか、場面場面でどういった感情を抱きやすいか、通常の旅行に出かける感覚に置き換えながら考えさせてくれる本です。

今回は、小説の解説ではなく、番外編ということで、認知症になっている方の「行動の理由」を解説しているこの本について、ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。

認知症の方に直接インタビューした内容をもとに研究された内容が、直感的にわかりやすいイラス

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砥上裕將さん『線は、僕を描く』読書感想

砥上裕將さん『線は、僕を描く』読書感想

この小説は、大学生の青年が水墨画を通し、過去を受け容れながら自分の心と向き合っていく話です。

図書館でこの『線は、僕を描く』を見つけたので、ネタバレ含みつつ書いてみたいと思います。

大学生の霜介(そうすけ)はある日、絵画の展示のアルバイトに行き、水墨画の先生と出会うところから話が始まります。

霜介はつらい過去を抱え、人と上手く話せませんでしたが、黒と白の濃淡のみで表現された水墨画を見ながら、

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島木健作『煙』読書感想 古本と生活

島木健作『煙』読書感想 古本と生活

この小説は、古本の競りに出かけた青年が、人が持つ生活への執着心に驚きながら、働くことについて考えを深めていく話です。

主人公の青年である耕吉は、古本屋を営む叔父と生活していましたが、自分でお金を稼いでいないことに負い目を感じていました。ただ本は好きで、他の人とは一風違った本の良さが分かることに対し自信がありました。あるとき古本の競り市が開かれることを知り、耕吉が出かけていくシーンから話が始まりま

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岡本かの子『金魚撩乱』読書感想

岡本かの子『金魚撩乱』読書感想

この話は、美しく成長した幼なじみの真佐子に挑発され、華やかで目を引く金魚を作りだそうと、一心不乱に努力をする青年の話です。

小説の短編集を図書館で借りてきたんですが、その中にあった岡本かの子さんの『金魚撩乱(きんぎょりょうらん)』について、ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。

この小説は、もともと金魚を売り生計を立てている家に生まれた青年が主人公であり、幼なじみの女性にあおられ、金魚の交配

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