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Have you never been mellow?

そよ風に誘惑された。春でもなく、梅雨でもなく、夏でもない夜に表参道を闊歩するって凄く良い。新しく出来たハラカドの屋上なんて最高。絶妙に心地良いそよ風が、私の心を攫うように問いかけてくる。

"あなたは今まで一度もくつろいだことがないの?"
"心にゆとりがあった頃を思い出して、もっとリラックスしてみて。"

オリビア・ニュートン=ジョンの名曲と共に、私の心髄を撃ち抜いてきた。やっぱり、自分の野生的な本能に従って恋愛したい。こうだからこうとか、こっちの人の方が世間体的に自慢できるなとか、もうそんなのどうでもよくなった。

学歴とか、職業とか、年収とかどうでもいい。犯罪歴さえなければ中卒でも高卒でも良いし、どんな仕事をしていても良い。必要最低限の生活が出来るお金があれば、お金持ちである必要なんて全くない。マッチングアプリでは、それらのフィルターで検索を掛けたことは一度もない。

中身も普通であれば良い。取り繕うように店員さんに親切心を振り撒く人を選ぶ必要はない。第一、初デートでそんなことされたら逆に冷める。なんか、頑張ってるなって。私は、偽善者が大っ嫌いだから。絶対に普段そんなんじゃないし、わざとらしいリアクションとか一呼吸置きすぎでしょってなる。そんな男はいざと言うときに粗を隠すのが苦手で、浮気も大体すぐにばれる。かと言って、決して店員さんに横柄な態度を取って良いとかではない。ただ、取り繕ったような偽善者が苦手なだけ。尚、それを好む女はもっと苦手。

そして、1番大事なのは顔。絶対的に、顔。そよ風に誘惑されて、見た目の好みを追求し続けると心に決めた。もう、自分の心に嘘はつかない。同年代の友人に自慢したいがために、顔以外のスペック重視で男を選ぶことはもう止める。じゃないと、きっと付き合っててもふとした時に虚無になる。カエル化現象とはまた違う、なんかパラレルワールドにいる自分が俯瞰的に視て、「あっちじゃないよー!」って呼びかけてる感じ。

親切バズーカ男みたいな無駄な虚栄心なんて絶対にいらない。中身の質は少しばかり落ちても良いから、見た目の好みを追求し続けたい。叶姉妹が言う"good looking guys"を引き連れているノリと似ているのかもしれないけど、私はちゃんと1人の"guy"を心髄から愛したい。

でも、こう見ると私って総合的な理想値は高くないのかな。最高級のレベルを求めるものは、顔のみだから。「年収1000万以上がいいな〜」とか、よく分からない野望は絶対に持たないし、語らない。

夜の世界に長らく身を置くと、そんな野望は余計に雲散霧消になった。毎日のように何百万、何千万という札束を目にすると、それに対しての耐性ができてくるし、何よりも痛い程にその重みを感じてきた。

資産が何億、何十億あっても空虚感が満たされず、幸せじゃないお金持ちは幾人もいる。結婚生活での幸せがお金とイコールでもニアリーイコールでもないことを、彼らが切々と具現的な偶像として教えてくれた。それまで、恋愛よりも仕事を優先してきたことに後悔した日々もあったけど、そんな大切なことに気付ける唯一無二の環境に身を置けたのは何よりだった。夜の世界を離れた今でも、時折そう思う。

「年収1000万以上がいいな~」なんて気軽に言えるのは、一般職しか経験のない属性だと思う。また、件の親切バズーカ男を好む属性もそう。それ程のお金を稼げる人はどんな生活をしてて、日々どんな考えを持って生きているかなんて知る由もないだろう。その重みや感触を知っていたら、絶対にそんなことは言わないはずだ。いや、言えない。

見た目は衰えたら終わりだって言う人はよくいるけど、デフォルトが良ければその衰え方のクオリティも違う。お金は人を色んな欲に塗れさせるし、何に対しても取り繕うことを覚えさせる。そんなの悲しい。「あなたの見た目が好き」とはストレートに言えるけど、「あなたのお金が好き」とは絶対に言えないはずだから。「あなたが好き」の背後に、そんな悪魔みたいなのがいるって絶対に嫌だ。

取り繕うこと、偽善者でいることは、ただ悪魔という抽象的な偶像が満面の笑みを振り撒いているだけ。始めから毒々しい方が与えられた蜜もより、濃厚に有難く感じることができるはず。

そよ風がまた、大切なことを教えてくれたような気がした。やっぱり少女の頃の自分みたいに、何事にも直感に従って行動したい。そうすると、日々の彩りが変わり、何をするにもパッと気持ちが明るくなる。そして、気持ちが円やかに穏やかに、トキメキを忘れなくなる。

Have you never been mellow?

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