くらもちひろゆき

盛岡で演劇をしています。このページでは、過去に書いたものを備忘録的に上げていきます。新…

くらもちひろゆき

盛岡で演劇をしています。このページでは、過去に書いたものを備忘録的に上げていきます。新聞に掲載されたものや、劇団のパンフレットなどに書いた文章を徐々に時間をさかのぼっていくように掲載します。ときどき時系列が行ったり来たりします。

記事一覧

ある年の高校演劇県大会の講評

「横断歩道の真ん中で」  幕開けにジャンプしている熊田の高さにまず感心してしまいました。これは素人じゃないなと思いました。また、陽向の黒板消しのマイムがとても上…

ある年の高校演劇県大会の講評

「I WiSH…」  既成の戯曲を選ぶといっても、なかなか簡単ではないのは事実です。基本的に戯曲は売れないので、出版されたとしてもすぐ絶版になってしまうし、そんな発行…

長年演劇をやってきたわけですが

 何かいいことがあったかというと、それはもう数え切れないくらい良いことがあったわけで、それを具体的にどうこう言うと、あっという間に原稿用紙300枚くらいになっち…

あの年の盛岡2011パンフ文章

 あのとき、わたしたちはみんな当事者でした。街角で、学校で、仕事場で、劇場で、車の中で、自分の家で。そして、目撃者でもありました。直接その目で、テレビの中で、ラ…

ひねりだし

 今回の執筆は、これまでで最も苦労したと言っていい。というか、まだその苦闘は続いている。そろそろ終わりにする予定なのだが、まだ続いている。  というのも、とにか…

岩手公園ものがたりパンフ用文章

第2部あらすじ300字  知事官舎の敷地内にある車夫勘吉の家には、知事邸の女中や近所の女たちがいつも集まっている。ここ最近の話題は、荒れ果てたお城山を公園に、と…

禁煙フォーラム2019用台本   「タバコ男をやっつけろ」

  登場人物 タバコ男         先生         ナース 白鳥 タバコ男登場、頭にタバコのかぶり物をかぶっている。 タバコ男 ここが敵の基地、禁煙外来…

架空の劇団第17回公演「露と答へて~鬼の業平 仏の双六~」の企画書に書いたもの

コンセプト                               今回の作品は、架空の劇団が誇るもう一人の座付き作家、高橋拓による新作です。2013年11月に上…

寺シリーズ三部作あらすじ

「寺のショウソウ2001」 あらすじ とある初夏の昼下がり、この日は照妙寺にとってとても重要な日である。と言うより、住職の忠房(ちゅうぼう)にとって憂鬱な日であ…

寺3チラシ裏

お寺シリーズは、「寺で結婚話」を基本コンセプトに、1997年の「寺のショウソウ」から2001年の「仏壇のない家」、2006年の「はなやもめ」にいたる、一連の作品…

【第19回公演】第14回盛岡市民演劇賞大賞受賞「 風流怪談 露と答へて ~鬼の業平 仏の双六~」劇場版再演

 実は拓さんの作品を再演するのは初めてのことだ。わたしよりずいぶん多作な拓さんは、新作が次々に出てきてしまうので、再演をするヒマがなかった。今回そんなわけで、再…

架空の劇団が初の原作モノに挑む!

 その作品は第26回小川未明文学賞受賞作「スケッチブック~供養絵をめぐる物語」。作者のちばるりこさんは、盛岡在住の童話作家で、原作を読んだくらもちが、舞台化を切…

架空の劇団第26回公演「スケッチブック-供養絵をめぐる物語-」当日パンフレットの文章

 「スケッチブック-供養絵をめぐる物語-」を読んで、素直に感動した。と同時に「これは芝居になる」という直感が走った。その直感に従ってここまでたどり着いた。  恐…

壮大に悩む

 人類史をテーマに芝居を書こうと思った。  ここ三十年くらいの間で、人類史や日本人の成り立ちについて、新たなことがわかってきている。それは急速に進んだDNA鑑定の技…

劇評 ボーイズドレッシング♯07「うみをおりれば」作・演出/ベロ・シモンズ

赤いナポリタン 本紙編集委員 くらもちひろゆき  食卓に向かい合い、いつもより赤いナポリタンを食べる夫婦の姿。夫に殺されたはずの妻は、復讐なのかそれとも愛情なの…

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架空の劇団第21回公演「八本桜」当日パンフ 演出から

 毒のせいで誰も見る人がいない満開の桜。そんな風景からこの作品は発想されました。 梶井基次郎は、桜の樹の下には屍体が埋まっている、と言い、坂口安吾は、桜の森の満…

ある年の高校演劇県大会の講評

「横断歩道の真ん中で」

 幕開けにジャンプしている熊田の高さにまず感心してしまいました。これは素人じゃないなと思いました。また、陽向の黒板消しのマイムがとても上手でした。全員のセリフも問題なく客席まで伝わっていて、安心して観ていられました。
 事の発端は、紀香とゆなのケンカということになるのですが、幼なじみの二人が今ここでなぜケンカしなくてはいけなかったのか? という掘り下げが若干弱く、そのため

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ある年の高校演劇県大会の講評

「I WiSH…」

 既成の戯曲を選ぶといっても、なかなか簡単ではないのは事実です。基本的に戯曲は売れないので、出版されたとしてもすぐ絶版になってしまうし、そんな発行部数の少ない戯曲を配架している図書館も絶望的に少ないのが現状です。
 Amazonなどで探そうとしても、タイトルや作者名を知らないと検索できないので、それも簡単ではありません。なんとか戯曲を探すべく様々な手段を講じたのだと思います。

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長年演劇をやってきたわけですが

長年演劇をやってきたわけですが

 何かいいことがあったかというと、それはもう数え切れないくらい良いことがあったわけで、それを具体的にどうこう言うと、あっという間に原稿用紙300枚くらいになっちゃうので、ここでは書きません。
ホントは良いことなど書けないんじゃないか? と勘ぐられるのも癪なので、代表的な良いことひとつをあげておきましょう。これが果たして本当に良いことなのかどうなのかについては、みなさんの判断を待ちます。
まず、お金

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あの年の盛岡2011パンフ文章

あの年の盛岡2011パンフ文章

 あのとき、わたしたちはみんな当事者でした。街角で、学校で、仕事場で、劇場で、車の中で、自分の家で。そして、目撃者でもありました。直接その目で、テレビの中で、ラジオの声で、ネットの動画で。それだけでなく、傍観者でもありました。何かできることはないか、何かしなければならない、何かできるはずだ。実際に何かできた人もたくさんいたでしょう。しかし、何をしてもその隣には、自分の力の及ばない、ただ、見ているこ

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ひねりだし

ひねりだし

 今回の執筆は、これまでで最も苦労したと言っていい。というか、まだその苦闘は続いている。そろそろ終わりにする予定なのだが、まだ続いている。
 というのも、とにかく「人類史」をテーマにすると決めてしまったからだ。普遍的なテーマは、長く格闘するに相応しいモノなのだが、それを現実的に演劇に落とし込む作業は難しい。
 これまで、産婦人科のロビーや保育園、写真館といった、現実の生活で、何かの節目に関わる場所

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岩手公園ものがたりパンフ用文章

岩手公園ものがたりパンフ用文章

第2部あらすじ300字
 知事官舎の敷地内にある車夫勘吉の家には、知事邸の女中や近所の女たちがいつも集まっている。ここ最近の話題は、荒れ果てたお城山を公園に、という街中での噂話。勘吉の妻吟子は、知事への進言をお願いするが「女は家のことだけやっていろと」言われ激怒。同じ頃、女中頭の林歌子も、中級武士の家柄として、荒れ果てた城跡に心を痛めていた。さらに北条知事の下で、宴会が増えたため、子作りの暇もない

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禁煙フォーラム2019用台本   「タバコ男をやっつけろ」

禁煙フォーラム2019用台本   「タバコ男をやっつけろ」

  登場人物 タバコ男 
       先生 
       ナース 白鳥

タバコ男登場、頭にタバコのかぶり物をかぶっている。

タバコ男 ここが敵の基地、禁煙外来だな。我々タバコの存在を脅かすこんな禁煙外来をのさばらせとくわけにはいかん、ぶっつぶしてやる!

    ナース白鳥、タバコ男の背後から登場。

白鳥 どうなさいました?
タバコ男 うわあ!(やたらとびっくりする)不意打ちとは卑怯なや

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架空の劇団第17回公演「露と答へて~鬼の業平 仏の双六~」の企画書に書いたもの

架空の劇団第17回公演「露と答へて~鬼の業平 仏の双六~」の企画書に書いたもの

コンセプト                              
今回の作品は、架空の劇団が誇るもう一人の座付き作家、高橋拓による新作です。2013年11月に上演された「まるで血を塗ったような月が降りてくる~月下の一群 亜米利加編」以来、2年ぶりとなります。
これまで、高橋は、詩人をモチーフとした『月下の一群シリーズ』のほか、歌人や歴史上の人物などが登場する作品を得意としてきました。
今回は

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寺シリーズ三部作あらすじ

寺シリーズ三部作あらすじ

「寺のショウソウ2001」

あらすじ
とある初夏の昼下がり、この日は照妙寺にとってとても重要な日である。と言うより、住職の忠房(ちゅうぼう)にとって憂鬱な日である。と言うのも、まだ未成年の長女しずかが、付き合っている男、竹花を連れてくるからである。
ただ付き合っているだけならまだしも、事もあろうにしずかはその彼と結婚したいというのだ。しかも竹花は寺の檀家で、年は四十四。厄年も終わってしまったよう

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寺3チラシ裏

寺3チラシ裏

お寺シリーズは、「寺で結婚話」を基本コンセプトに、1997年の「寺のショウソウ」から2001年の「仏壇のない家」、2006年の「はなやもめ」にいたる、一連の作品です。
「寺」という、一般的には、人生の終焉を司る象徴の場所に「結婚」という、一見、寺とは縁遠い出来事を展開させ、普遍的な家族の物語を紡ぎ出そうとする試みでした。
幸い、浄土真宗大谷派「専立寺」の皆さんの献身的な協力に支えられ、「お寺シリー

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【第19回公演】第14回盛岡市民演劇賞大賞受賞「 風流怪談 露と答へて ~鬼の業平 仏の双六~」劇場版再演

【第19回公演】第14回盛岡市民演劇賞大賞受賞「 風流怪談 露と答へて ~鬼の業平 仏の双六~」劇場版再演

 実は拓さんの作品を再演するのは初めてのことだ。わたしよりずいぶん多作な拓さんは、新作が次々に出てきてしまうので、再演をするヒマがなかった。今回そんなわけで、再演してみることになったのだが、劇場版であることや、初演の寺の雰囲気などを考えると「初演のが良かった」というような声は必ず聞こえてくるだろうと予想している。とまあこんな風に言っとくと、そう言いづらくなるだろうという予防線を張っておく。
 役者

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架空の劇団が初の原作モノに挑む!

架空の劇団が初の原作モノに挑む!

 その作品は第26回小川未明文学賞受賞作「スケッチブック~供養絵をめぐる物語」。作者のちばるりこさんは、盛岡在住の童話作家で、原作を読んだくらもちが、舞台化を切望し、快諾いただきました。
 出版された作品の主人公は、小学6年生という設定でした。かなり大人びているなとの感想を持ち、作者に話を伺うと、読者ターゲットを小学生まで広げる都合で、書き直したとのことでした。そこで、原作の原作、受賞作を読ませて

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架空の劇団第26回公演「スケッチブック-供養絵をめぐる物語-」当日パンフレットの文章

架空の劇団第26回公演「スケッチブック-供養絵をめぐる物語-」当日パンフレットの文章

 「スケッチブック-供養絵をめぐる物語-」を読んで、素直に感動した。と同時に「これは芝居になる」という直感が走った。その直感に従ってここまでたどり着いた。
 恐らく、旧知でなければ手に取ることはなかったかも知れない作品だ。児童文学とは、わたしにとって、子どもの教科書や絵本の世界で、インスピレーションの一助や、劇中のパーツとして一部を拝借したりはするものの、原作として舞台化することがあるとは想像して

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壮大に悩む

壮大に悩む

 人類史をテーマに芝居を書こうと思った。
 ここ三十年くらいの間で、人類史や日本人の成り立ちについて、新たなことがわかってきている。それは急速に進んだDNA鑑定の技術革新が大きな理由のひとつで、ミトコンドリアDNAの分析によって、現生人類(ホモ・サピエンス)の起源がアフリカの一人の女性であることがわかったり、核DNAの分析により、白人や黄色人種は、ネアンデルタール人の血が混じっていることがわかって

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劇評 ボーイズドレッシング♯07「うみをおりれば」作・演出/ベロ・シモンズ

劇評 ボーイズドレッシング♯07「うみをおりれば」作・演出/ベロ・シモンズ

赤いナポリタン

本紙編集委員 くらもちひろゆき

 食卓に向かい合い、いつもより赤いナポリタンを食べる夫婦の姿。夫に殺されたはずの妻は、復讐なのかそれとも愛情なのか、ともに吸血鬼として生きて行くであろう未来を予感させている。音もなく降りてきた食卓の明かりが、2人だけを照らし出し、この作品は終了する。
 ここまで来て初めて「なるほど、吸血鬼という要素は必要不可欠なのだな」と得心がいった。途中までは

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架空の劇団第21回公演「八本桜」当日パンフ 演出から

架空の劇団第21回公演「八本桜」当日パンフ 演出から

 毒のせいで誰も見る人がいない満開の桜。そんな風景からこの作品は発想されました。
梶井基次郎は、桜の樹の下には屍体が埋まっている、と言い、坂口安吾は、桜の森の満開の下に人間の狂気を描きました。
 満開の桜は、限りなく「死」を連想させるもののようです。この作品は、一人の青年が八本桜の真ん中に迷い込むところから始まります。そこには、身近な人やまわりの人の死をきっかけに、そこからは誰も戻って来ない、とい

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