見出し画像

寺シリーズ三部作あらすじ

「寺のショウソウ2001」

あらすじ
とある初夏の昼下がり、この日は照妙寺にとってとても重要な日である。と言うより、住職の忠房(ちゅうぼう)にとって憂鬱な日である。と言うのも、まだ未成年の長女しずかが、付き合っている男、竹花を連れてくるからである。
ただ付き合っているだけならまだしも、事もあろうにしずかはその彼と結婚したいというのだ。しかも竹花は寺の檀家で、年は四十四。厄年も終わってしまったようなそんな年齢なのである。
実はその竹花、かつて忠房が教職にいた時代の教え子でもある。一年ほど会うのを拒否し続けていたのだが、相手が檀家ということもあり、ついに会う決心をとりあえずはしたのだが。

娘の結婚という出来事に右往左往する父忠房、喜んで賛成する母里見、忠房の教え子にして、里見の同級生、そしてしずかのお相手の竹花。ミュージシャンを目指しながら、挫折しそうな長男龍昇。そしてそれを取り巻く様々な人々の、企まざる滑稽さをそれぞれの立場と関係を綿密にひもときながら描きます。

「仏壇のない家」

あらすじ
時は1976年、とある春の昼下がりの照妙寺。先代住職の父忠良の四十九日の法要。
住職として初めて采配をふるったのが、父親の葬式だったというのは、幸か不幸か寺の宿命か。ようやく落ち着きを取り戻した、この寺の若き住職忠房は、父が亡くなると同時に、教員として勤務していたとある高校を辞めていた。
姉若葉は、隣県の寺に嫁いでいたが、父が亡くなった直後に帰郷し、そのまま現在に至るまで僧侶である夫、昭久の元へ帰っていない。妹千尋は、近所のこれまた寺に嫁いでおり、夫頼定はやはり僧侶である。
二日ほど前、古くからの檀家で、父忠良が最も気を遣っていた檀家「竹花家総本家」の頭領である雁治郎が亡くなった。通夜、火葬と気を張る仕事を続けて三日目、この日は父の四十九日である。集まったお寺一族とともに法要を順調に済ませながら、忠房には大きな気がかりが一つあった。
それは数日前、電話をかけてよこした教え子の菊池里見のことである。その電話で彼女は「もしかしたら妊娠したかも知れない」と言ったのである。その相手は、他ならぬ忠房自身だった。教師、僧侶という二つの聖職にありながらそんなことになってしまった忠房は、どのような決断を下すか、実は未だ迷っていた。優柔不断だったのである。
そこへきて竹花家総本家の大きな葬式が入ってしまい、寺の仕事に忙殺されるのをいいことに、考えるのを避けていたのである。そして四十九日の法要を終えた一時の休息時間に一本の電話がかかってくる。その相手は菊池と名乗る男であり、忠房を呼び出しておきながら、一言も話さずに電話を切った。

「仏壇のない家」は、教師を辞した若き住職忠房と教え子里見の関係を中心に、それを取り巻く人々の小さな物語を丁寧に描写してゆきます。夫婦関係が危うくなっていると思わせる姉夫婦の物語、あるいは近くの寺に住む幸せな妹夫婦の物語、そして寺に住み着いている謎のアメリカ人や里見の同級生でのちの娘婿竹花道高、近所の老檀家中野ちえなどの物語。多彩な登場人物の微細な感情の揺れを「寺のショウソウ」同様淡々と描き、表象に見え隠れする人間の真相に迫ります。

「はなやもめ」

あらすじ
2036年あたりの照妙寺。初夏。
照妙寺の住職、龍昇には三人の娘がいる。しかし、妻は二十年ほど前に寺を去り、男やもめで娘たちを育ててきた。
この日は、長女沙羅の夫、周辺事態に出動し、殉職した駿の月命日である。檀家でもあった駿の墓は、ここ照妙寺にある。沙羅は夫の死後、実家に戻ってきてはいるものの、名字はそのままで、月命日には墓参りを欠かさずしている。そんな日々も5年の歳月が過ぎようとしていた。
一緒に暮らす大伯母は齢100歳にして存命だが、寝たきりとなっており、毎日ヘルパーの青年がやってきていた。いつの頃からか、その青年は、沙羅に思いを寄せるようになり、当の沙羅もそれに答えたいと思っていた。しかし、周辺事態で殉職した英雄の未亡人という足かせが、沙羅を縛り付けていたのである。

隣の高念寺では、週末に長女が仏前結婚式を上げる予定になっていたのだが、檀家総代が急死したため、急遽葬儀を行わなければならなくなった。宙に浮いた結婚式を解決するべく、高念寺の住職は照妙寺を訪れた。娘の結婚式を照妙寺で出来ないかと相談しに来たのだ。司婚者(神前結婚式の神主、教会の結婚式の神父のようなもの)を頼まれていた龍昇は、快く場所を提供する。しかし、ブライダル業者が入っていないため、進行に不安が残っていた。そのため、急遽リハーサルをしてみることになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?