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ひねりだし

 今回の執筆は、これまでで最も苦労したと言っていい。というか、まだその苦闘は続いている。そろそろ終わりにする予定なのだが、まだ続いている。
 というのも、とにかく「人類史」をテーマにすると決めてしまったからだ。普遍的なテーマは、長く格闘するに相応しいモノなのだが、それを現実的に演劇に落とし込む作業は難しい。
 これまで、産婦人科のロビーや保育園、写真館といった、現実の生活で、何かの節目に関わる場所で展開する作品を多く書いてきたので、どうも自分の経験したフィールドに落とし込まないと前に進まなかったのだ。
 そして「人類史」に相応しいフィールドが見つけられなかった。ずっと考えていたところに、中村一基先生の訃報があり、その後の「語る会」の企画を手伝ったりするうちに、もうこうするしかない、と、迷路に踏み出すような気持ちで書き始めた。
 日々格闘するうちに、これは中村先生に書かせてもらってるなぁと、しみじみ感じるようになった。キャストにもそれが現れていて、今回の出演者は、これまでになかったユニークな布陣となっている。
 大きな構想と小さくて大切な縁を結んで、この作品はできあがる。ありがたいことである。そしてやはりというか何というか「人類史」はシリーズものとして今後も格闘すべき題材となった。

2018年9月28~30日 架空の劇団第20回公演「生還」の当日パンフに掲載された文章

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