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結成20周年ロックバンドの言葉を分類して眺めてみたの巻

私の好きなロックバンド「UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)」が2024年に結成20周年を迎えました。めでたい。色んなバンドを見てきましたが、脱退や大きな休止もなく長く続くことは尊い。素晴らしい。ブラボー!(突然のイタリア語)

(トップの写真は特設サイトから拝借しました。自分のnoteに公式の写真使うの気が進まないんだけど内容にピッタリだし良いお写真だし許して。Violaさん📸いつも素敵な写真をありがとうございます。)

記念に、彼らの20年を振り返るべく歌詞の分析っぽいことをしてみました。ここ最近、歌詞のモードが変わってきた部分もあるのでは?とうっすら肌で感じており、集計したら面白い気づきがあるかもしれないという興味本位です。

分析には「KH Coder」というソフトの無料版を使用しました。歌詞分析でも多数利用されている非常にメジャーなソフトです。有料版もあります。

対象曲は、インディーズ時代を含むアルバム・シングル(カップリング含む)全曲。リピートで同じ単語が何度も出現しますが、全てカウント対象としました。 文中で歌詞を抜粋していますが、タイトルが長い曲は短縮して表記しています。1人での手作業のため、完璧ではないかもしれませんが、ご了承下さい。

それでは張り切ってどうぞ!(まあまあ長いよ)


出現回数が多いワード

🔹「君」「僕」が圧倒的に多い

・ただし他バンドにも多い傾向

青=人物 黄色=特徴的

「君」(439回)と「僕」(316回)が圧倒的に多いですが、この傾向はユニゾンに限りません。BUMP OF CHICKENの歌詞分析をしている方のブログを見たところ、トップ3は「僕・君・誰」で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONも「君・僕」、aikoは「あなた・あたし」が上位2位だそうです。大抵の歌詞はこういった代名詞が上位に来る可能性が高そうです。

一人称は「僕」の他、「私」「俺」「I」「ワタシ」「オレ」がありました。レアなのが「拙者(サイレンインザスパイ)」と「あたし(等身大の地球)」です。「拙者」はスパイだからなのだと考えられますが、「あたし」はどこから出て来たのか気になりますね。

独断で特徴的だと思った単語を黄色にしています。「世界」「街」「生きる」「大事」「回る」「嫌い」「運命」「名前」「魔法」「大丈夫」などは、ユニゾンっぽいイメージ。

🔹名詞は「世界」がトップ

・時と共により広い意味に

名詞カテゴリーでは「世界」がダントツ。確かに登場頻度が多い印象があります。初期から現在まで、まんべんなく使用されていました。

丁寧に見て行くと、時期によって「世界」の持つ意味が分類できました。世界をあまり良いものとして捉えていない傾向が、主に初期に強く見られます。

🔹世界をあまり良いものとして捉えていない
「世界の音も聞こえません(センチメンタルピリオド)」
「嫌いだ、こんな世界は(さよなら第九惑星)」
「君は固まった世界をメロディーに変えた(サーチライト)」
「そうやって世界の常識がひっくり返るのを待っている(水と雨について)」
「今の世界を少しだけ楽しくできるよ、存外に(MR.アンディ)」
「こんなにも世界は汚くて こんなにも世界は暗いのに(いつかの少年)」
「まわるまわる世界も もう いっそ 混ざり合ってしまえばいいのに(コーヒーカップシンドローム)」
「帰ろう世界へ 右も左もあったもんか 現実なんてこんなもんだ(23:25)」
「その世界を救いたいがための狂言職(ギャクテンサヨナラ)」
「そして全てがその言い訳でまかなえるぐらいの世界だから(カウンターアイデンティティ)」
「世界が変わる夢を見たよ(3 minutes replay)」
「君を泣かせる世界の方がおかしいよ(プロトラクト・カウントダウン)」
「幾千の声が惑わす世界は 遠くが濁って見えるけど(UNOストーリー)」
「無駄なもんがあるならまず自分が消えちゃう世界(ラブソングは突然に )」
「世界が嫌いでちょっと好き(君はともだち)」
「世界が壊せそうな気がするから叫んでみる(セレナーデが止まらない)」

一部を抜粋

主に中期以降になると、初期に比べてフラット~少し良いものにとらえているというか、"君がいる世界は素晴らしい"というニュアンスが強くなっているように思います。

🔹君がいる世界は素晴らしい
「例えば君が真ん中な世界とかがあって / 現実に負けないスケールで新世界が描けるのなら(箱庭ロック・ショー)」
「そしてまたその世界が無限に広がってく(流星前夜)」
「ちょっとだけ世界と仲良くなったあなたは(フルカラープログラム)」
「君がダイヤモンドを壊して いっそ世界中に散りばめちゃってよ(デイライ協奏楽団)」
「君がいない世界ではきっと 明日も明後日も泣いているよ(きみのもとへ)」
「ほら、世界は絶対に どうしようもないはずの僕と君を(ライドオンタイム)」
「内緒 溢れて 世界は輝いてるから(僕らのその先)」
「君が好きなこの世界を 最後まで愛せるように(未完成デイジー)」
「君がどっか行っちゃうなら 世界なんて敵にして(さよならサマータイムマシン)」
「僕の世界に君が現れたこと(like coffeeのおまじない)」
「行き着いた先に何も無くても 息をする僕らは構わない 世界が始まる音がする(シャンデリア・ワルツ)」
「愛が世界を救うだなんて僕は信じてないけどね  今 目の前の君が明日を生きれるくらいには(桜のあと)」
「ああ 今世界に一人だとしたら 溢れ出すリズムは君のもの( instant EGOIST)」
「君の声が暗いはずのこの世界 照らすだろう(黄昏インザスパイ)」
「金色に揺れる太陽 照らす世界でもうちょっと 生きてみようと思ったのは君のせいかも(君の瞳に恋してない)」
「君がどんな風に世界と踊るのか(10%roll,10% romance)」
「あなたの世界で息をさせて(Dizzy Trickster)」
「まだ世界は生きてる 君が泣いたって生きてる(Phantom Joke)」
「君と同じ世界に居たい(恋する惑星)」

一部を抜粋

そして近年になればなるほど、「世界は僕が救うしかない」「世界は七色になる!」と断言したり、「こんな世界が楽しすぎちゃっ」たり、かなりポジティブ要素が強めです。世界を良いものとして捉えているように見受けられます。

また、夢の世界で恍惚したり、異世界や映画の世界が登場したり、複雑な気持ちを世界のせいでありますようにと言ってみたり、より広い意味で世界を表現するようになっているのではないでしょうか。

🔹世界=良いもの  /  より広い意味での世界
「そうして世界が明るくなった / 世界はこんなにも綺麗な肖像(ガリレオのショーケース)」
「まるで世界の祝福だね(三日月の夜の真ん中)」
「まだ多分世界が好きで(to the CIDER ROAD)」
「広い広い世界もわからないようなこと 探し求め続けるの なんか難解そうさ(光のどけき春の日に)」
「世界の真ん中はここだよ(ノンフィクションコンパス)」
「世界中を驚かせてしまう夜になる / 世界中を、驚かせ続けよう(シュガーソングとビターステップ)」
「今は ちゃんと世界の音もちょっとは聞こえてるよ(プログラムcontinued)」
「世界が終わったって来世で存分にかき回そう(アトラクションがはじまる)」
「夢の世界で恍惚して 都合よくなってモードなムード(静謐甘美秋暮抒情)」
「結局世界は僕が救うしかない(フィクションフリーククライシス)」
「こんな世界が楽しすぎちゃって(世界はファンシー)」
「世界は七色になる!(101回目のプロローグ)」
「ナノサイズで世界を描く あちこちコネクトする(ナノサイズスカイウォーク)」
「これが世界だっていうらしい(スペースシャトル・ララバイ)」
「あれは異世界のエントランス(City Peel)」
「今日も世界が盛大に忙しい(フレーズボトル・バイバイ)」
「映画の世界みたいに free(いけないfool logic)」
「じゃあ世界は平穏です / これもきっと世界のせいでありますように。(あまりに写実的な)」

一部を抜粋

🔹田淵智也インタビュー「世界は変わる」

歌詞のほとんどを手掛ける田淵は、過去にインタビューで以下の通り語っていました。

― 田淵くんってインタビューやライヴでよく“世界は変わる”っていうことを話していますが、その世界は具体的に言うと?

田淵:なんか、あとひとつスイッチが入れば簡単に世界が変わるような気がしていて。そのスイッチはきっかけみたいなもので、例えばオリンピックで浅田真央がトリプルアクセルを決めるっていうことかもしれないし、村上春樹が『1Q84』の続編を出すだったり。そんなきっかけひとつで世の中は変わるというか。
表現者は何かをすることで、それで世の中が変わるって思ってないといけないと思うんです。世界が変わるっていうのは決して大きなことではなくて、誰かのきっかけになればいい。具体的にリスナーに対して言うならば、自分で頑張れっていうことを言いたいな。そのきっかけがユニゾンだったらすごくうれしいという感じですね。誰かの目が覚めたり、夜が明けたり、何かのきっかけになればいいなと思ってやってます。

2010年 OKmusic「JET CO.」インタビュー

ちょっとしたスイッチで世界は変わるんだよ、というメッセージ性を心地よく感じるファンも多いと思います。そんなユニゾンの歌詞に多数登場する「世界」の持つ意味が、時と共によりポジティブで広い意味に変化しているのが面白い。
「世界の音も聞こえません(センチメンタルピリオド)」
「今はちゃんと世界の音もちょっとは聞こえてるよ 聞こえてるけど 時々は聞いていないフリ(プログラムcontinued)」
「今はちゃんと世界の音もちょっとは聞こえてるよ 聞こえてるけど 大事なものはもっとある(プログラムcontinued(15th style) )」
この3つを比較するとわかりやすいですが、田淵にとっての「世界」が少しずつ変容していることが読み取れます。

🔹形容動詞は「幸せ」がトップ

・最近では使い方に変化も

「幸せ」も初期から最新まで、幅広く使われています。

「舞い降りるよその時が来れば、幸せが(スノウアンサー)」
「この町が幸せになって(kid, I like quartet)」
「それだけで幸せだよ 僕らのその先は、あと…(僕らのその先)」
「幸せと同じ数の痛み(未完成デイジー)」
「やがて迫った夕焼けが人一人を幸せにする(リニアブルーを聴きながら)」
「幸せ不幸せ 両方を空にかざして(さわれない歌)」
「小さな幸せを道で拾った(クロスハート1号線)」
「何も起こらなくても 毎日は幸せだよ(三月物語)」
「君の幸せ公式 多分解き方知ってるけど(8月、昼中の流れ星と飛行機雲)」
「残念だけど どの道も幸せが見つかってしまうかもな(たらればわたがし)」
「ちゃんと幸せになる準備もしてるよ(101回目のプロローグ)」

一部を抜粋

ただし、最近はストレートではない使われ方をしているのだなと気づきました。「fake town baby」と「Phantom Joke」は世界観強めなアニメのタイアップのせいもあると思いますが、曖昧だったり疑問視されたりしています。ストレートな意味の「幸せ」を使うことに飽きたのか、「幸せ」の定義を問い直したいのか。

「幸せになるパーセンテージ 忘れちまったよ(fake town baby)」
「すぐこんがらがって悩んで 幸せなはずがもやついて(春が来てぼくら)」
「虹色に光る幸せ そんなものがなくても(君の瞳に恋してない)」
「全部嫌になった それさえも幸せな結末だ(Phantom Joke)」
「幸せになれる本当に 本当に…本当に?(アンチ・トレンディ・クラブ)」
「振られた賽の目が幸せなはずないか(あまりに写実的な)」

一部を抜粋

🔹形容動詞は「大事」「大切」も頻出

・対象は主に物や事

「大事」「大切」も頻度が高い。では何が"大事"なのかなと見ていくと、物や事が多い。大事なこと、大事なもの、約束、ルールブック、言葉、お金、話題。それから場面や場所。意外と人物に関することは少なかったです。

🔹大事
「大事なことを声にして呼べるような(5分後のスターダスト)」
「また大事なとこで模範解答がわからなくなって(キライ=キライ)」
「寝ぼけたままでも関係ない 大事なのは心の奥だ(3 minutes replay)」
「何度も言うよ 大事なことだから ねえ(誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと)」
「僕の世界に君が現れたこと 理由は無いけどきっとそれが一番大事なことって 気づいたんだよ(like coffeのおまじない)」
「その片隅のほんのちょっと けど大事なスペースに君がいて欲しい(クロスハート1号線)」
「君だけが持ってる宝物 大事に呼ぶよ 大切でほら 譲れない名前を(君はともだち)」
「だからこそ今 大事な約束をしよう(シャンデリア・ワルツ)」
「退屈な街と生きてくルールブックはそれなりに大事だけど(instant EGOIST)」
「大事な言葉は多分まだちゃんと口に出せないから(8月、昼中の流れ星と飛行機雲)」
「いや違うな友達だって、美味しいものも、お金だって大事か(フライデイノベルス)」
「ただ大事な事がまだ一つだけわかってない 依然信号待ち(オーケストラを観にいこう)」
「大事なもの失った時 壊れちゃってしまってしまった気持ちは(君の瞳に恋してない)」
「悲しくなることは伏せておくよ、いいかい? それを探すのが 君にとってきっと大事なことなんだ(たらればわたがし)」
「瀕死のセンスも気にしない ケツを蹴り上げたらまだ出るから だけど休息だって大事でしょ(ここで会ったがけもの道)」
「運命なら過去に置いて来たから今になって大事そうに語らないで(マーメイドスキャンダラス)」
「話題はそんなないから 大事にしなくちゃ(弥生町ロンリープラネット)」
「耳からスパゲッティで肘で茶沸かすわ 大事なことはそう 自分で決めようぜ(Nihil Pip Viper)」
「教科書に載せたいくらい大事なやりとりだからね(放課後マリアージュ)」

🔹大切 / たいせつ
「見つかっちゃって不安になる 僕の大切な気持ちは(スカースデイル)」
「毎日を大切に彩っていくデイジー(未完成デイジー)」
「大切な事 早押しでも三択でも答えられない(黄昏インザスパイ)」
「浮かぶ大切な誰かに悲しい想いはさせない方へと(春が来てぼくら)」
「理由はうまく言えない方が たいせつの理由になれそうだ(弥生町ロンリープラネット)」

一部を抜粋

上記から、人物に対する"大事・大切"を抜粋。

「僕の世界に君が現れたこと 理由は無いけどきっとそれが一番大事なことって 気づいたんだよ(like coffeのおまじない)」
「その片隅のほんのちょっと けど大事なスペースに君がいて欲しい(クロスハート1号線)」
「君だけが持ってる宝物 大事に呼ぶよ 大切でほら 譲れない名前を(君はともだち)」
「いや違うな友達だって、美味しいものも、お金だって大事か(フライデイノベルス)」
「浮かぶ大切な誰かに悲しい想いはさせない方へと(春が来てぼくら)」
「理由はうまく言えない方が たいせつの理由になれそうだ(弥生町ロンリープラネット)」

初めての武道館で、斎藤宏介がMCで「僕たちが目指してるのは、僕らにとって大事な皆さんの大事なバンドでありたいということだと改めて思いました」と話したことがとても印象に残っています。「大事な皆さん」というワードのインパクトが強く、歌詞も人を大事にする記述が多いようなイメージだったのですが、そこまで多くはありませんでした。

個人的に「like coffeのおまじない」の「僕の世界に君が現れたこと 理由は無いけどきっとそれが一番大事なこと」という言い回しが好きです。「不思議の国のアリス」みたいな曲の世界観とマッチしていてキュートな表現だなと思います。

同様に「僕の声を初めて君がキャッチした(スカースデイル)」もお気に入りです。いずれも広義のボーイ・ミーツ・ガールであり、どこか童話的でファンタジック。前者は田淵、後者は宏介と作詞家は違いますが、通じるものを感じます。

🔹形容詞は「悲しい」がトップ

・必ずしもそのままの意味で使っていない
・「星が悲しい」は特徴的

「悲しいこと全部ほっぽってさ 身体が軽くなるんだ(空の飛び方)」「悲しい事でも何でもない その度に君は大人になる(シャンデリア・ワルツ)」など、自分や君の悲しい気持ちを歌っている曲が多い。

一方で、「浮かぶ大切な誰かに悲しい想いはさせない方へと(春が来てぼくら)」は、"大切な誰か"という特定の対象の悲しみであることと、「星が悲しい理由をみんなも少しわかってほしいのさ(恋する惑星)」は、"星が悲しい"という比喩で、特徴的な使われ方でした。特に"星が悲しい"は、ユニゾンならではの表現のように思います。星が悲しい理由って何でしょうね。

また、「悲しい」をそのままの意味で使うだけではなく、打ち消したり(「だめだ そんな悲しいこと言うな(Phantom Joke)」)、「悲しい」を受け止めてプラスに変える傾向(「今日の悲しみが明日を拒むなら 栞をつけて閉じて」(mix juiceのいうとおり))がありました。

ユニゾンの歌はネガティブと言うよりはポジティブです。なぜ「悲しい」の使用頻度が高いのかと言うと、打ち消したりプラスに変えているからでした。

🔹「悲しい」そのままの意味
「繰り返す反実仮想は 悲し虚しで離れ離れ(きみのもとへ)」
「夕暮れ 泣き虫 君はどこだ 悲しい事があるのです(Miss.サンディ)」
「ぐるぐる悲しくて堪らないの裏で わかってもらいたくて堪らない(君はともだち)」
「悲しいなら泣いたらいいし 楽しいなら笑えばいいし(東京シナリオ)」
「星が悲しい理由をみんなも少しわかってほしいのさ(恋する惑星)」
「些末な言の葉で悲しくなったよ(あまりに写実的な)」

🔹「悲しい」を打ち消し
「『いつか終わる、悲しみは』どうか忘れないでよ(フルカラープログラム)」
「現実はそんなに悲しいものかしら コンビニに売ってるのに(ガリレオのショーケース)」
「悲しくないのに涙が出るのは きっと気まぐれ模様(気まぐれ雑踏)」
「例え全て失ってもいいよ 別に悲しくはないのさ(三日月の夜の真ん中)」
「悲しいは微塵すら無いのだけど(Dizzy Trickster)」
「浮かぶ大切な誰かに悲しい想いはさせない方へと(春が来てぼくら)」
「悲しくなることは伏せておくよ、いいかい?(たらればわたがし)」
「だめだ そんな悲しいこと言うな(Phantom Joke)」

🔹「悲しい」をプラスに変える
「悲しいはずの一つ一つがキラキラ光った日曜日(5分後のスターダスト)」
「悲しいってさ その声ももうどこか遠くに(スノウリバース)」
「悲しいこと全部ほっぽってさ 身体が軽くなるんだ(空の飛び方)」
「嬉しいこと全部と悲しいこと全部を 足して2で割って日常に返してく(夜が揺れている)」
「悲しい事でも何でもない その度に君は大人になる(シャンデリア・ワルツ)」
「悲しい事があるなら 気の置けない仲間におすそわけもいい(三月物語)」
「悲しいことは断続にある だけど容易に投げ出したりしない(アトラクションがはじまる)」
「今日の悲しみが明日を拒むなら 栞をつけて閉じて」(mix juiceのいうとおり)
「悲しくてgrumble 即座に同意得てリセット(君の瞳に恋してない)」
「悲しいけど与奪は決められる(世界はファンシー)」

ひらがなの副詞

ひらがなで構成される「副詞」の出現回数(上位)です。個人的に「ユニゾンっぽい」と感じた「ちゃんと」「どうせ」を詳しく見てみました。

🔹ちゃんと

「ちゃんと=すべきことをきちんと行うさま」は、目的の遂行を強調します。とりわけアルバム「Ninth Peel」で頻繁に使われており、最新作に力強さを感じる(個人的感想)要素の一つなのかもしれません。

🔹ちゃんと○○する(強い意志)
「昨日までをちゃんと愛して(オリオンをなぞる)」
「今はちゃんと世界の音もちょっとは聞こえてるよ(プログラムcontinued)」
「鼓動はちゃんと聞こえたから 同じ様に響かせて今日まで来た(RUNNERS HIGH REPRISE)」
「何度目だって構いはしないからね ちゃんと歩くよ(静謐甘美秋暮抒情)」
「席はちゃんと空けておくから 間に合わないなんてないんだよ/だからちゃんと走らなくちゃ(Dizzy Trickster)」
「せめて君ぐらいの声はちゃんと聞こえるように(君の瞳に恋してない)」
「ちゃんとこの足が選んだ答だから、見守ってて(春が来てぼくら)」
「そうやって鼓動を待つことにしたよ ちゃんと幸せになる準備もしてるよ(101回目のプロローグ)」
「ナノサイズで飛び回ってく 君の目をちゃんと見てる 無敵の予感だ!(ナノサイズスカイウォーク)」
🔸「まるで万華鏡 ただ眺めてるだけじゃつまんない ちゃんと回さなきゃね / どうしたいかは ちゃんと決めてくれよ(スペースシャトル・ララバイ)」
🔸「毎日をちゃんと諦めないでくれ(ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ)」
🔸「人生の意味がちょっとだけ変わった感じも ちゃんと僕は受け止められるよ(City peel)」
🔸「今をちゃんと見ないなら もったいないまま終わっちゃう(フレーズボトル・バイバイ)」

🔸=「Ninth Peel」収録曲

一方で、「ちゃんと○○できない」のような否定的な使われ方もしています。ただ「できない」のではなく、「ちゃんと○○できない」という表現にすることで、よりもどかしさが強調されるような印象です。

🔹ちゃんと○○できない(もどかしさ)
「大事な言葉は多分まだちゃんと口に出せないから(8月、昼中の流れ星と飛行機雲)」
「曲がりくねった道のりだったけどちゃんとさ 今はちゃんとさ ほらね 君へと 向かってる・・・はず(8月、昼中の流れ星と飛行機雲)」
「『今日が、ずっと続くの?』 意味を僕はちゃんと汲み取れたか わからなくて(きみはいい子)」
「オーケストラを観にいこうよ まだちゃんと声にできないから(オーケストラを観にいこう)」

本当は「大事な言葉をちゃんと口に出したい」「ちゃんと君へ向かいたい」「意味をちゃんと汲み取りたい」「ちゃんと声にしたい」わけです。「ちゃんと」を併用することで、作り手の誠実な思いがより強く伝わってくるような効果があります。

🔹「ちゃんと幸せになる準備もしてる。」

20周年特設サイトのコピー「ちゃんと幸せになる準備もしてる。」は「101回目のプロローグ」からの引用ですね。”ちゃんと~なる”という強い意志を感じます。
しかしよくよく考えると、「幸せになる」ではなく「幸せになる準備」とワンクッション置いているところが引っかかります。他にも「君の幸せ公式 多分解き方知ってるけど(8月、昼中の流れ星と飛行機雲)」も「残念だけど どの道も幸せが見つかってしまうかもな(たらればわたがし)」も、まだ幸せには辿り着いていない状態です。

「幸せ」の項目で触れましたが、「幸せになれる本当に 本当に…本当に?(アンチ・トレンディ・クラブ)」「振られた賽の目が幸せなはずないか(あまりに写実的な)」など、最近は「幸せ」に対してストレートな言い方をしていません。ちゃんと準備ができたら、「幸せ」の使われ方もまた変わってくるのでしょうか。

ちなみに「ロックバンドは、やっぱり楽しい。」のキャッチコピーの方は、1st ALの帯「ロックバンドは、楽しい。」の進化系であるところがニクイ。

🔹どうせ

「どうせ」はネガティブな文脈として使われることがほとんどです。「どうせ無理」「どうせ無駄」など。
逆に、ポジティブな意味で使っている曲もあります。「どうせなら◯◯しよう」「どうせダメなんだから◯◯しちゃおう」など。

🔹ネガ
「期待斜め45度 放っちゃう どうせ意識しても無駄なんだよ(fake town baby)」 
「後悔したまま死ぬかもしれないし 保証なんかどうせ役立たず(君の瞳に恋してない)」 
「散々迷ったってどうせ夏影のせいにしてしまうくせに(夏影テールライト)」 
「見つけられない限りはどうせタイムオーバー(カオスが極まる)」 
「書き留めておかなくちゃだけど どうせ再現できない(放課後マリアージュ)」
「どうせこっちから見りゃ全方位 落とし穴だらけだろ(恋する惑星)」 
「言葉にしだしたら どうせラベル貼られて 他のあれこれと同じにされるよな(もう君に会えない)」

🔹ポジ
「どうせ昨日で終わりを告げた情景 続いていけ弾道ランナー(カラクリカルカレ)」
「どうせなら、この際なら 虹を作ってみよう(フルカラープログラム)」
「負けない どうせ君のことだから(黄昏インザスパイ)」
「どうせなら森羅万象サンプリングしてみたい(サンポサキマイライフ)」
「どうせ失敗はするだろうから その時は凝りもせず感傷であれ(ぼくたちのしっぱい)」
「どうせ一聴じゃ読み解けないから 頬を出せ(世界はファンシー)」
「だけどどうせいつか終わるから 毎日をちゃんと諦めないでくれ(ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ)」
「どうせ暇つぶしだから 行き着いたとこで落としどころにしよう(フレーズボトル・バイバイ)」

一部を抜粋

私はポジティブな「どうせ」の使い方が好きです。特に「黄昏インザスパイ」「負けない どうせ君のことだから」が好きなのです。

ユニゾンのファンになって間もない2015年頃、当時少しメンタルが落ちていました。ファンになりたてなので、少しずつ過去のアルバムを聞いていたのですが、「今日が辛いから 明日も辛いままだなんて思うな」と流れてくる歌詞を聞いて、「まあ、そうだよねぇ」なんてローテンションで頷いていたら、「負けない どうせ君のことだから」って言われてびっくりして撃ち抜かれて涙が出て来ました。予想外のフレーズで目からウロコだったのです。

後に自分のメンタルブロックを調べてもらった時、「あなたは『どうせ私なんて』と思っている」と指摘されたことがあり腑に落ちました。自分の中でネガティブな「どうせ」を、"君"(この場合は私)の力を信じてくれる意味で使うんだと思って、自分が肯定されたようで嬉しくて感動したのだと思います。

また、sg「10% roll, 10% romance」のCDの帯では「4年後もどうせ君が好き。」というフレーズが使われていました。こちらもポジの意味ですね。これについては当時「あざといw」と思った記憶です。

全然関係ないけど「黄昏インザスパイ」って、「SPY×FAMILY」のロイドさん(コードネーム:黄昏)思い出してにやりとするよね。私ロイドさん好きだから。「SPY×FAMILY」の方が後だから、たまたまだけどね。

分析ソフトで拾えなかったワード

以下はソフトでは抽出されなかったのですが、「このフレーズもけっこう使われているのでは?」という私の独断でワードをピックアップし、手動で調べました。

🔹「間違ってない」

分析ソフトで「間違う」は出てくるのですが、「間違ってない」が抽出できず、手動で調べていくつかに分類しました。

🔹「俺は間違ってないはず」という自己暗示
「何が正しくて、何が間違っているのか 全部わかんないが、問題ない(マスターボリューム)」
「また無駄になってる 無駄になってる 間違ってないはずなのに(いつかの少年)」
「答えがちょっと見にくいもんなんで 間違ってたって間違っちゃいないよ(23:25)」
「それぞれの理由を胸に僕らは何度目かの木漏れ日の中で 間違ってないはずの未来へ向かう(春が来てぼくら)」
「飽き足らぬ初期衝動でフェスティバル 間違ってないのなら ないのなら 見逃して!(Micro Paradiso!)」

🔹自分の間違いを肯定
「僕の意地と誇りなんてそんなもんだよ 間違いだらけでもしょうがないや(夢が覚めたら)」
「だよね  僕が間違っていた / 間違っていないはずなのに 迷子みたい 情けないな(101回目のプロローグ)」 
「ナノサイズで世界を描く 少し間違えてしまったら  君が電子になる!?(ナノサイズスカイスカイウォーク)」

🔹「間違いにしないで」とお願い(不安)

「まだ間に合うって言い聞かせた 間違いにしないでよね Miss.テールライト(夏影テールライト)」

初期は「俺は間違ってないはず」という描写が多く見られますが、最近では「間違いだらけでもしょうがない」「僕が間違っていた」と、間違いを受け入れています。
中でも「夏影テールライト」の「間違いにしないでよね」という他者への懇願は珍しいパターンです。「間違ってもいいや」ではなく、君任せにしている。自分のコントロール範疇外の未知の世界に対する不安が見え隠れするようです。

以上から、特に初期は虚勢とも言える自信に満ちた表現が見られますが、近年は物事をフラットに捉え、ストレートに気持ちを吐露しており、内面の変化を感じます。

🔹「わかって欲しい」

田淵は「わかって欲しい」という気持ちが強いように思います。「わかって欲しい」では抽出できなかったので、「わかる」で抽出して、さらに該当フレーズをピックアップしました。

🔹わかって欲しい(ストレート)
「忘れないでよ、忘れないでよってわかるかな わかるだろ(いつかの少年)」
「彩られては花盛り 少しあっては雨ふらし 続いてんだよ わかんねぇかな(23:25)」
「切っても切れないんだ いい加減そろそろわかってよ /  ナイフを持つ その、本当の意味が あなたにもし、もしわかるのなら すごく嬉しいんだ(オリオンをなぞる)」
「みんなは『何だそれ』って笑い飛ばすだろう でも君ならわかってくれる気がする(クロスハート号線)」
「やる気がないなら根気がないのも バカじゃないならわかるでしょうに(crazy birthday)」
「一人ぼっちかも けど不思議と誰かが 同じ光を見るなんてことはある わかってよね(Simple Simple Anecdote)」
「星が悲しい理由をみんなも少しわかってほしいのさ(恋する惑星)」
「僕のことをわかってほしいんだよ これはなんていう味?(Numbness like a ginger)」

🔹今はわからないだろうけど(いつかわかって)

「難しい言葉じゃわからない伝わんない もう知ってる そんなこと だからこそ、ただ、君に届け(流星のスコール)」
「わからずやには 見えない魔法をかけたよ(シャンデリア・ワルツ)」
「今日じゃ足りないなら また持ち越さなくちゃね ねえ アンバランス? 容易にわかられなくたって(リニアブルーを聴きながら)」
「流行らないのはもうわかってるよ(流れ星を撃ち落せ)」
「一聴ではわからないなら それこそが贅沢な暇つぶしって思いはしないかしら( mix juiceのいうとおり)」
「今じゃなきゃわからない答がある 『わからない』って言うなら 『ざまみろ』って舌を出そう(春が来てぼくら)」
「一聴じゃわからないなら 再来年頃にすれ違うとしよう(フレーズボトル・バイバイ)」

🔹わかるはず(確信)
「星座レベルで語り継がれた フロンティアーの真実 君にもきっとすぐわかる(誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと)」
「桜が咲いて散ったその後で 何が真実なのかは わかるからfuture melody そう、今は奏でて(桜のあと)」
「自分が立つその地面はどこだ? わかるはずだから 君に聞かせて(お人好しカメレオン)」

一部を抜粋

「わかるならすごく嬉しい」というストレートなフレーズだけでなく、「今はわからないだろうけど(いつかわかって)」「君ならわかるはず」などの変化球まで様々。とりわけ、わからずやに魔法をかけちゃうのはユニークです。

中でも「僕のことをわかってほしいんだよ(Numbness like a ginger)」は極めてどストレートでドキッとします。アニメ「ブルーロック」のタイアップなので世界観に合わせてのことですが、どちらかと言うと捻った表現を好む作り手が、ここぞという時に使う飛び道具のような威力です。物作りをする人にとって、「わかって欲しい」という気持ちは創作のモチベーションの1つなのでしょうね。

また、「わかって欲しい」という直接的な言葉は使っていませんが、「プログラムcontinued」にもその気持ちは色濃く反映されています。

「乱暴な真相めいたこと 頑固意固地ってきたんだ あんなやつらには気づけそうもないだろう(プログラムcontinued)」

「残酷な現実なんてもの 隠さずに鳴らしてきたんだ 目をこらしてもわからないなら、ざまみろ!(プログラムcontinued(15th style) )」

※引用元:「今じゃなきゃわからない答がある 『わからない』って言うなら 『ざまみろ』って舌を出そう(春が来てぼくら)」

「あんなやつらには気づけそうもないだろう」から「わからないなら、ざまみろ!」と口調がだいぶ強くなりました。本当はわかって欲しいのにね(わかる人にだけね)。 なんて愛くるしい表現なのでしょうね。「ざまみろ!」って言っちゃうのが田淵節だなと思います。

🔹(サイコロへの)"FUSHINKAN募る"

田淵はサイコロを振るのが好きな気がして。「サイコロ」「賽」「すごろく」を含めて9曲が該当しました。以下、古い順に並べたら、使われ方に変化を感じました。

🔹サイコロ頼み
「偶然なんだ どんな事だって サイコロの言うとおり(等身大の地球)」
「今俺は世界をすごろくに見立てて 6通りの道を延々と選んだ(meet the world time)」
「境界線一歩前で自問自答をサイコロで占う(さよならサマータイムマシン)」
「『六つの道に分かれるすごろくみたいな運命』と生きてきて 全部拾って ここまで来たよ(三月物語)」

🔹投げても何もわからない
「未来保証のサイコロを投げたけど きっと何もわからないまま(プログラムcontinued)」

🔹振り間違えても痛くない
「サイコロを振り間違えて ふりだしに戻されても痛くない(mix juiceのいうとおり)」

🔹なるようにしかならん
「じゃあその前提で賽を振れ(パンデミックサドンデス)」
「無作為に賽を振りやがった(Hatch I need)」

🔹当てにしていない
「振られた賽の目が幸せなはずないか」「振られた賽の目を見ないフリで次を待つ」(あまりに写実的な)

不透明なことに対する比喩として使用していると思いますが、次第に当てにしなくなっています。最終的に「幸せなはずない」「見ないフリ」とまで、こんなに"FUSHINKAN募る"だなんて(「WINDOW開ける」のオマージュよ)。主人公が、よりリアリティーな世界に生きるようになったからかもしれませんね。

類義語に「運命」があります。

🔹運命
「どっかにいるの運命の人、エンゼル、ハニー(over driver)」
「運命論はとっくに非科学的 by 愛の数値(ラブソングは突然に)」
「運命を知ってしまう僕らの想いは はじける(ため息 shooting the MOON)」
「『六つの道に分かれるすごろくみたいな運命』と生きてきて(三月物語)」
「運命に踊らされるぐらいなら いっそ地球の自転を急かしちゃうくらいの BPMで(10% roll, 10% romance)」
「でもここから運命論は乱されて 踏み入れたやつから順々にシードを取る冷徹な仕組み(Invisible Sensation)」
「運命だって所詮は君の手中さ(fake town baby)」
「夢が叶うそんな運命が嘘だとしても(春が来てぼくら)」
「邪魔すぎる運命のターゲット睨みながら(Phantom Joke)」
「運命なら過去に置いて来たから今になって大事そうに語らないで(マーメイドスキャンダラス)」
「『そんなことで運命を呼び出すな』『今だって誰かが泣いてんだ』(Simple Simple Anecdote)」
「きっと拙いイメージと でたらめな運命値でしか描き表せないから(101回目のプロローグ)」
「これが運命だったんだ、期待してたかい?(kaleido proud fiesta)」
「運命論は無駄だ あがけるだけあがいたらいい(カオスが極まる)」
「ほら運命の是非はいちかばち けど必ず君が選べ(スペースシャトル・ララバイ)」

一部を抜粋

こちらも"当てにできないもの"としての使用頻度が多い。「運命=人間の意志にかかわらず、身にめぐって来る吉凶禍福」ですが、曖昧なものを否定することで、「そんなもの当てにならない、君次第だ」というメッセージが強化されるように感じます。

そんな中で異質なのは「これが運命だったんだ、期待してたかい?(kaleido proud fiesta)」です。アニメ「TIGER & BUNNY2」のタイアップ曲なので、力強いセリフがアニメの世界とこの上なくマッチしていています。初めてタイバニのイベントで聞いた時、あまりにも説得力があってかっこ良いフレーズだったので、めちゃくちゃ痺れました。

🔹お茶の時間

「紅茶」「コーヒー」がちょこちょこ登場すると感じていたので拾ってみました。

🔹ティータイム
「その指が動かないなら 休みにして紅茶でも飲みに行こう(三月物語)」
「飲みかけの紅茶に昨日の悔いを溶かして(東京シナリオ)」
「かじりかけのビスケット 紅茶にちょっと浸して(City peel)」

🔹コーヒーブレイク
「コーヒーはほら 飲みかけwait for step(セレナーデが止まらない)」
「大切に淹れたコーヒーとか飲みながら(スペースシャトル・ララバイ)」

🔹コーヒー飲んでない
「まわるまわるコーヒーカップの上 深呼吸をひとつして(コーヒーカップシンドローム)」
「like coffeeの偶然出会いと ミルク・シロップで(like coffeeのおまじない)」
「缶コーヒーを開けるみたいに少しの行動力で片が付けば(オーケストラを観にいこう)」

🔹茶でもしばくか
「ああ 行く宛てもないから成層圏でお茶でもしよう(over driver)」

「紅茶」が登場する曲はしっとり系ですね。私もお茶の時間を大事に思うので、これらを聞くとリラックスした気持ちになります。
逆に「コーヒー」関連はアグレッシブです。”like coffeeの偶然出会い”って何ですかね。いまだにわからないけど「like coffeeのおまじない」が大好きです。
「お茶でもしよう」も1件ありました。今後もティーブレイクが出てこないか注目したいです。

🔹バカ

非常に田淵らしいワードですが、年々使用頻度が低くなっています。さすがに今後はもうないかもしれません。宏介も「馬鹿みたい(三日月の夜の真ん中)」で1回使用していました。

🔹攻撃的な「バカ」
「バカだな、もう引き下がってはいられない、ウズウズしちゃうんだよ(サンポサキマイライフ)」
「先生、もう一回ってあいつが言う バカタレ! 二度と言わないって言ってんじゃん! / 10人に10人馬鹿を見るんです(デイライ協奏楽団)」
「バカにつける薬を今日も考案中 / いや、君はバカじゃない、知ってるぞ ティンカーベル(コーヒーカップシンドローム)」
「キレイゴトに聞こえるなら 見ろ、バカ(スノウアンサー)」
「おまえが容易く決め付けるなよバカ野郎(to the CIDER ROAD)」
「やる気がないなら根気がないのも バカじゃないならわかるでしょうに / せーの、バカ!(crazy birthday)」
「でもアナウンスじゃバカに見つかっちゃうのでディレクターズカット(フィクションフリーククライシス)」

🔹バカにできない/バカにしないで/バカらしい/馬鹿みたい
「オリジナルハリケーンって 笑っちゃうけどなんだかバカにはできないんだよ(kid, I like quartet)」
「新鮮材料無くたってさ死にやしないのよ ひっそりこっそりしてますのでバカにしないで(マジョリティ・リポート)」
「どこまでが本当で どこからが嘘なのか 確かめるのもバカらしいよな(fake town baby)」
「いつかは馬鹿みたいに汚れただけの日々を(三日月の夜の真ん中)」

時期別の特徴的な単語

時期ごとに使用ワードの傾向が異なるのではないかと思い、時期に分けてそれぞれ特徴語を10個ずつ抽出しました。数値は「Jaccard係数(集合の類似度を表す指標)」と呼ばれるもので、頻出度ではありません。時期は独断で5つに分けました。

🔹インディーズ(2005-2008)

「新世界ノート」「流星前夜」のインディーズ期。「無限」「流星」「子供」「メロディー」など、無垢な少年がイメージされます。

🔹デビュー期(2009-2010)

1st「UNISON SQUARE GARDEN」/2nd「JET CO.」/sg「スカースデイル」の時期。「空」「月」「夢」「悲しい」など、どこか儚げです。

なお、「JET CO.」リリース前後は"泥""闇"という言葉が本人達の口から出ています。

田淵「(『JET CO.』の頃)泥にハマっているような時期だったし、思い出したくないですね」

「Bee side Sea side」ブックレット

田淵「メンバー同士の関係とか、やいやい言っている"大人の人"への違和感とかは、1stアルバムをリリースした後(2009年4月)からずっとあった。」「『JET CO.』をリリース(2010年4月)した後、僕の"闇”は深まって行った。」

「DUGOUT ACCIDENT」ブックレット

田淵「単純に自分の言葉が必要とされてないんじゃないかと思い始めちゃった時に、もうガクン!と来ちゃって。セカンド(「JET CO.」)が終わったあとに、そういう局面があって。」
「メジャーでこれだけ曲を出しても認められないし、僕は被害妄想が凄く強いので、要らないって言われてるんだろうなって気がしたんですね。」

2011年 MUSICA「Populus Populus」インタビュ

「JET CO.」は遊園地仕立てで、あからさまな暗い影は感じられませんが、「気まぐれ雑踏」「キライ=キライ」「夜が揺れている」「スノウアンサー」辺りは内省的な側面が強い。製作期間は闇期に該当しませんが、片鱗はあったのかもしれません。

「UNOストーリー」についてのインタビューが興味深いです。泥から這い上がるきっかけの1曲になったようです。

田淵「『UNOストーリー』が出来たときは、"感動的な曲が書けた!"という感じがあったんですよ。」「さっき言ってた泥みたいな時期だったんですけど、"それでもこんなにいい曲が書けるんだな"と。」
鈴木「歌詞も直球だし、"わかりやすい歌詞を書こうとしてたんだろうな"と。最後の一行で裏切るところは田淵らしいけど。」
田淵「そうかも。たぶん『オリオンをなぞる』の前ですね、この曲を書いたのは」

「Bee side Sea side」ブックレット

「UNOストーリー」はB面曲ということもあり、なかなかライブで披露されませんが、私も好きな1曲です。「こんなに君が好きだし こんなに君を励ませるし」というストレートな言葉が刺さります。貴雄の言う通り、ラスト「だから さあ今 自分の足で行けよ」はとても田淵らしいフレーズです。

🔹ステップ期(2011-2014)

3rd「Populus Populus」/4th「CIDER ROAD」/5th「Catcher In The Spy」の時期。「オリオンをなぞる」をきっかけに、バンドが少しずつ大きくなり始めます。「街」「君」「僕」「行く」「明日」「今」「届く」など、日常的なワードが目立ちます。

🔹成熟期(2015-2019)

「シュガーソングとビターステップ」以降、6th「Dr.Izzy」/7th「MODE MOOD MODE」の時期。「生きる」「前」「笑う」「幸せ」「続く」など、非常にポジティブなワードに溢れています。楽しそうですね。

🔹15周年終了後(2020-)

8th「Patrick Vegee」以降。「運命」「恋」「終わる」「決まる」など、強めのワードが見られます。

こうして見ると、主人公である希望に溢れた少年(僕)が、僕と君が生きる世界で、悩んだり笑ったり幸せを感じながら成長し、力強く未知の世界へ向かっているようなイメージが浮かびます。

🔹「ChatGPT」による分析

ChatGPT(3.5)に時期別の傾向を聞いてみました。

1. インディーズ期:
初期の歌詞は感受性が豊かで、遠くの未知への探求が見られる。メロディーと過去に焦点を当て、音楽との結びつきが強い。

2. デビュー期:
自己と他者、夢、全てに対する探求心が強調される。抽象的で感傷的な要素が含まれている。

3. ステップ期:
日常生活や人間関係への関心が高まり、感情の表現が具体的になる。未来への期待や心の動きが強調される。

4. 成熟期:
対人関係や人生の喜びに焦点が移り、成熟した視点が表現される。前向きで楽観的な要素が増え、成熟した感性が反映されている。

5. 15周年終了後:
現実との向き合い方や愛に関する深い洞察が現れる。結末や決着に焦点を当て、歌詞の内容がより物語性を帯びる。

総評:初期の感受性と音楽への愛が、成熟期には人間関係や人生の奥深い側面へと移行し、15周年終了後ではより深い洞察と物語性が感じられます。

さすがChatGPT、なんとなくそれっぽいぞ(笑)
バンドが成熟するにつれて、日常や人生の喜び、人生を通してのテーマなど視野が広く深くなっているように思います。今後はさらにテーマが広がったり、本質の深堀りが見られるかもしれません。

総括

🔹分析まとめ

  • 「世界」がより良いもの、広い世界として描かれるように →視野の広がり

  • 「幸せ」はストレートではない描き方もされるように(「虹色に光る幸せ そんなものがなくても」等)→視野の広がり

  • 最新アルバムでは「ちゃんと~する」という強い意志のある使われ方が多い→ 力強さ、誠実さ

  • 「俺は間違っていない(自己暗示)」から、「間違いだらけでもしょうがない」「僕が間違っていた」「間違いにしないでよね」への変化 → 自己受容

  • サイコロに頼らなくなった → よりリアルを生きる

  • 僕と君が生きる世界で、悩んだり笑ったり幸せを感じながら成長し、力強く未知の世界へ向かっている

  • 感受性と音楽への愛が、人間関係や人生の奥深い側面へと移行し、現在ではより深い洞察と物語性が感じられる

🔹変わらないもの・変わりつつあるもの

ユニゾンの歌詞には昔から揺るぎなく一貫したメッセージがあります。

「だから さあ今 自分の足で行けよ(UNOストーリー)」
「この手は差し出さない きっかけは与えたいけれど(さわれない歌)」
「負けない どうせ君のことだから(黄昏インザスパイ)」
「味方なんかにはなれないけれど ねえ 挫けていいんだよ(プログラムcontinued)」
「君にできないわけないから 検討を祈る!(スペースシャトル・ララバイ)」

上記のような歌詞には、リスナーの「背中を押すんじゃなくてケツを蹴ってやりたい」という田淵のポリシーがはっきり見えます。

田淵「聴いてくれる人の背中を押すって別にいいと思うし美しいと思うし、音楽が持ってる魅力としては素晴らしいなと思う。でも俺はそうじゃなく、背中を押すんじゃなくてケツを蹴ってやりたい。だから、これを聴いて何か目が覚めるような人がいるとすごくうれしいです。

2010年 ナタリー「JET.CO」インタビュー


近年ではそれに加え、以下の歌詞に見られるように、強がらない等身大の素直さや、未知の世界を眺めて「どっちへ行こうかなぁ」と悩む人間らしさが浮き彫りになる曲も増え、書き手の変化を興味深く感じます。

「この道の先がどうなるのか知らないから知ってみたい(夏影テールライト)」
「誰にもわかんないことを解き明かしても 誰にもわかんないまんまでいいのかも(Simple Simple Anecdote)」
「ほんものはどっちだ これはわがまま?(弥生町ロンリープラネット)」
「君と同じ世界に居たい まだまだ光っていたいのだ!(恋する惑星)」
「人生の意味がちょっとだけ変わった感じも ちゃんと僕は受け取められるよ(City peel)」
「甘えたことも言いたくなるよな これはなんていう味?(Numbness like a ginger)」
「ああ もう君に会えない(もう君に会えない)」
「時には立ち止まるくらいでいいか(あまりに写実的な)」

🔹「ボーダーラインを超えてしまってもいいや」

以下、作詞に関する田淵インタビューです。

田淵:「Numbness like a ginger」もそうですけどね。こんなにわかりやすい歌詞でいいのか?みたいな。作詞に関しては今でもそういう目線の、自分の中のボーダーラインがあるんですけど、そのボーダーラインを超えてしまってもいいや、みたいな感じが年々増えてきてます。みんなもそういうのが好きだったりするし、斎藤くんが歌うとちゃんと意味も出るし、結果、自分の中の作詞のバリエーションが広がって、今まではなしだったものに対しても「別に書いてもいいか」みたいな。変に抽象的な言葉でまとめるぐらいだったら、むちゃくちゃ直接的なほうがイチかバチかで意義が出るのではないか?と思えるようになりました。

2023年 ナタリー「Ninth Peel」インタビュー

結果が伸びず四苦八苦していた時代は、「田淵の歌詞がわかりづらいから作家をつけよう」という話も出ていたのは有名なエピソードです。わかりやすい方が良い・悪いではなく、事実として多くの人に伝わりやすいと思います。本人も「みんなもそういうのが好きだったりするし」とわかっている。でも、田淵が自分のボーダーラインを超えずに長いことやって来れたのは、なかなかの偉業だなと思います。すごい。

そのボーダーラインが今になって緩まって来たのは、経験値や年齢を重ねて視野が広くなりキャパも余裕ができたからだと思いますが、私はそんな最近の傾向の詞が好きです。

私は歌詞よりもメロディー重視で音楽を聞いています。洋楽は歌詞の意味を理解せずに聞いていることがほとんどです。だからこそ、わかりやすいフレーズであればあるほど耳に引っかかりやすく、心に残ることが多いです。

より直接的な言葉で、書き手の内面の変化を感じる描写や哲学が垣間見えるのが面白いなと思っています。その人ならではの人間臭さがわかりやすく見えた方が心が動きます。抽象的な言葉も耳に楽しいですが、作詞のバリエーションが広がれば、その分聞き方の楽しみも増えるので、今後はどんな新たな一面を見せてくれるのかな?という興味が尽きません。

また、可能性は低いと思いますし特に強く望んではいませんが、「今の斎藤宏介がユニゾンに曲を書いたとしたら、はてさてどんな曲が?」という興味もあります。もしかして、そのうち、いつか実現したら愉快ですね。しなくてもいいけどね。

20周年を迎えたロックバンドの今後にも注目したいです。

感想

予測していたワードが意外と使われていなかったり、同じワードでも使い方の意味合いが変化していたり、集計してみないと見えなかったことがたくさんあったので非常に面白かったです。分析ソフト「KH Coder」は初めて使ったのですが、何故か抽出対象とならないワードがあり(「君」「僕」など)、あらかじめ設定するなど慣れが必要でした。

また、ソフトでは拾えないワードの抽出は手作業となったので手間がかかりました。どういう結果に導きたいのか、ある程度予測を立てて使いこなした方が効率的かもしれません。
ユニゾンの歌詞には造語も多いので、その辺りはカバーできていません。ソフトでは一括で抽出できないので。工夫次第で、もっと面白い結果が出たかもしれないという思いはあります。

先ほども記述しましたが、私は音楽を聞く時に歌詞よりメロディーを気にするタイプです。聞いていて気持ちが良いことが一番なので、抽象的な歌詞の意味、造語の意味、曲同士の繋がりなどに深い興味は持たない方です。

では、なぜ今回このような試みを行ったかというと、「田淵智也はなんかおもろい感性を持ってるなぁ」という点において興味があるからです。こういうタイプの歌詞を書く人を他に知りません。なので、ここ最近抱いていた「そんなおもろい田淵になんとなく内面の変化があるのでは?」というざっくりした感覚の根拠を裏付けることができたので、個人的に満足の行く成果となりました。自己満万歳!

参考データ

以下、分析ソフトによる可視化です。なんとなく全体像を把握するのに役立ちます。

🔹共起ネットワーク


曲中に同時に出現する割合が高い(一緒に使われている)単語が線で結ばれています。時期を表す四角(○○期)から放射状に結ばれた語は、その時期で特徴的な語です。中心に集まっている「君」「今」「僕」「世界」は、全ての時期において特徴的な語です。

🔹対応分析

特定のグループ単位でどのような単語が多いのか、散布図のかたちでアウトプットする方法です。原点(0,0)から見て、似たような出現傾向の語が同一方向に付置されます。偏りの大きい語は、原点から遠くに付置されます。

「ステップ期」と「成熟期」は共通する単語が多く、「インディーズ」と「15周年終了後」は傾向が大きく異ることが読み取れます。

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