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#コラム

車窓から1980年の韓国を見る~『タクシー運転手 約束は海を越えて』 2021/8/29の日記

車窓から1980年の韓国を見る~『タクシー運転手 約束は海を越えて』 2021/8/29の日記

 他所の家と似た独特な匂い、少し効きすぎたクーラー、流れる外線の音、そして運転手さんの自分語り。ドアを隔てた異世界が広がっている。タクシーに乗車したのはどれくらい前だろうか。学生の僕は、ほとんど乗らないけれど、タクシーが好きだ。

 『タクシー運転手 約束は海を越えて』は2017年に公開された韓国映画だ。タクシー運転手キム・マンソプ(ソン・ガンポ)は、10万ウォンという運賃のために、ドイツ人記者ピ

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青春とは?~『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』 2021/8/25の日記

青春とは?~『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』 2021/8/25の日記

 しんちゃんの新作映画を観に行った。「青春ナゾ解きおバカ学園ミステリー」と内容てんこ盛りの今作なんだが、全ての要素がバランスよく入った素晴らしい作品だった。

ーーーネタバレありますーーー カスカベ防衛隊が私立天下統一カスカベ学園に体験入学する所から物語は始まる。実は、この体験入学は風間くんが誘ったもので、みんなで入学したいという思いがあった。しかし、それに気づかぬしんちゃんは風間くんとすれ違い、

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「笑い」の持つパワー ‐‐『ライフ・イズ・ビューティフル』感想メモ 2021/7/31の日記

「笑い」の持つパワー ‐‐『ライフ・イズ・ビューティフル』感想メモ 2021/7/31の日記

・『ライフ・イズ・ビューティフル』を観て、昨日まではそれを題材にしたレポートの執筆に追われ、バイトに追われ、なんだかとても忙しかった。

・おかげでレポートは過去最悪の出来で、大学4年にして初の「落単」の二文字がくっきりと見えている。「卒業単位数は足りている」という余裕が生み出した怠惰と、計画性の無さが原因だ。

・それでも、せっかく映画を観たのだから、こちらでレポートの内容をかみ砕いて、感想記事

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「」のために生きた時間 『最高の人生の見つけ方』(2007)2021/7/15の日記

「」のために生きた時間 『最高の人生の見つけ方』(2007)2021/7/15の日記

・最後の面接(仮)だった。受けるまでの時間が最も苦痛で、何か備えた方がいいんだけど、結局何をしたら良いのか分からなくて、時計の針が進むのを待つのみ。

・そんな気を紛らすために、映画を観た。ロブ・ライナー監督作品の『最高の人生の見つけ方』(2007)だ。

~あらすじ~
実直な自動車整備工のカーター・チェンバーズと豪放な実業家のエドワード・コールは、入院した病室で共に余命半年を宣告される。棺おけに

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この《暴力》は誰のもの? 『ファニーゲームU.S.A.』(2007,ミヒャエル・ハケネ) 2021/7/10の日記

この《暴力》は誰のもの? 『ファニーゲームU.S.A.』(2007,ミヒャエル・ハケネ) 2021/7/10の日記

・『ファニーゲームU.S.A.』(2007,ミヒャエル・ハケネ)を観た。カタルシス0のホラーって感じの映画で、気持ち悪さやイライラを得たい人(そんな人いるの?)にオススメだ。

・あらすじ(映画.comより)
夏の休暇で湖のある別荘にやってきたファーバー一家のもとに、卵を分けてほしいと隣人の青年が突然やってくる。母親のアンは感じのよい青年に卵を分けてやるが、青年は卵を不自然に落とし……。

・映画

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『アマデウス』(1984)才能ある狂った熱狂的ファン ~嫉妬に隠された「愛情」~

素晴らしい映画だった。

あらすじ

オーストリア皇帝ヨーゼフ2世に仕える宮廷作曲家:アントニオ・サリエリ。その彼の前に現れた天才作曲家:ヴォルガンフ・アマデウス・モーツァルト。サリエリから見たモーツァルトの生涯と、自身のモーツァルトの楽曲に憑りつかれることで生じた「嫉妬」や「愛」を描いた作品。

2人だけの世界。それはまさにセックスのように私の知る限り
君は最高のオペラ作曲家だ

映画後半、私は

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「日本のいちばん長い日」(2015)感想

「日本のいちばん長い日」(2015)感想

私たちには、当たり前の日常がある。しかし、その当たり前がどうして当たり前なのか、何を犠牲にして、誰のおかげで成り立っているのか。それについて考えを巡らせる人は少ない。しかし、一年に一度、そんなことを考える日があっても良いのではないか。

映画や小説などは、そうした「考えなくても良いこと」を考えさせる契機を与える。私は「日本のいちばん長い日」(2015)を見て、戦争について考えを巡らせた。

※本稿

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『リメンバー・ミー』(2017)感想殴り書き

私たちは、今、自分のことを表現するときに何と言うだろうか?おそらく最初に○○大学とか△△に務めているだとか、そんな自分の所属する組織を自己のアイデンティティとして紹介するのではないだろうか。それは、多様な共同体が生まれ、そしてその意味が強くなっていることの表れだ。

『リメンバー・ミー』(2017)はディズニー&ピクサーが製作したファンタジー・アドベンチャー作品。

ミュージシャンを夢見るギターの

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人間の怖さ『トゥルーマン・ショー』(1998)

人間の怖さ『トゥルーマン・ショー』(1998)

人は誰だって神になりたい。そんな人間の欲求を感じた。

『トゥルーマン・ショー』(1998)は、アメリカで制作されたSFコメディ映画。主人公のトゥルーマンは保険会社の営業を務める普通のサラリーマン。しかし、実は彼の周囲の人々は皆俳優、そして彼が住む世界はドームで作られた巨大な撮影セットだった。車の中で流れるカーラジオ、そこから世界の真実に気づいたトゥルーマンはこの世界から脱出を試みる。

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