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エッセイ

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これまでに書いたエッセイをまとめています。🍀
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#エッセイ

月の裏側、の話。

月の裏側、の話。

月の裏側は、地球側からは決して目にすることはできない。
普段誰にも見せるわけでもないけれど、確かにその人に存在する辛さ、しんどさ、劣等感、孤独、といった負の感情やそれらを感じた過去。
見えないけれど、誰しもに必ず存在するもの。

それらのことを先程挙げた月になぞらえて、わたしは「月の裏側」と呼んでいる。

自分で言うのも手前味噌であれなんだけど、結構この表現を気に入っていて、これまでのエッセイの中

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自分の誕生日プレゼントに、人生初アートを買う。

自分の誕生日プレゼントに、人生初アートを買う。

3年前から、毎年自分の誕生日前後にエッセイを書くことにしている。

そのときその瞬間の自分のリアルを文章という形にして後から見返すと、ほうこんなことを思っていたのか…と自分のことにも関わらずちょっと俯瞰的に見ることが出来る。
これがなかなか興味深い。

ちなみに、去年の。

なんだかつい最近な気がする。
でも、このときみたいな焦りのような気持ちはだいぶ緩やかになったような。

一昨年の。
結婚して

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京都で小学校だった建物でお籠りステイ。

京都で小学校だった建物でお籠りステイ。

ホテルやら旅館やら、わたしにとってのお宿とは、観光地へ赴くための足掛かりではない。
ここ最近は、どちらかというと、ゆっくり過ごすための非日常と日常のあわい的な要素が強い。

いつもと違う環境の場所で、お気に入りの飲み物片手にゆったり過ごす。
それは、リフレッシュであり、贅沢であり、またゆるやかな現実逃避でもある。

関西圏に暮らすわたしは、京都、奈良、大阪、和歌山など関西にお気に入りのお宿が多いが

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お守りはちみつ。

お守りはちみつ。

「はちみつ、舐めとき。」
幼いわたしが「喉が痛い。」と訴えると母は必ずそう言った。

ガサガサ、チクチク、イガイガ。
わたしの風邪は、決まって喉から嫌な乾燥と痛みを伴ってやって来た。

トローチでもなく、病院でもなく、はちみつ。
はちみつは、我が家の薬とも言える存在だった。
また母から、「はい、これ食べ。」と渡されるはちみつもバリエーション豊かで、ヨーグルトにふんだんにかけた「はちみつヨーグルト」

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おばあちゃんがくれた、ふわふわハンカチの正体。

おばあちゃんがくれた、ふわふわハンカチの正体。

「かしこいまりちゃんにこれをあげよう。」

そう言って今は亡き祖母は、幼稚園児だったわたしに、阪神百貨店の包みを差し出した。

祖母は百貨店が好きで、足腰弱るまではよく出かけていたものだ。

なんだろう…!
わくわくしながら包装紙を破る。

姿を現したのは綺麗にラッピングされ、お行儀よく箱に納まったハンカチだった。
黒地に華やかな花が描かれている、ふわふわのハンカチ。

(…あんまり好きじゃない。

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初釜を終えて

初釜を終えて

年が明けて最初に行われる茶会のことを、初釜と呼ぶ。今の茶道の先生との初釜は、今年が初めてである。

太陽の光がまだか弱い頃、家を出た。
いつもは下ろしている髪をアップにしているため、通り過ぎてゆく風が直に首元に当たるのを感じる。

冷たい風が顔や首に容赦なく当たる。

冷水が細かい粒子となり、顔を洗っているみたいだと思った。
お正月休みで早起きに不慣れになってしまった身体を強制的に目覚めさせてゆく

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年内最後のお稽古にて、思うこと。

年内最後のお稽古にて、思うこと。

なんだかずっと気忙しかったので、心待ちにしていた12月の3週目にあった茶道のお稽古。

茶室に入ると、前回から掛け軸が変わっている。
なにかきっと季節の言葉だろうなあ、なんて思いつつ、じいっと見つめてもなんて書いてあるのかはわからなかった。

毎回のお稽古で楽しみの大きな比重を占めているものがある。

ー和菓子である。

先生は茶道の先生でありながら、メインである主菓子を、毎回自ら作ってくれている

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秋の深まりと温かい紅茶。

秋の深まりと温かい紅茶。

肌に触れる風が涼やかになり、日差しが不快なものではなくなってしばらく経つ。
秋の中でも、残暑が厳しいわけでもない、かといって風が特別冷たいわけでもないこの季節。

暑さがようやく和らいで、寒さに向かうまでのこの10月中旬から11月にかけての時期がわたしはとても好きだ。

乾いた爽やかな風。
すっきりと高い空。
金木犀の儚く甘い香り。
栗やかぼちゃといった秋の収穫物。
わたしの好きなくすみカラーが主

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運動会、イチオシの曲。

運動会、イチオシの曲。

その曲を聞いた瞬間、びびっと稲妻が走った。

ー運動会のダンスに使える!!と。

夏が始まると同時に頭によぎる、小学校の先生あるある。
「運動会の団体演技、どうしようかな…。」

ちなみに1年前も運動会について書いている。良かったら…!

団体演技において何はともあれ、まず決めることは、使う曲である。

団体演技にも、組み立て体操、集団行動、フラッグと様々な種類があるが、ここではダンスと仮定する。

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子どもの悪口に勝った話。

子どもの悪口に勝った話。

いろんな子どもたちと多くの時間を過ごしていれば、ほっこりするような穏やかでなごやかな時間だけではない。

それは全学年合同の運動会練習のときだった。

校内のどの先生も名前を知っている、所謂有名人のりょうくん(仮名)が、並んでいる列から出ている。

普段なら、多少集団から離脱しているくらいなら、離れてちょっと様子を見守っておく。

しかし今、彼より下の学年の子どもたちもその場にいる中で、他の人の迷

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子どもと外で遊ぶのをやめたら。

子どもと外で遊ぶのをやめたら。

「若いうちは子どもと遊んで関係性を作った方がいいよ。」

大学を卒業しすぐに採用され小学校の先生になったわたし。そのとき、周りの先生方に何度もそう言われたか、分からない。

ちなみにこの場合、遊ぶ=校庭での外遊びを指す。

一緒に遊ぶことで、子どもたち同士の関係が見えてくる。
一緒に遊ぶことで、子どもたちに好かれ、信頼関係に繋がる。

子どもと外で一緒に遊ぶことのメリットは、理解してはいる。
現に

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甲子園優勝に導いた小学校教員監督と自主性とは。

甲子園優勝に導いた小学校教員監督と自主性とは。

毎年人々を熱狂させる熱い闘い、高校野球。

出場する様々な高校が注目されるが、プレーだけでなくいろんな意味で殊更注目を集める高校があった。

野球児の代名詞かのような坊主頭ではなく、髪型は自由。
スポーツだけでなく、学習も重要視する文武両道。
長時間練習はなく、生徒の自主性を尊重した練習メニュー。
合言葉は「Enjoy Baseball!」

ーそう、みなさんご存じ今回107年ぶりに見事甲子園で優

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昼に暮らしてみた、ある平日。

昼に暮らしてみた、ある平日。

人は時間があれば普段とは違うことをしてみたくなるようだ。

8月に入った平日、わたしは午前中お休みをとっていた。普段より少し長めの睡眠から目覚め、出勤までのあと2時間、何をしようかとあれやこれや考えをめぐらせる。

よし、買い出しに行ってお昼ご飯を作ろう。
そして、これでもかと言うほど照りつける太陽の熱と光を利用してやって洗濯ものを乾かそう。

休みの日は惰眠を貪りがちなわたしにしては珍しく、人肌

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かつて人魚に憧れたわたしと映画「リトルマーメイド」

かつて人魚に憧れたわたしと映画「リトルマーメイド」

いつからだろう。
水や魚が好きになったのは。

幼少期、家庭用ビニールプールやお風呂にて、腕を通す用の小さい浮き輪に両脚をつっこんで尾ひれに見立て、1人人魚ごっこをして大層楽しかった記憶が朧げにある。

今思えば、水深さほどもない水の中で、びっちゃんばっちゃんと跳ね続ける絵面は、完全に釣りあげられた魚である。

また、プールに行けば、息の続く限り底に潜った。
頭上にゆれる水と煌めく光の筋を見上げて

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